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2030 半導体の地政学 戦略物資を支配するのは誰か | 太田泰彦 (著) | 2021年書評#12

太田泰彦 (著)の半導体地政学を読みました。

📒 Impression and Review | 感想

半導体について非業界人間としては、複雑すぎてよくわからず色々な半導体の話をきいてもよくわからいことが悩みでした。それに加えアメリカの規制がどのようなもので困りごとは何なのかということも分からない状態でした。

読んでみてある種自動車産業に近い部分が多く感じます。複雑なサプライチェーンに加えすべての物事が噛み合わないと良い性能にならない。ただ、自動車業界よりも健全だと感じるのは時に装置メーカーの影響力が多かったり、ファインダリーの影響力が多かったりとOEMが王様といったような状況に陥っていない業界構造は素晴らしく思います。

米中の利害関係がある一方で、中立的に振る舞える欧州のAMSLは多くの顧客は中国メーカーですし、格安のスマートフォンという市場ではアップルではなくファーウェイが好まれるており東ヨーロッパなどではアップル製品よりも断然ファーウェイを見かけます。

半導体の業界というよりもタイトルの通り地政学的な内容が多く半導体にまつわる政治的な話をストーリーとして読める本でした。

半導体のものとしてより知りたいという方には合致しませんが半導体のことについて非常によくまとめられたいい本だと思います。

📒 Summary + Notes | まとめノート

半導体は現代のコメ

半導体市場はものすごく大きく成長中です。スマートフォンやカメラに活用されており自動車にも多く利用されている中世界的な半導体不足が続いています。

IT企業のデータセンターや5Gはじめ通信機器などに使われており軍事用ドローンなどにも活用されているため全てにおいて中核的な存在になってきております。

半導体技術は非常に複雑で難解なので細かい話は割愛しますが半導体の中でも工程(分野)が7種程度に分類分けでき、これらの設計などは殆ど米国、ファインドリーと呼ばれる製造については台湾(TSMC)、日本はウエハーや製造装置分野などが強みになります。

  市場規模
(10億ドル)
米国 台湾 欧州 日本 中国 韓国
半導体チップ 473 51 6 10 10 5 18
設計ソフト 10 96          
要素回路ライセンス 4 52   43   2  
半導体製造装置 77 46   22 31    
ファウンドリー 64 10 71     7 9
製造後工程 29 19 54     24  
ウエハー 11   17 13 57   12
              単位%

 

半導体にまつわる悶着

半導体ファウンドリーに関してはTSMCが大きなシェアを持ち圧倒的な技術力で困難な設計の半導体も製造してしまうため、米中関わらず多くの企業がTSMCに製造を依頼している状況です。

その状況に応じて始まったのが米国の外交的処置で、TSMCアリゾナに誘致。またファーウェイに対する規制や最新の半導体を中国に輸出する事を禁止します。

世界最強TSMCも誘致、米国がアリゾナから狙う「半導体覇権」

ファーウェイの頼みの綱であったハイシリコンはTSMCファウンドリーであったためTSMCから最新の半導体がハイシリコンに供給することができなくなりファーウェイは中国国内で調達が求められる状況になりました。

一方で、多くのスマートフォンメーカーがある中国に最新の半導体チップを販売できないというのは半導体ビジネスビジネスの足かせになってしまっている側面もあり、規制対象でないチップをやりくりするなど多くの企業が規制の対象外の領域で奮闘していると言います。

半導体の父モリスチャン

TSMCは1987年にモリスチャンによって創業されます。国民党を指示する家庭に生まれたため共産党が政権をとった後に香港へ移り住みその後アメリカで移住。ハーバード入学後MITに移籍しテキサスインスツルメンツで20年勤務後に台湾に移り住みます。

これだけ大きなファインダリーになったTSMCの背景には壮絶なハングリー精神とともに生き抜いた人物が居るようですね。

ファーウェイの苦悩

モリスチャンのストーリーも面白いながらこの本で一番おもしろかったのはファーウェイ日本会長である王氏へのインタビュー部分だと思います。

アメリカが次々に規制を強め苦しみながらもサバイブできている状況からTSMCからの供給ができなくなる半導体規制はとても大きな影響を与えたと言います。

スマホには最先端のチップが必要となりますがその多くはTSMCしか製造できない技術になります。そこで中国は政府の資金含め多くの投資をし最先端の半導体製造装置の確保に走っているそうです。

これまで中国は国内市場をまもるためにIT分野を代表的に多くの規制を活用することで自国内の会社が成長してきました。そこに多くの人工をテコに企業規模も世界を代表するレベルにまで持ち上げられた過去があります。

半導体についてもアメリカが規制をすることによって政府一体となり、すべてのコメにあたる半導体業界を強固にしていく姿勢が見られており今後が気になります。

そこにあるのは日本文化とはまったく異なる多産多死のカルチャーです。半導体最大手であった紫光集団はデフォルトを連発し破産に追い込まれました。一方で子会社であるYMTCなどは変わらず操業しております。

破産した「中国半導体大手」、再建に7組が名乗り | 「財新」中国Biz&Tech

多産多死の文化に加え中国で特筆されるのはスピードです。深センの1週間はシリコンバレーの1か月と言われる事があるほど深センのスピード感は壮絶なようで特にハードウェアの設計では毎日のように店舗で商談が行われプロトタイプ作成に勤しんでいると言います。

そのスピードはコロナ禍でさらに増し、体温計の製造、搬送ロボットなどテクノロジーによる問題解決がされていました。

アメリカの規制締め付けによって中国の半導体、テック市場がどのように変化していくのか今後が楽しみです。

日本の半導体

過去、米国の半導体規制により滅多打ちにされた日本ではありますが今半導体産業の必要性が再認識され再び動き出していることも多くあるようです。

東大はTSMCとパートナーになりd.labにてチップ設計部分について最先端の研究を行い、またTSMCの日本誘致にも成功しました。気になるのは最先端のチップではなく自動車用途などに使われるであろう比較的古い技術である半導体製造ではあるようです。

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半導体3次元化技術の鍵であるウェハー分野についても日本が得意な分野です。

キオクシアなどのメモリー関連の半導体IPOが話題になったりしています。

半導体の今後

半導体は描く・つくる・使う、という多くの企業が絡み合う業界です。設計はエヌビディアやクアルコム、製造はTSMCや製造装置メーカー、活用するのは現在アップルやファーウェイ、今後はさらにEV車での活用が多く見込まれています。

今後ますます市場規模が大きくなっていくと言われている半導体について今後も注目していきたいです。

本書で紹介された企業

1 中国 ファーウェイ
2 中国 ハイシリコン
3 中国 紫光集団
4 中国 SMIC
5 中国 AMEC
6 中国 YMTC
7 中国 BAT
8 台湾 TSMC
9 韓国 サムスン電子
10 韓国 SKハイニックス
11 シンガポール EDB
12 米国 アップル
13 米国 AMD
14 米国 AMAT
15 米国 インテル
16 米国 エスタンデジタル
17 米国 エヌビディア
18 米国 クアルコム
19 米国 グローバルファウンドリーズ
20 米国 マイクロン・テクノロジー
21 米国 GAFA
22 米国 IBM
23 欧州 アーム
24 欧州 ASML
25 欧州 IMEC
26 欧州 インフィニオン・テクノロジー
27 欧州 NXPセミコンダクターズ
28 欧州 STマイクロエレクトロニクス
29 日本 NTT
30 日本 キオクシア
31 日本 ソシオネクス
32 日本 d.lab
33 日本 東京エレクトロン
34 日本 富士通
35 日本 三菱電機
36 日本 ルネサスエレクトロニクス

 

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