18秒の何もオチの無い動画をご存知でしょうか。
欧米の若い青年が「ゾウの前に居るんだけど、鼻がとても長くてクールだね」という動画が投稿されたのは2005年、Youtubeに最初に投稿されたものである。
日本ではガラケーが猛威を奮っていた時代に、スタートした動画投稿サイトYoutubeはiPhoneはじめスマートフォンによる簡易的な動画撮影が可能になり一気にユーザー数を伸ばした。
当時の自分はと言うと大学のレポートに使い始めたMicrosoft Officeに四苦八苦しており、MacとWindowsの互換性が…などと思っていた時代である。
動画の歴史
動画の歴史はというと、世界の最初の映画はリュミエール工場の工場の出口と呼ばれるものである。
非常にシンプルな動画なのだけれども、当時の様子を知ることができる貴重な記録だ。
その後、映画の父と呼ばれるのはD.W.グリフィスが映像技法(映像文法)作り出しだし映像の時代が緩やかに始まった。
映像で有名といえば思い浮かぶのは、チャップリンのような構成のある映像であれば無声映画であろうとわかりやすく観ることもできる。
映像と動画の違い(IPT)
明石ガクトさんが言う映像と動画の違いはInformation Per Time(IPT)をベースに考えられている。映像というのは少し長ったらしく、いわばテレビのようなもの。一方動画は情報が凝縮された短く一瞬で引き込まれるような情報量の多いもの、としている。
人々が隙間時間を消費する貴重な1分に多くの情報が込められたものが好まれる。映像の1分と言うのはとても濃密なものなのである。
映像を取り巻く環境の移り変わり
動画の世界で大事にされていた基準は「Gross Rating Point」でドラマの広告枠の売り買いのための指標にされていた。
一方でインターネットでの基準は「再生回数」と「視聴完了率」であり具体的には2秒以上観たら1再生とカウントされ、その中で何割最後まで観られてのかで指標を測る。
元来のTVやAbemaTVはGRP方式で、YoutubeやFacebookは後者の方法で広告の売り買いをしている。
著者の明石ガクトさんは、これらの基準の中で動画を乗せる通信インフラは5Gや8Kなどに移行していく様子を見せており、今までの指標が活用できなくなるのでは無いかと考えている。
ソーシャル・ネットワークをベースにバズりをみせ新しい体験価値を提供した「君の名は。」が新しいカタチをしめしている。
こういった時代に生き残る映像というのは、単純にとても良い映像を提供する事が大事になるであろうし、それを示しているのが高いCG技術を持つポリゴンピクチャーズや、テラスハウスなどを代表に綺麗な映像表現が得意なイースト・エンタテインメントの飛躍である。
最先端動画メディア
テレビ界のアカデミー賞と呼ばれるエミー賞は昔の主役はNBC、CBS、ABCなどの放送局であったが、今はHBO、AMC、Netflixなどのオンラインベースの動画コンテンツがノミネートされてきている。ゲーム・オブ・スローンズなどは世界で最も観られたドラマとしても有名である。
本の中で紹介されている動画メディアをリストする。
ブレイキング・バッド
ハウス・オブ・カード
The Grill Iron
Tastemade
SMOSH The movie
VOGUE
GQ
Last Chance U
Explained
チャンネル4 We're The Superhumans
Vice
どれも魅力的な動画である一方、動画の影響力の大きさがもたらした悲しい出来事もあったようだ。子宮頸がんを防ぐワクチン接種について、テレビが繰り返しワクチンの副反応についての映像を流す事で厚生労働省がワクチン接種の推奨を取りやめた。
映像を見る時にコンテンツのちからがパワフルであるがゆえに自身でしっかりと解釈する力も合わせて必要になってくるのでしょうか。
これからの動画世紀に向けて
最後の章で語られているのはこの動画世紀の始まりに誰にでもチャンスがあり、挑戦できるということだった。
自分自身もとても好きなCasey NeistatのFILMMAKING IS A SPORTという魂のこもった動画が本の最後に紹介されている。
Caseyがこの動画の最後に語る
Filmmaking is an art. Filmmaking is a sport.
This is the new party and now everyone's invited.
というコメントがとても印象深いものであった。
明石ガクトさんは夢を諦めきれずに伝えたいものを映像にひたすら取り続ける日々とかなりリンクしているコメントだったのだと思う。
プラットフォーム、スタイル、エンゲージメントを意識して行けばマネタイズできるようになるというと綺麗に聞こえるが、簡単に言うと、毎日必死に動画について考え、作り続け、クオリティを上げていき、素晴らしい動画やメッセージを伝えていくということに尽きるのだと思う。
身も蓋も無い話だとなにかの一流になりたければ最高のものを諦めずに作り続けなさい、ということである。
そのためには自分が一生懸命取り組めるもの事を見つける、身の回りの好きな事に一生懸命になることがとても大事なのだろう。
蛇足だが、RedditでFilmmakingがスポーツかどうかという質問の回答がとても面白かった。
Caseyの成功を解説したYoutubeチャンネルも面白かった。
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