BIOTOPEというデザインコンサルファームで活躍する佐宗さん。イリノイ工科大学でのデザイン思考のプログラムを修了されてデザイン思考の実践を行っています。
そんな著者が最近優秀な友人から相談される「本当にやりたいことがわからない」ということなどを受け、よりビジョン、直感をモチベーションにした働き方が大事なのではということからデザイン思考→ビジョン思考という概念の提唱、実践に関わる本になります。
📒 Summary + Notes | まとめノート
他人モードにハイジャックされた脳
何がやりたいかわからないという考え方は誰しももつ考え方だと思います。その原因としては現代の仕組みも背景に「他人が満足するか」によりフォーカスした生活があるといいます。SNSではいいねを押してもらえるかを考えたり、欲しいものはレコメンドされ、動画は気になるものが勝手に表示される。
自分がやりたいと思うことを考える習慣が自然と少なくなる生活になっています。
そんな中でビジョンや何がしたいのか改めて考える時間を持つ大切さや、その直感からどうやって論理的に実行に移していくかヒントが多く書かれています。
ビジョン思考の大切さ
思考の区分として①カイゼン思考②戦略思考③デザイン思考④ビジョン思考、という組分けを著者はしており、①〜②はビジネスでよく使われており、ある種日本人の得意な領域にも思います。
③のデザイン思考はそこから抜け出すために最近注目を集めております。
- 手を動かして考えるープロトタイピング
- 五感を活用して統合するー両脳思考
- 生活者の課題をみんなで解決するー人間中心共創
上記3点はデザイン思考のツール、考え方として広められており、人間中心的な問題解決手法の考えです。ツールを活用することによりより幅広いアイデアを解決候補としてイノベーションを起こしていくという側面があります。
デザイン思考の欠点は真面目にやればやるほど他人モードになってしまうことで、クライアントベースの仕事やコンサル業などには力を発揮しますが、作り手側が没頭して行うような自分モードになれないという問題があります。
自分らしい思考を阻害している原因は4つに分類。
- 内発的動機が足りないー妄想
- インプットの幅が狭いー知覚
- 独自性が足りないー組替
- アウトプットが足りないー表現
これらの足りない4原因を訓練してビジョン思考の実践を紹介していきます。
妄想する訓練
すべてのスタートは妄想からです。
紙×手書きで行うのがベスト:手書きすることで右脳モードを活用
感情アウトプットの練習ーモーニングジャーナル:毎日決まった時間・量考えを書き出す
何もしない時間をスケジュールする
妄想クエスチョン:「子供時代の夢は?」など質問に対して手書きで書き出す
好きなもののスクラップ、コラージュ
レゴで手を動かしながら考える
問いかけ:「もしも〜ならどうなるか、どうするか」など問いかける
知覚する訓練(見る→解釈→意味付け)
今の世の中でわかりやすいことがあまりに善とされているが、複雑なまま物事を知覚する。
スケッチなどをすると物事を見る訓練ができる
1日の間で決めた色に注目して探しまわる(カラーハント)
絵にして解釈する:ビジョンスケッチ
ムードボードの作成
組替の訓練
①あたりまえを洗い出す②あたりまえの違和感を探る③あたりまえの逆を考えてみる
ポスト・イットなどの可動式のメモ
ツッコミを入れる(違和感ジャーナル)
あまのじゃくキャンパス:分解したいテーマのあたりまえを書き、その逆も書き出す
例)スターバックス=世界どこでもある⇔近所にしかない、など
ゆらぎを与える(メタファーハント)
制限を加える(時間的制限、空間的制限など)
表現の訓練
スケッチやプロトタイピングなど手で表現することが基本
早く最初の表現(ビジュアル化)をしフィードバック(意見)を得る
人を動かす表現にはストーリーがある
感想
デザイン思考マニアで、デザイン思考に関わる本や取り組みはたくさん読んでおり、デザイン思考を派生させたようなビジョン思考という考え方や方法について面白く読みました。
4つの思考区分①カイゼン思考②戦略思考③デザイン思考④ビジョン思考についてもなるほどと思う一方で、中々仕事の現場すべてでビジョンをモチベーションに仕事をしていくということは難しいと感じます。
ただし、カイゼン思考や戦略思考にあまりに慣れすぎているために、なんとなくビジョンをモチベーションにすることに億劫になっていたりビジョンの無い、合理性を追求した意思決定に慣れすぎている傾向も感じます。
あくまでバランスだとは思うのですが、自身の生き方のような点を見直す意味としてビジョン思考はとても有効であると思いますし、それを仕事の一部などに取り込む(時間や場所にとらわれず仕事したい→リモートで働ける方法を探す)などは大事なように感じました。
自分がコントロールできる範囲のプロジェクトや人間関係の部分においてビジョン思考でなにか変化を生み出すヒントがあるようにも思いました。
📚 Relating Books | 関連本・Web
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- https://biotope.co.jp/about/ BIOTOPEホームページ