以前ビル・ゲイツの著書を読んだ際にキーポイントは再生可能エネルギーと大規模電力貯蔵システムであると書かれており、まさに全く同じポイントについて書かれている本がありましたので読んでみました。
ビル・ゲイツ本と比較するとアカデミックよりの本ではあるのですが、エネルギー課題について勉強できるとても良い本であるように思いました!
📒 Summary + Notes | まとめノート
日本のエネルギー事情
エネルギーの形態は主に電気、熱、力学、光、化学、核の6種類があります。日本の1次エネルギーには、石油、石炭、天然ガスなどの化石エネルギーと、水力、地熱、太陽光など再生可能エネルギーや原子力があります。(再生可能エネルギーとは枯渇することのないエネルギーの総称≒自然エネルギー)
ここに、新エネルギーと呼ばれる、中小水力、地熱、太陽光、太陽熱、風力、バイオマスなどがあり、2次エネルギーと呼ばれるものには、精製された石油、都市ガス、電力、水素などがあります。
これらをエネルギー変換することで、仕事、熱などとして産業や運輸に活用されている現状です。
引用元:https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2021/html/2-1-1.html
日本で期待されているのは1次エネルギーの化石エネルギー以外へのシフト、非化石エネルギー化です。
引用元:https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2021/html/2-1-1.html
日本は化石エネルギー資源が無い一方で、1次エネルギーが化石エネルギーに大きく依存しているために、エネルギー自給率も10%程度と低くなります。これは期待していた原子力が活用できなくなったために一度20%まで上昇したものの最近では10%付近まで逆戻りとなりました。
引用元:https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2021/html/2-1-1.html
エネルギーの質と量
本書はエネルギーの原則についてもまとめられております。エネルギーの定義とは「仕事をする潜在的な能力」であり、これらはエネルギー変換時に化学・物理原則に従います。
家まで送電線を通じて届く電気のエネルギーを考えてみると、
電気エネルギー→発電機の運動エネルギー→蒸気の運動エネルギー→熱→化石燃料
という変換が行われています。
引用元:https://www.milive-plus.net/エネルギー化学/
これらの変換プロセス時には、熱力学第一法則、熱力学第二法則、熱力学第三法則にしたがい変換されており、100%の変換効率が理論上可能なものもあれば、可能でないものもあります。(エネルギーの質、と表現)エネルギーの質が悪いものは変換効率がとても低くなります。
引用元:https://slidesplayer.net/slide/11459532/
いかに資源を活用するかという所に、エネルギーの質という考えが重要になっております。上記一覧から見ると、LEDが良いとされる理由や電気自動車が良いとされる理由はここに帰着するということが認識できます。
再生可能エネルギーの可能性と課題
日本のエネルギー事情の問題にあるのは化石エネルギーへの偏りからくるエネルギー自給率の低さです。そのために何年も前から再生可能エネルギーへのシフトに期待がされておりました。
引用元:https://www.isep.or.jp/archives/library/13427
再生可能エネルギーによる発電量は年々増加していることがわかります。一方で、太陽光・熱、風力、地熱、バイオマスなど再生可能エネルギーは課題があります。
課題
- 太陽光:発電が不安定で設備利用率も低い、エネルギー密度が低い、発電コストが高い、大きくしても発電効率が上がらない(スケールメリットがない)
- 風力:平地が少なく地形が複雑であること、発電出力が不安定、電力系統に接続困難な場合が多い
- 水力:大規模な建設が難しい
- 地熱:開発コストが高い、観光資源や国立公園の開発が困難
- バイオマス:化石燃料に比べてエネルギー効率が低い、収集や運搬にエネルギーが必要、食料と競合する場合がある、持続可能性
ビル・ゲイツの本でも挙げられていたのはこのような自然エネルギーはどうしても天気により発電力の波があるため、例えば太陽光であれば、晴れの日、雨の日、雲の日などで発電が安定しなくなってしまいます。
また台風などの日は風力なども危険になるために止めると、例えば東京を丸々2、3日絶えられるレベルの蓄電能力が欠かせなくなってきます。
引用元:https://evdays.tepco.co.jp/entry/2022/06/30/kurashi22
エネルギーの貯蔵の方法として
本書では1次エネルギーとして自然エネルギーを活用し、2次エネルギーとしての電気(つまり電池などによる保存)、水素(燃料電池)活用を解説しております。水素は気体・液体・金属水素化物(個体)で貯蔵であり、送電線の無い場所へも輸送することが可能です。また単位重量あたりのエネルギーも大きく、化学エネルギーと電気エネルギーを比較的容易に直接相互できるといいます。
人類がエネルギーシステムに利用できる物質循環として、水素循環および炭素循環がある。原理的にはどのような元素でも循環に利用することは可能である。しかし、人類のエネルギー消費量から考えると元素として地表に大量に存在すること、燃料として使用するにあたり人間に対して毒性が少ないk物質であるほうがよいことなどから、水素と炭素が候補となる。 人類が再生可能エネルギーのみから燃料を製造できるようになると、本来の地球環境に備わっていた水素循環と炭素循環に、新たに人類活動による増加分が加わることになる。しかし、全エントロピーの量としては新たな環境負荷はしょうじさせていない。このシステムは本来地球環境に備わっているエントロピー生成の流れを利用して、人類が水素循環と炭素循環という能動的活動を増加させることを意味する。
本書で水素が挙げられている理由には、水素の方が待機中の平均滞在時間が長いために、循環に影響を起こしやすく水素活用の方が有利な面があると言います。
引用元:https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/zu/h25/html/hj13010205.html
引用元:https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/db/mar_env/knowledge/global_co2_flux/carbon_cycle.html
電力貯蔵システムはメリット・デメリットがそれぞれあり、適材適所で活用しなければいけないようです。
引用元:https://green-ez1.com/2019/11/03/renewable-energy-and-grid-storage-system/
感想
環境系のトピックは発散しがちでありますが、本書はかなりよくまとめられており化学・物理原則に基づいたとても良い著書であったように思います。
日本のエネルギー事情として、化石エネルギーへの依存度が多く、それは炭素循環が妨げられてしまうために再生可能エネルギー(非化石由来エネルギー≒炭素を排出しないエネルギー源)へのシフトが必要になります。
そうすると、電力発電能力に時間的・地理的なムラができるために貯蔵・移動のシステムが必要になり、それには水素を活用すると水素循環、炭素循環が比較的妨げられないようになります。
自動車への燃料電池活用はかなり疑問が大きなものであり、日本でのガラパゴス化がありそうな印象ではありましたが、エネルギー貯蔵方法としての有望性は高いことは本書を読むことで知れました。
再生可能エネルギーと電池によるエネルギー貯蔵について期待したいですし、勉強を通して理解を深めていきたいと思いました。
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