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イーサリアム 若き天才が示す暗号資産の真実と未来 | Vitalik Buterin (著), Nathan Schneider (編集), 高橋 聡 (翻訳) | 2023年書評#25

現在コインマーケットキャップでクリプト市場のNo.2を誇るイーサリアムの創業者ヴィタリクブテリン。元々は物書きになりたいと思っていた19歳の少年はビットコインのカルチャーに感銘を受けて気がつくと今では信じられないほどの額を稼いでいます。

ブテリンはビットコインについて発信するビットコインマガジンでカルチャー、技術を掲載しており、今でも彼のEthereum上でのブログや彼個人のブログに技術や思想を執筆しております。

本書は彼の文章をピックアップし、ブテリンが何に魅了されて、クリプトのカルチャーとは、社会でどのように適応されていくべきかなどについて思想地図が示されているものです。

多くの文章は今でもインターネットで閲覧できますが、骨格となる文章を集められている本書を読む価値も非常に高く、クリプトカルチャーを理解するにはとても良い本であったように思います。

📒 Summary + Notes | まとめノート

掲載ブログリンク一覧

  1. 市場、組織、通貨 - 社会的インセンティブを生み出す新しい手段 https://bitcoinmagazine.com/markets/markets-institutions-currencies-new-method-social-incentivization-1389412608
  2. イーサリアム - 次世代の暗号通貨と分散型アプリケーションのプラットフォーム https://bitcoinmagazine.com/business/ethereum-next-generation-cryptocurrency-decentralized-application-platform-1390528211
  3. 自己実行型の契約とファクトゥム法 https://bitcoinmagazine.com/technical/daos-scary-part-1-self-enforcing-contracts-factum-law-1393297672
  4. サイロ化についての考察 https://blog.ethereum.org/2014/12/31/silos
  5. 超合理性とDAO https://blog.ethereum.org/2015/01/23/superrationality-daos
  6. ブロックチェーン技術の価値 https://blog.ethereum.org/2015/04/13/visions-part-1-the-value-of-blockchain-technology
  7. 暗号経済学と人類絶滅リスクの研究者がお互いに耳を傾けるべき理由 https://medium.com/@VitalikButerin/why-cryptoeconomics-and-x-risk-researchers-should-listen-to-each-other-more-a2db72b3e86b
  8. プルーフ・オブ・ステークのデザイン哲学 https://medium.com/@VitalikButerin/a-proof-of-stake-design-philosophy-506585978d51
  9. 非中央集権化とは何か https://medium.com/@VitalikButerin/the-meaning-of-decentralization-a0c92b76a274
  10. ブロックチェーンガバナンスについての覚書 https://vitalik.ca/general/2017/12/17/voting.html
  11. 共謀について https://vitalik.ca/general/2019/04/03/collusion.html
  12. フリースピーチ https://vitalik.ca/general/2019/04/16/free_speech.html
  13. 責任になった管理権 https://vitalik.ca/general/2019/05/09/control_as_liability.html
  14. クリスマス・スペシャhttps://vitalik.ca/general/2019/12/24/christmas.html
  15. 指針として信頼できる中立性
  16. 良い強調、悪い強調 https://vitalik.ca/general/2020/09/11/coordination.html
  17. 予測市場 - 大統領選をめぐるエピソード https://vitalik.ca/general/2021/02/18/election.html
  18. いちばん重要な希少リソースは正当性 https://vitalik.ca/general/2021/03/23/legitimacy.html
  19. ジニ係数の濫用をめぐって https://vitalik.ca/general/2021/07/29/gini.html
  20. 通貨投票のガバナンスを超えて https://vitalik.ca/general/2021/08/16/voting3.html
  21. 信頼モデル https://vitalik.ca/general/2020/08/20/trust.html
  22. ブロックチェーンがつくる都市、クリプトシティ https://vitalik.ca/general/2021/10/31/cities.html
  23. ソウルバンド https://vitalik.ca/general/2022/01/26/soulbound.html
  24. イーサリアムホワイトペーパー https://ethereum.org/ja/whitepaper/

通貨としての暗号通貨

通貨が社会的に意味を持つ理由に①価値交換②価値保存③価値尺度があります。ビットコインはこれに加えて④通貨発行益が加えられたものです。ビットコインは従来の金のように採掘されて得られる利益がマイナーと呼ばれるグループに渡ります。マイナーはコンピューターパワーを使いセキュリティのために必要であり、非中央集権性をもたらします。

過去に社会通貨として狭いコミュニティで活用されていたものがありますが、それらは実社会での効果を得られることができませんでした。ビットコインはグローバルなコミュニティで扱われることで狭い経済域を脱出した成功例です。

ただし、ビットコインの問題点は拡張性(スケーラビリティ)です。それを解決しようとブテリンはイーサリアムを作り出し、基盤プロトコルとして活用可能であり、分散型アプリケーションを構築できるようにしました。今ではイーサリアムの基盤上に様々なサービスが開発されています。

引用元:https://blog.ethereum.org/2014/12/31/silos

プルーフ・オブ・ステーク

クリプトの活用は現在でも投機的側面が根強いのは事実です。実際に暗号資産により大金を手にするチャンスを得た人たちも多くいます。ブテリンはイーサリアム開発の初期から価格の上昇やトークン売りのブームに浮かれることなく、暗号通貨経済のデザインについて書かれていました。

The DAOと呼ばれるハッキング事件では、ハッカーの手にイーサリアムの大半が手に渡り、今後行われるプルーフ・オブ・ステークへの悪影響を与えかねないために、ステーキングを実施しました。この対応に関しては未だ物議をかもしておりますが、非中央集権のために彼が行った行動を指示する声は多くあります。

クリプトにおいていつまでも語られる、非中央集権性の大事さ、中立性、共謀に対する耐性などビタリク本人が考え事細かに思考実験されています。

大統領選挙でのベッティングの事例などは実利用の面白い例であり、トランプが再戦することにベットできる通貨が誕生したことや大統領選の動向に合わせた値動きのウォッチングも詳細にかかれており、ブテリン本人もクリプトの活用事例を体験していました。

最近では、マイアミ州の事例など、クリプトを活用した地域経済の取り組みも解説されており、実経済にどのように有効活用していけるのかという論点も語られています。

感想

基本的に難しい内容が多く、思想的な側面を楽しめる一方で技術的な側面は分からない部分も多かったです。実利用される時は、今の紙幣と同様でなんとなくというコンセンサスを持ち価値があるとされて活用されていくのだろうとは思いますが、それを作り上げていく歴史的な考えを後追いできるものとしてとても良い本だったように思います。

現在の所、暗号通貨はIEOと呼ばれる資金獲得のために使われることが多く、トークン発行の対価としてお金を出資してプロジェクトが活用され始めることでそのトークンの値段が上がり投機として成功というような事例が多くあります。

多くのケースではもはやweb3というキャッチーな言葉で資金調達を誘発し、溶かしてプロジェクトが終了、またFTXのようにガバナンスがめちゃくちゃな取引所が超中央集権的な独自トークンのパンプにより膨らんだ時価総額を元にキャッシュを獲得してしまうような事例があります。

diamondhandscommunity.substack.com

ビットコインとクリプト/web3はもう完全に別物です

ビットコインイーサリアムとはプロックチェーンと呼ばれる非中央集権的な技術を用いた台帳システムであり、それを用いた中央集権的なシステムによる詐欺的な行いが多く、中々信頼を勝ち取るところまで行けていない気がします。

実利用のために設定されるべきインセンティブなどについても本書では書かれており、ブロックチェーンが活躍するのは地域コミュニティや政治などの側面かなと想像をしたりしました。

クリプトの業界のど真ん中に初期から居たブテリンによる思想や歴史を日本語で辿れる本としてとても良い本であるように思います。

英語に抵抗の無い方は彼のブログ記事を辿るのもとても良いでしょう。

ビットコインマガジン https://bitcoinmagazine.com/authors/vitalik-buterin

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