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レクサスとオリーブの木 グローバリゼーションの正体 下| アメリカの発展してきた理由とこれからのこと | 2020年書評#14

グローバル化とは、について語る文章のはしり的な存在であるトーマス・フリードマン。1980年代に世界中の異なる国々を回れた記者という存在がどれほど貴重であったか(貴重な体験ができたか)がわかる本です。

当時はきっと、「これからの世界はどうなるのか?」というオピニオン的な未来予測だったとは思うのですが、今の時代からは「グローバル化初期にどう人々が感じていたのかの記録」要素がとても多いです。

ohtanao.hatenablog.com

黄金のM型アーチ理論

フリードマンは冗談半分でマクドナルドがある国は戦争をしていないという説を提唱しています。マクドナルドを招致する国であれば戦争よりも経済発展を望んており、またそれは違う国の製品に依存し・依存される、法の精神にある相互依存の関係になります。

そういった国々が戦争という勝者・敗者双方を経済的にも物理的にも破壊する選択肢を選ばなくなってきました。

法の精神 (中公クラシックス)

法の精神 (中公クラシックス)

 

マクドナルドを求める国々は投資家集団から資金を集める必要があります。それにより得られる経済発展を捨てる国々は今でも少数見られますが、自国の力のみで経済完結する国々の発展能力というのはやはり限界があったのだなあと現時点で思います。

一つ語られているエピソードとして中国が1980年代に経済発展に踏み切りった話もあり、もはや未来都市といえるような都市がいくつもある中国の決断が大きな経済発展につながったこともわかりました。

本書が書かれた1980年代にはクウェートはインターネットの導入に国が尻込みし、サウジアラビアは女性の運転を禁じており、シリアはFAXの所有を禁じまたアメリカなど先進国側から資金援助を受けそれが無くなれば隣国を脅して資金を集めるというサイクル。

ここまでスケールが大きな話ですと、「ああ、昔はそんな時代もあったね」ぐらいの話かもしれませんが、会社や交友関係規模で新しい物事に寛容であることや興味を持ち導入することはとても大切なことなのかもしれませんね。

いつまでもオリーブの木を心の拠り所にするのではなくマクドナルドを受け入れる精神は重要なのでしょう。

持続可能なグローバル化

トーマス・フリードマンの先見の明があるなと感じたのは持続可能性を当時に語っていたことです。

グローバル化というのは均質化に近しい意味合いがあるため、商店や文化、趣味趣向を世界中で同じものになります。文化多様性は消失する方向です。

また消費活動も同じで大量消費社会がグローバルに根付いてきたことにより、ごみの処理設備が無い国々は「あとで余裕ができたらかたづける」というようにまずは経済を発展させて問題が大きくなったら対応する、なんてスタンスの国々が増えました。

海へのゴミ捨てに関しても、1人がやっていてもたいして問題出なかった行為が1万人がやってしまうと汚染のスピードも規模も格段に異なってきます。

元に戻すことがすべて正義であるとは思いませんが、少なくとも持続可能なレベルを理解すること、未来の状態を予測しすべき物事をその時その時の最適解を選択していくことがとても重要になってくるでしょう。

文化的な側面についての一つの解は、グローカル化と述べられている。カナダはアメリカの音楽文化、食事文化が根付いてしまい、ものすごい速度のアメリカ化現象が起きていたようです。

グローバル化のスピードや力はきっととてつもなく大きいので、ローカル文化の教育や周知、保存などをより意識して行う必要があるのでしょう。

勝者がすべてを手に入れる

グローバル化がもたらしたものの一つに所得格差があります。

NBAを例にみると、同じチームでもスター選手による経済効果はグローバル化により格段に上がりました。他国の放映権の獲得やグッズ収入がもはや街やアメリカ国内だけとは比べ物にならない経済効果をもたらします。ひとり勝ち社会です。 

一方、同じチームでもいいプレーはするもののスター選手出はない選手はにはチームの勝利には貢献できるかもしれませんが、経済効果はあまり期待できません。

スポーツ界はそういった所得格差が最も顕著に出る業界かもしれませんね。

特に物理的な商品で無い物事にグローバル化のコストはほとんどかからない時代になったので、情報やデータ、プラットフォームなどを商品として取り扱うような会社にはグローバル化による大きな発展が見込めそうです。

革命はアメリカから

アメリカの企業は多くの移民を受け入れています。なぜならば知恵が最も重要だと気がついていたからです。情報化社会において、多くの知識労働者が嬉しく働ける環境を整えることで発展してきました。

同質性の高いものを大量に作るのであればそのような人材は必要ありませんが、変化の激しいグローバル社会では常に変化し、同じ作業を繰り返し精度高く行う人材は重要度が下がってきました。

人々(市場)はアメリカを選び、結果アメリカが最も発展したといって良いでしょう。

世界のガソリンスタンド理論という面白い考えがあります。

一つめのガソリンスタンドは日本のガソリンスタンド。1ガロンあたり5ドルで丁寧な従業員がガソリンを入れてくれます。

二つめのガソリンスタンドはアメリカ。1ガロン1ドルですが自分の手でガソリンを入れる必要があります。

三つめは西ヨーロッパ。1ガロンあたり5ドルだけども無愛想で働かない従業員がのろのろと仕事をする。

四つめは発展途上国。1ガロンあたり35セントと安いのだが、6つある給油機のうち動くのは一つだけ。ヨーロッパから交換部品が来るのをまっている。

五つめは共産主義国。1ガロンあたらい50セントと安いのだが、店にガソリンはない。

とても乱暴な分け方や表現であるのは確かですが、人々はアメリカを選ばざるおえない状況であることをよく表しています。自由な市場であるからこそ市場が選ぶ結論(給油という簡単な行為は自分でやりガソリンは安く済ませられる)へと仕組みが決まる、という側面があるのだと思います。

ここまで行くとガソリンの入れ方(広義にはアメリカ化を受け入れる術:英語の使用など)を勉強しない手は無いと感じてしまいます。

破滅に向かうシナリオ

この本を読んでいると、結局グローバル化しざるおえないし、それが正解のように感じるのですが、成功しない例も紹介されています。

過酷すぎる場合

ウォルトモスバーグによると「日本は世界で最も成功した共産主義国」だと称されました。政党は自由民主党によるほぼ一党独裁状態で、秘密主義的で不透明な文化、柔軟性のないことで知られるシステム。少しずつ変化していると思いますが、今だにグローバル化に適応するのが過酷すぎる場合は成功しなさそうです。

結びつきが強すぎる場合・立ち入りすぎる場合

これらはどちらも投資家集団のことになります。グローバル化のせいで様々な金融情報は結びつきが長くなり連鎖反応は雪崩式に起こります。情報の透明性が求められ立ち入りすぎる事により、「立ち入りすぎ」を嫌う新しい壁を作ってしまう可能性があります。

他にも、不公平すぎる場合・非人道的な場合などが例に挙げられています。

様々な障壁や不合理さがありつつも大対数の人が進歩を感じられさえすればグローバル化は進むでしょう。

どんな人におすすめか

全般的にアメリカ礼賛的な文面が多いのですが、その中にもなぜアメリカが良い見本であるのか、でもその中にどんな失われたものがあったのかという事が多く書かれています。

本書の最後にある文面がとても印象的であった。

健全なグローバル社会は、絶えずレクサスとオリーブの木のバランスをとることができる社会であって、現在この地球上ではアメリカに勝る見本はない。そして、だからこそわたしは、グローバル化を持続させていくためにも、アメリカがーきょうだけでなく、あすも、その後もずっとー全盛でなくてはならないと強く信じている。アメリカは、世界全体の指針となれるだけではない、そうあらねばならないのだ。アメリカの人々が、このかけがえのない遺産を、無駄にはしませんように。

認めざるおえない現実としてアメリカが世界で最も影響力のある国であるということは間違いないでしょう。その理由がグローバル化にあったのだというヒントをくれるとても良い本だったと思います。

この本を読んで気になったのはなぜアメリカはそこまでグローバル化をうまく適応できたのかという点です。自分なりの一つの解釈は、移民の国家であるため、故郷の欠点を理解し本当に良いと思う基盤を創り上げるという視野を持っていた事が大きかったように思います。また、文化が薄かったことも抵抗勢力が少なく良い判断ができた理由にもなると思います。 

そういった移民世代が一通り世代交代して、文化が少しずつ育まれてきた中でこれからはどうなって行くのかというのはとても興味があります。

一方で、グローバル化のスタンダードを作る側に回りつつあるのが中国です。中国のキャッシュレス決済や情報活用は多くの国で参考にされており、生活様式を変えています。政党の大きな力による舵切りもあったとは思いますが、それよりも猛烈な市場獲得戦争による結果である部分も大きいので、中国国内の市場が選択しているという点は資本主義的です。

資金・経済発展という大きな波に乗る中国がこれからどう世界に影響を与えるかという点も非常に興味があります。