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LEAN IN: 女性、仕事、リーダーへの意欲 | シェリル サンドバーグ (著), 村井 章子 (翻訳) | 2024年書評38

以前読んだOPTION Bの著者シェリル・サンドバーグの本LEAN INを読みました。

シェリル・サンドバーグはLEAN INにて女性が社会に出よ、というようなニュアンスをまとめいかにして現代社会で女性が主張していないのか、もっとしても良いものだよという事を主張することで働く女性のアイコン的な存在になります。

本書を通じて感じたのは、意欲の強い女性かと思っていたのですが普通の一人の人であり、子育てなどに悪戦苦闘しながら一人ひとりが仕事に邁進できる事に対する権利を見直しても良いのでは?というような主張だったように思います。

ある種少しネチッとした考えで悶々とした考えもあり、悩める社会人のような様子も多く描かれております。本書のテーマの女性の視点を日本人として捉えかえても役に立つ考え方も多くあり、もっと主張してよいのだ、チャンスがあれば生活環境の変化に不安に思っていても掴みに行ってもよいのだ、という考え方は勇気づけられる部分が多いのではないでしょうか。

祈りよ力となれという本でリーマボウイーが話した「もっと多くの女性が権力のある地位に就くこと」という結論に達したシェリル・サンドバーグの考えを読んでいきましょう。

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📒 Summary + Notes | まとめノート

現代社会と女性の状態

現代社会において生物学的な役割(子供を生む行為)などから女性が男性と同じように働く事には現実的に課題があります。固定概念として、男尊女卑的な思想や性差別、セクシュアル・ハラスメント、育児休暇や子育てをしながら働ける環境整備の不足は課題です。

マッキンゼーが行ったレポートによると男性は可能性を買われて昇進していくのに対して、女性は実績で昇進すると書かれていたりと、女性は男性よりも実力を示さなければいけない傾向にあります。女性は傾向として大望を掲げないようにしており、自ら名乗り出ようとせず、一歩踏み出す時に引いてしまう。

女性が一歩を踏み出すには制度的な障壁を取り除かないといけないですし、女性が抱える問題を確実に解決していくことが必要となります。

例えば、エピソードで紹介されているグーグル時代にキャンパスを車で移動して参加しなければいけないミーティングがあり、妊娠期にキャンパス近くのパーキングが空いてないために困難な思いをしました。その際にサンドバーグはその事を伝えてみると「考えたこともなかった。すぐに用意する」と言われすぐにキャンパス近くのパーキングに停めやすい環境が整えられました。

同じテーブルにつく

とあるエグゼクティブツアーが行われた際に、参加した4人の女性がテーブルにつくのではなく、周囲に座り会議の参加者というより傍観者のような座り方をしたことがありました。

女性には特有の詐欺師感覚というものがあり、自分の業績を誉められると、詐欺行為を働いたような気分になる。というものです。たいした能力もないのに誉められてしまった。そう思うことがあります。

ハーバード・ロースクールの学生1000人にヒアリングしたところ女子学生は男子学生よりも自己採点を低くつける傾向にあり、男性に成功した理由を質問すると自分の資質や能力のおかげだと主張する一方で、女性は自分の外に原因を求めることが多く「幸運だったから」「大勢の人に助けられたから」などと答えます。失敗した時は逆で男性は「興味が持てなかった」などと言うのに対して女性は「自分の能力が足りなかったから」と答えます。

サンドバーグの2歳下の弟デービッドはいつもサンドバーグより自信に溢れており、デートを断られても「俺を振るとはいい度胸じゃないの」や難しい授業などでも試験後に「Aフラットは確実に取れているかな」と自信がないサンドバーグと対象的な様子でした。

仕事場においても新しいプロジェクトを立ち上げる事をアナウンスすると応募に来るのは男性が先に飛びつき、女性はサンドバーグの方から新しいことにチャレンジするのを後押ししないと中々参加しない傾向にありました。

可能性を広げていくには、自分自身をもっと信じなければならない。自分の能力を超えているを不安になるような状況に立ち向かっていき同じテーブルにつくことが第一歩です。

エリック・シュミットとのエピソード

サンドバーグ財務省で仕事をしており、ハイテクブームの際にクリントン政権が終わり職を失ったのを機にシリコンバレーへ移ることを決意します。

2001年にはハイテクバブルは崩壊しており難しい状況ではあったものの、財務省時代に何度か会ったことがあるエリック・シュミットと相談しグーグルでのポジションが用意されることになります。

当時他社からは明確な仕事内容のポジションを用意されており、グーグルは成長期であるために、「ビジネスユニットゼネラルマネージャー」と呼ばれる第一号ポジションを用意してくれると言われ一方で具体的な仕事内容は明確にはなっていませんでした。仕事があるのかどうかさえわからないポジションです。

この悩みをエリック・シュミットに打ち明けると、

仕事を決めるときの基準は一つしかない、それは成長、それも急成長だ

と断見しました。

会社がハイペースで成長していれば、いまいる人間がこなせる以上の仕事がどんどん湧いてくる。反対に会社が伸び悩んだり横ばいになっていたりしたら、仕事は減り、人間の方が仕事よりも多くなる。そうなると社内の空気は淀み、ごますりや駆け引きだ横行し、士気は低下する。大事なのは潜在的な成長可能性である。

メンターになってくれませんか?

本書の中で印象的なエピソードであったのは「メンターになってくれませんか?」と多くの女性から言われる事の物語です。当初サンドバーグは「メンターを得られれば群れから抜け出せる」というようなニュアンスを伝えていましたが群れから抜け出した後にメンターは得られるものです。

メンターとメンティーの関係は持ちつ持たれつでありただ与える関係ではありません。セラピストは一方で話を定期的に聞く相談相手の役割です。

声を上げよう

「ファイスブックの女性COO」や女性パイロット、女性技術者、女性レーシングドライバーなど「女性」と付く時は多少なりとも意外性が込められています。男性がそうした目でみられることは稀です。グロリア・スタイネムが慧眼にも指摘したことに「力をもつ者が名詞を獲得し、それが標準となる。力のない者には形容詞が付く」。

グーグルでは自薦による昇進制度があり、制度を活用するのは男性が多くありました。「ナッジ」と呼ばれる「そっと肩を押す」試みとして、グーグルはこのデータを全社員に公開したところその後は女性も自薦することが増え相対的な昇進スピードは同じ程度にまでなりました。

言葉は意識を変え、意識は行動を変え、行動は制度を変える

現在職場では実力主義だと信じられており、結果の差は実力からくるのであり男か女かは関係ないと判断されております。トップの座に就いている男性は、自分が教授している恩恵に気がついていないことが多い。下の地位にいる女性のほうも、男性がトップにいるのはそれだけの能力があるからだと考えがちです。現在のルールに従ってがんばれば昇進できると信じ、ジェンダーバイアスの存在に疑問を提出することも、声を上げることもしない。その結果、不公平なシステムがいつまでも続く。これは男女両方の責任でもあります。

感想

女性への啓蒙書であると思いますが、個人的には主張の少ない日本社会に対する啓蒙書という観点で読む部分が多くありました。

もちろん女性が社会で活躍するための障壁の多さもしっかりと主張されており、職場環境において男性が自然と享受しているメリットの多さや身体的特徴によるゲタを感じられます。

大学時代の研究室にて先輩が「女性的な視点で研究を見られるのは女性出ないとできない部分が多く男女が居る環境はとても重要」と言われた時に結構衝撃を受けて男女が活躍できる場である、自然と半数存在している環境という重要性について考えていた事はありますが、社会人となり子育てという観点で女性が社会に残り続けるハードルを感じる事は多々あります。

比較的に変化を好まない日本社会は政治も実質1党の独裁制に近しいですし、腐敗が蔓延してますし、企業でも似たような体質が感じられます。女性だからという話に限らずに、変化が必要な時に挑戦に耐えうる人材を探し起用していくという視点を強引にでも持てないと中々変化が生まれないでしょう。

📚 Relating Books | 関連本・Web

  1. https://amzn.to/3UBOyNP 祈りよ力となれ――リーマ・ボウイー自伝 単行本 – 2012/9/18 リーマ・ボウイー (著), キャロル・ミザーズ (著), 東方雅美 (翻訳)
  2. https://amzn.to/44fWR52 ケイト・レディが完璧な理由
  3. https://amzn.to/3Jt8An2 コンシャス・ビジネス 価値ある企業に生まれ変わるための意識革命とは何か 単行本 – 2014/11/27 フレッド・コフマン (著), 増田沙奈 (翻訳)