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人を動かすマーケティングの新戦略 「行動デザイン」の教科書 | 博報堂行動デザイン研究所 (著), 國田 圭作 (著) | 2024年書評57

博報堂デザイン研究所が著者となる本ですが、行動を軸においた視点で人に行動を起こさせるのはどうすれば良いのかということをまとめた内容だったと思います。

www.hakuhodo.co.jp

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博報堂行動デザイン研究所の更新がここ数年止まっているのは少し気になる所ですが昨年まだ新しい活動をしたリリースを出されているので今後も新しい活動に期待したいです。 

 

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📒 Summary + Notes | まとめノート

行動デザインとは?

わたしたちは多くのモノに囲まれています。広告の業界はモノを魅力的に見せて消費を喚起させるような印象の方も多いのではないでしょうか。一方で最近はモノからコトへ、というフレーズのように行動に重点が移り始めています。人とモノは行動を通じて繋がります。そこでモノを考えるにあたっても行動をデザインすることでモノを利用してもらえる状況をいかに作り出せられるのかを人間の性質も見ながら見ていきましょう。

市場の捉え方

市場を考える時に、日本酒市場、食中酒市場などの考え方が思いつきます。日本酒は市場として右肩下がりであり、良い日本酒を作れば選ばれるという状況から変化しつつあります。飲食店で飲みものメニューにワインやビールと並列して並んでいるだけでは選ばれないという事もあります。

その中で行動に目をつけて◯◯の料理には日本酒がおすすめなどの紹介があれば日本酒を選ぶ行動に繋がります。

他にも映画行動を考えてみると、映画館に映画を観に行くという行動は今では配信が増えて家で気軽に観れる時代になったため選ばれにくい選択となってきています。一方で、デート市場、非日常体験市場と考えてみると、映画館に行くというのはその一つとしてまだ残っています。

これらのように市場を代替できる市場に目を向けて今まで画一的だった市場考えから外に出てみるという視点が重要と言われています。

行動について

行動を変化させることは中々難しいことです。正しいだけでは人は動かないですし、安いだけでも動かない人も居ます。アーリーアダプターと言われる層からレイトマジョリティの層を考えると、新しい行動を受け入れる促進的な行動を取る人は1割弱であり、8割は保守的な選択をしていると言われいます。

5つのコストとして紹介されているのは、金銭的コスト、肉体的コスト、時間的コスト、頭脳的コスト、精神的コストです。

日常生活の観察から何がコストになっているのかを見極める事で行動を誘発できるきっかけを生み出すことに繋げられます。

本書で紹介されている行動の6ステップは以下です。

  1. どれだけ動かすのか=行動ゴールを設定する
  2. 誰を動かすのか=ターゲット顧客を特定する
  3. いつ、どこで動かすのか=行動観察から行動チャンスを発見する
  4. 何で動かすのか、なぜ動くのか=行動をつくり出す仕掛けを設計する
  5. どうやって動かすのか=全体シナリオを構築する
  6. 本当に動いたのか=成果を評価し、PDCAを回す

ステップ4では、行動アクセルを加速すること、ブレーキを緩和することを例にあげ設定されると人は動きやすい、対比があると人は動きやすい、お墨付きがあると人は動きやすい、など挙げられています。

事例

紹介されている事例には、列の白線であったり、ワインのように飲めるお茶、歩いても良いと思わせる成田空港のトラックの線、などあります。

行動をデザインするにあたり、さらに一歩踏み込んで習慣とさせるには快感、アクセシビリティ(取り組みやすさ)、効用が大事と紹介されています。

感想

モノから行動について視点を変化させようという理由や背景、そして行動について、行動を変化させるためにはどういった指標を注目するべきなのか、という事が書かれていました。

それぞれの事象については以前読んだ仕掛学やセイラー教授の行動経済学の本がより詳しく書いてある印象であったので、それよりも引いた視点で大枠を見ていく流れだったかのように思います。

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広告代理店っぽいという印象もありますし、IDEOの人間中心の考えという発想から大きく影響を受けていそうな考えも多くあるので、誰のためのデザインなどの方が面白い印象もありました。

ただし、日常の行動を観察することであったり、視点をずらしてみるという考えは仕事や生活で役に立つ部分も多くそのための具体的な考えや指標の紹介もされている点はとても興味深かったところでもあります。

こういったことを考えながら色々な広告やキャンペーンは実施されているのだと思いますし、人々がついやってしまうようにお金を使わせるという視点をもって売り出しているという面もあると思うので、消費者としての立場ではそういったものに踊らされないように注意して大事な物事を見失わないようにしたいなとも思います。

📚 Relating Books | 関連本・Web

  1. https://amzn.to/3KPSEvG イノベーション普及学 単行本 – 1990/5/1 エベレット・M.ロジャーズ (著), 青池 慎一 (著), 宇野 善康 (著)
  2. https://amzn.to/3Xr1B6y 影響力の武器[新版]:人を動かす七つの原理 単行本 – 2023/11/10 ロバート・B・チャルディーニ (著), 社会行動研究会 (翻訳)
  3. https://amzn.to/3KPSGni 感情心理学・入門 (有斐閣アルマ) 単行本(ソフトカバー) – 2010/12/18 大平 英樹 (編集)
  4. https://amzn.to/3L5svJP 心と行動の進化を探る: 人間行動進化学入門 単行本 – 2013/9/9 五百部 裕 (編集), 小田 亮 (編集)
  5. https://amzn.to/3VGbvzM 心を動かすデザインの秘密 認知心理学から見る新しいデザイン学 単行本(ソフトカバー) – 2013/4/16 荷方 邦夫 (著)
  6. https://amzn.to/45rf006 しらずしらず――あなたの9割を支配する「無意識」を科学する 単行本 – 2013/12/13 レナード・ムロディナウ (著), 茂木健一郎 (その他), 水谷 淳 (翻訳)
  7. https://amzn.to/3KHbXaN 進化と感情から解き明かす 社会心理学 (有斐閣アルマ) 単行本(ソフトカバー) – 2012/4/7 北村 英哉 (著), 大坪 庸介 (著)
  8. https://amzn.to/4bYywna 進化と人間行動 第2版 単行本 – 2022/4/25 長谷川 寿一 (著), 長谷川 眞理子 (著), 大槻 久 (著)
  9. https://amzn.to/45q987j 新版 アフォーダンス (岩波科学ライブラリー) 単行本(ソフトカバー) – 2015/1/10 佐々木 正人 (著)
  10. https://amzn.to/3XqSkey たまたま―日常に潜む「偶然」を科学する 単行本 – 2009/9/17 レナード・ムロディナウ (著), 田中 三彦 (翻訳)
  11. https://amzn.to/3z4i6uW 手書きの戦略論 「人を動かす」7つのコミュニケーション戦略 単行本 – 2016/4/23 磯部光毅 (著)
  12. https://amzn.to/3z4aQiH 脳には妙なクセがある (新潮文庫) 文庫 – 2018/1/27 池谷 裕二 (著)
  13. https://amzn.to/4b391A0 マーケティングの嘘: 団塊シニアと子育てママの真実 (新潮新書 604) 新書 – 2015/1/16 辻中 俊樹 (著), 櫻井 光行 (著)
  14. https://amzn.to/4b4N82Y 問題解決に効く「行為のデザイン」思考法 単行本(ソフトカバー) – 2015/9/17 村田 智明 (著)
  15. https://amzn.to/4bd9ks8 楽天大学学長が教える「ビジネス頭」の磨き方 単行本(ソフトカバー) – 2010/1/18 仲山進也 (著)
  16. https://amzn.to/4b393I8 わが社のお茶が一本30万円でも売れる理由 オンデマンド (ペーパーバック) – 2020/7/31 吉本桂子 (著)
  17. https://amzn.to/4b39nGH Hookedハマるしかけ: 使われつづけるサービスを生み出す 心理学×デザインの新ルール 単行本 – 2014/5/1 ニール イヤール (著), ライアン フーバー (著), 金山 裕樹 (翻訳)
  18. https://amzn.to/4banw4W 9割の人間は行動経済学のカモである ―非合理な心をつかみ、合理的に顧客を動かす 単行本(ソフトカバー) – 2014/1/23 橋本 之克 (著)