最近は半導体産業が国策としても注目されており、TSMCの誘致からラピダスの設立と話題がつきません。先日発表されたNVIDIAの決算も好調でまだまだ半導体の需要が予想されています。
半導体企業に投資するにあたって半導体の作り方について勉強しており読んだ本になります。
秀和システムのよくわかるシリーズは専門的な話もわかりやすく書かれているので楽しく読み進める事ができました。
著者は佐藤淳一さんでTDK、ソニーと半導体に関わる仕事をされていた方が書いており所々に昔からの半導体産業の話も散りばめられており面白いです。
📒 Summary + Notes | まとめノート
半導体の作り方
上に記載したYoutubeの動画を見るとビジュアルで見れるので見ていただきたいのですが半導体はとても繊細で緻密な技術で作られています。元来は各メーカーが垂直統合モデルで設計から製造まで行っていましたが製造工程での高い技術が必要となり、次第に水平分業モデルとなり製造するところだけを請け負う企業が出始め、今のTSMCはファウンドリーと呼ばれ高い技術力を持って製造をする企業です。
半導体と言っても様々であり大きな分類はこちらのようです。
半導体はシリコンウェーハ上に作られていくのですが作業効率を高めるために大口径化が求められる一方で大きくなるほど取り扱いも難しく欠点も増えます。
blog.nisshinbo-microdevices.co.jp
シリコンウェハ上にLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)を設置していくのですが、ウェハ含め半導体工程は細かなホコリも大敵なので全てクリーンルーム内で実施され洗浄や化学処理が何度も行われていきます。クリーンルーム内での搬送には人を介入しないように設計されて効率よく設備がつくられる事が重要です。
昔はウェハも人の手で搬送されていたようですが今ではすべて機械が実行し、細かな移動や汚れないようにボックス内(FOUP)にしまった状態で移動することもあります。
ウェハの取り扱いに欠かせないのが純粋です。プラント設計には純粋や化学処理で使った排水処理、排ガス処理、電力設備など様々なことを考慮しなければいけません。製造装置とともに欠陥制御技術も必要です。
ウェハはイオン注入された後活性化された状態から加熱して熱処理を加えることで結晶回復が行われます。熱処理もムラができたりしてはいけないながらも効率よく行われることが求められます。
その後リソグラフィーと呼ぶ感光体(レジスト)をエッチングすることになりLSIの下地を作っていきます。この装置が露光装置と呼ばれる部分です。ここでも微細な光源が必要になってきて解像度を高くすることが重要です。ここで一社のみしか製造できないものがEUV露光装置と呼ばれるASMLのものです。
その後シリコン基板上に配線や絶縁膜を形成する成膜、そして平坦化(CMP)へと移ります。平坦化する際に研磨するのですが、想像するだけでもウェハ上を精密に研磨して、さらにはエッジまで活用できるように仕上げるのは困難だとイメージできます。スラリーと研磨パッドを活用しながらさらには排水していきます。
半導体は各工程で検査が重要になってきますので常にモニタリングが必要です。それぞれの工程で欠点が無いか検査装置で常に確認しながら、かつ工程を止めないようなものが必要になります。本書内ではSEMやTEMが紹介されています。
ここまでが前工程と呼ばれる部分です。
後工程と呼ばれるものはウェハからチッピングし、その上にダイシング、ワイヤーボンディングをして、モールディングを行い検査が行われます。
ウェハを切り出すのにも相当な精度が必要ですし、回路を設置していくところもとても緻密な作業となり、TSMCが回路線幅を3nmの先端半導体を製造しており引っ張りだこな状態です。
感想
半導体製造装置から半導体の作り方を知ることができる本でとても勉強になりました。そもそも半導体という名前ぐらいしかわからず関わってる企業が無数に存在しており、なんかトランジスタがいっぱい乗ってるぐらいの認識しかなかったのですが、気の遠くなる細かな作業が山盛りで製造現場では欠陥との格闘が用意に感じられます。
これだけの職人作業をすべて機械化するほど経済的に価値がある分野ということだと思いますし、その努力の積み重ねでiPhoneや最近のAIのようなものが可能になっていると思うと、すごい時代だなとも思います。
微細化の需要がどこまで続くのかという所は分野は限られると思うのですが、半導体がこの世から無くなる事は考えづらいどころか今後より増えていくように思います。人間の脳を置き換えるようなものなので、自分の頭で考える必要のない物事はできるかぎり半導体に任せたいです。