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もうモノは売らない | 「恋をさせる」マーケティング哲学 | 2020年書評#18

コカ・コーラマーケティングで最も成功している企業の一つです。

そのコカ・コーラマーケティングを担当していたハビエルサンチェスラメラス氏が書いた本が本書になります。ラメラス氏はコカ・コーラの前にはP&Gに在籍しており、その前にはMBAを取得しているおりマーケティングを学問的にもまた実践的にも見ています。

www.toplinemarketing.net

マーケティングは一見すると華やかさがある業種ですが、とても読み違えしやすく効果の測定しにくい仕事です。

マーケティングは目的そのものではない。より多くを、より多くの人に、より頻繁に、より高くうるための手段にすぎない。

少しぼやっとしているマーケティングについて一定の回答を出してくれる本のように思います。 

マーケティングを考えるための土台づくり

マーケティングは製品をより効率よく売るためのものであり、土台になってくるのはまず製品やブランドに関するほかのすべての要素が正しいときにのみうまくいく、と言います。まずは品質がいい(必要なスペックと消費者の期待を満たすもの)があってこそできる話です。たまに、どうしようもないものをマーケティングで売ろうとすることがありますがその場合スタート地点がずれている事になります。

この本の最後にかかれているマーケティングの10の結論は次のものになります。

  1. マーケティングは手段
  2. 恋をさせよ
  3. 新メディアはチャンスだ
  4. デザインが生死を分ける
  5. 一貫したメッセージを出し続ける
  6. 正しく質問する
  7. 価格変更はフレキシブルに
  8. リピート売上を念頭におく
  9. マーケティング部門は工場化する
  10. 徹底的に理性で判断する

この原則を頭に入れながらマーケティングの例を元に考えていきましょう。

恋をさせるために

人間の購買行動は日々研究されています。本書中にも紹介されている買い物する脳でも書かれていることに購買活動は感情的な部分が多いと言います。

買い物する脳―驚くべきニューロマーケティングの世界

買い物する脳―驚くべきニューロマーケティングの世界

 

マーケティングを理解する上で 三種類の脳(反射脳・感情脳・理性脳)について認識しておく必要があります。

永遠に愛されるブランド ラブマークの誕生

永遠に愛されるブランド ラブマークの誕生

 

人々の購買行動を考える時には反射と感情を、マーケティングの判断をする時は理性で行いましょう、というのが主張になります。

何かを購入する時に合理性(理性)で判断する事は実は少ないようです。Appleなどがいい例でしょうか。新型のiPhoneが出たから(Appleの製品だから)買い替え候補にはいるという人も多いでしょう。そこに低価格でかつ実は高品質な他社製品があったとしても、ブランドに恋をしている人にとってはあまり関係無いことです。

ブランドに恋をしている人が多ければ、多少の値段はいとわないものです。(高価値化)人々の感情的な部分にリーチするために、合理的なマーケティングを行う事がマーケティング成功の鍵を握ります。

理性的なマーケティングのために

理性的なマーケティングのためにまず5つのリサーチがベースになります。

  1. プレリサーチ
  2. トレンド調査
  3. 追跡調査
  4. 予測調査
  5. 人類学

細かい手法についてはこの本には書かれておりませんが検索すると沢山の例が出てくると思います。

この5つのリサーチを台無しにするのは理性的な質問です。感情脳に訴えかける質問をしなければ、読み間違ったマーケティング結論に結びついてしまう恐れがあります。「あなたはこの製品を競合製品よりも頻繁に購入するでしょうか」などより「どう感じましたか」「このストーリーは好きですか」といった感情を引き出す質問を心がけましょう。

リサーチをする上での7つの注意点を意識します。

  1. 正しい質問をすること
  2. 問うべき質問に基づいて、必要となる調査の種類を選ぶ
  3. 変数はひとつに絞る
  4. あらかじめ結果を予測し、その後の対応を決めておく
  5. 答えを得たら、回答者の頭の中を想像する
  6. 専門家を信頼する
  7. 自分や経営陣の決定を正当化するために調査をしてはいけない

リサーチはとても泥臭く理性的な仕事になります。リサーチを正しく行うために想像性を発揮することはとても大切ですが、リサーチの手法、結果の読み取りには恐ろしく理性的に行っていく事が求められます。

ブランドへ恋をさせる

ブランドの成長とは、それを書い始めた人数が買うのを辞めた人数を上回ることを意味します。商品がリーチするカテゴリーが決まったら消費者とコミュニケーションする時に大切な9つのポイントがあります。

  1. キャラクターをはっきりさせる
  2. ブランドアイデアには無意味なマーケティング用語は使わない
  3. 自分のことばかり話さない
  4. 心にささやきかける
  5. 一貫性を持とう
  6. 退屈は絶対に避けること
  7. 真面目になりすぎない
  8. 言うことがないときは口を閉じる
  9. 余裕をもって計画を立てる

これらの9つのポイントを意識しながら、製品やブランドがストーリーの中心にあることと、エンディングで強調したい価値を要約して伝える事がとても大切です。

ブランドの価値を伝えるためのストーリー作成のためにもいくつかの注意点があります。

「感情」から書く脚本術

「感情」から書く脚本術

 
  1. シンプルに
  2. シナリオの核に人間的な価値を置く
  3. 視聴者に感じてほしい感情を明確にする
  4. テクニックは意識的に使え
  5. 展開の中心にブランドを置く

ストーリの構成を勉強するために良いのは広告フェスティバルなどの作品にて、それぞれのシナリオが訴える人間的な価値や感情、語りのテクニックなどに注意することがクリエイティブを養う方法だと言います。

また、デザインもとても大切な要素です。DNAレベルで恋をさせるには気持ち良いデザインのものが選ばれます。基本的なことは、対称性、均整、親近感の要素です。時にかおりや音にも気を配りデザインすることが大切です。

マーケティング成功例

アヤックスの香る洗剤

アヤックスが洗剤販売で大きな効果を得たマーケティングが香る洗剤です。他社よりも落ちる洗剤を売り出すP&Gと対象的に、顧客の観察を正しく行い、「より落ちるものではなくより早く終る泡切れの良いもの」「掃除をした事が分かる香りの良いもの」ものを販売しました。

当初は見誤っていると思われたこの方策ですが、結果としてP&Gよりもシェアを獲得することに繋がります。

フォード社が「より早く走る馬」を追わなかったように、消費者が正しいインサイトを提供せずに、正しい問いを設定することの大切さを教えるものです。

news.livedoor.com

トロピカーナのパッケージ

最近話題になったローソンのリブランディング時に話題になりましたがトロピカーナで起きた失敗例も本書で紹介されています。

人は慣れ親しんだ愛着のあるデザインからブランドを認識し購入する、ということを示した例でもあります。

note.com

パッケージはもちろん専門家に任せたほうが良いです。マイクロソフトがもしiPodのパッケージをデザインしたら、という動画がありますが色んな人が口出すと全体としての均整が取れないものになってしまいます。

www.youtube.com

専門家に任す一方で、消費者テストは欠かせない、という事がトロピカーナの事例からのテイクアウトでしょうか。

さいごに・どんな人におすすめか

マーケティングする人ももちろんそうですが、マーケティングに懐疑的な視点を持っている人にとてもおすすめだと思います。

マーケティングは未だ非科学的な部分が多いですし、この本のメッセージであるブランドに「恋をさせる」も抽象的なターゲットです。

しかし恋をさせるためにはとてもクリエイティブで緻密なプロセスがあるという事が理解できます。また、マーケティングの効果の振り返りには徹底的に批判的に理性的に行う大切さが述べられており、検証時の注意点がわかります。

これからはメディアが増え、マーケティング・プロセスも細分化していき、さらに社会情勢の大きな変化の波があるため、手法が激しく移り変わるであろう中、ベースとなる考えの3種類の脳であったりリサーチの注意点などは認識しておいて損は無いように思いました。