noteやTwitterでも発信しているので気になっていましたDIの三宅さんの本を読みました。
3000億円の事業を生み出す「ビジネスプロデュース」はいかにして生まれたのか? 誕生秘話を書きました!
— 三宅孝之 株式会社ドリームインキュベータ代表取締役社長 (@Tak_MIYAKE424) 2023年3月7日
創業時の事業を失った会社が、3000億円級ビジネスの支援で復活できた話|三宅孝之 株式会社ドリームインキュベータ代表取締役社長 @Tak_MIYAKE424 #ビジネスの出会い https://t.co/IOVuQXRWIi
DIというと最近はアイペットの売却時に話題になりました。
日本企業が苦手な業界を飛び出て「つなげる」ことの重要性など日本と主に米国の企業を対比しながらどんなポイントを重要視して事業創出を手助けしているかについて書かれています。
読んでみると日系企業で働いている方であれば頷く内容が多くなぜ保守的な姿勢が多くなっているのか、せっかくシーズとなる技術が沢山あるのにそれを関連してプロモーションできてないがために上手く走り出せず、官民の協力やロビイングが上手くないためにルール変更にも中々動き出せない。
途中からは小説形式でハウスメーカーでの物語も交えてわかりやすく伝えてくれていました。
📒 Summary + Notes | まとめノート
日本企業がつながれない理由
本書の一つのテーマになるのが「つながり」です。アメリカ企業はつながりや得意なところは外部で提携しビジネス拡大をしていきました。
クアルコムは半導体事業の設計や特許取得、活用に特化してビジネスモデルを創出し活用してもらうつながりを作ってきました。また、グリーンマウンテンコーヒーロースターズはスターバックスに設置するKeuringカップと本体の販売で成長していきました。オランダのフィリップスはDOE(米国エネルギー省)への積極的なロビイング活動を他社を巻き込んで実施。今ではLED証明という大きな事業を省エネやCO2削減効果の点から説得力のある活動で政策へと踏み込みビジネス拡大を成功させました。
日本企業がうまく繋がれない理由に挙げられているのは3つです。
- 自前至上主義
- 強い業界意識
- 弱い官民の連携
所感としてはどれも日本だけが苦手というわけでもなく、海外企業も簡単に成功しているわけでも無いと思うのですが、トライ量に関しては海外の方が多く失敗を許容する文化が多いためにトライの数を増やすにはどうすれば良いのかというところがキーだと思います。そこで言う本書の「ビジネスプロデュース」という視点が出てきます。
ビジネスプロデュースとは?
日本での成功事例として書かれているのは、三菱地所の東京丸の内再開発、三菱化学のDVD事業、ダイキン工業の中でのビジネス拡大です。
これらの事例をもとにビジネスをプロデュースの5ステップは次のようにまとめています。
- 構想する:社会的意義からの妄想から開始
- 戦略を立てる:妄想を構想へ変える事実の積み上げ。「フック」と「回収エンジン」の設計
- 連携する:リーダーがハブとなり推し進め、コミュニケーションする
- ルールをつくる:KPI設定、法令などへの挑戦
- 実行する:論より証拠で仲間を増やす
日本人的連携の仕方で問題視されているのは連携した時の「回収エンジン」が提携先に明示できるかというところです。
まず「フック」と「回収エンジン」についてですが、Googleで言えば検索システムやGmailなどで利用者が多いプラットフォームがあることはフックです。そこに広告事業が回収エンジンとして収入を得られています。
提携する際には提携先にも回収エンジンがあることがとても大事で、それは収益でも、社会的意義やレピュテーションなど様々な理由があります。
外資系で仕事しているとこの回収エンジンの部分は個人間の業務でもよく感じることで、フラットな視点でお互いに貢献できるものを考えることが多いです。
一方、日本人でのコミュニケーションですと上下関係がある協力仕事が多く、フラットなやりとりというよりも作業任せや責任のなすりつけなどが多く、協力を請け負うと何か損をするような側面が多くあるように思います。特に企業間でサプライヤーとの関係性にある場合には、サプライヤーが社内資料をすべて一任されて、お客さん側の社内資料や記録などすべて行う勢いで作業をさせられて、最後には利益率も低いなんてことも多くあるよう感じます。接待文化もそれに拍車をかけているというのは個人的な感覚です。
本書で面白かったポイントの一つに三宅さんが早稲田大学の技術を企業へ売り出しに行く時に、技術個別というよりも関連させて大きなビジョンを描き組み合わせの提案がいい引きを得られたと語られています。
確かに、iPhoneが日本の技術が集められて作られているという話があるように個々の技術としてはとても素晴らしいものがあるように肌感でも感じます。
ビジネスプロデューサーに向いた人材
どんな人がビジネスプロデュースに向いているのでしょうか。本書で挙げられているのは下記。
- 守りより攻め志向
- 前向きで明るい
- 謙虚で素直
- 自分の意志がある
- 社内エリートでない方がよい
これに対して社内のサポートも必要で、失敗の経験値を上げることや金銭的にも寛容な姿勢でいること。何より上層部の理解が大事であると言います。
感想
最近のよくある企業推進、ベンチャー礼賛というよりも大企業側の方によりチャンスがあるという本書の視点でした。大企業側の姿勢で判断が遅くなったり、提携の身動きも悪く、何重にもある承認で話を折る機会を何回もの幸運でくぐり抜けなければ行けないということから、大企業の人材がどんどん保守的になっていき、失敗をしないのんびりと過ごすというような体制が整えられているように思いました。
もちろんすべての大企業がそうとは思いませんが、過去の職場の大企業では新しい仕事・環境へのアレルギーは高く、また自分の意志は蔑ろにされるような人事制度や承認活動など、既定路線のある壮大なコントをやっているような感覚がありました。
やる気のある人からどんどんと辞めていき、社内に残る人たちのカルチャーは一層濃く凝り固まっていくという様子で人材の流動性も少なければタフさもなく、またネチネチ具合で病む人が多数という環境で先に退職し外から見てても一つの人生の形としてはいいかなと思うものの、そこに身を捧げたいかというと疑問がありました。
海外企業だから全て良いかというとそうとも思えない部分は沢山ありますが、失われた○○年という言葉が示すように結果として経済が伸びなかった事実を受け止めて頑張る時でもあるのかもしれません。