中川政七商店の本をもう一冊読んでみました。
📒 Summary + Notes | まとめノート
前回「日本の工芸を元気にする!」を読んでからより興味を持った中川政七商店の本をもう1冊読みました。ものが売れなくなる時代であり、かつ作りてがグローバル化したため安くも利便性も高い製品が生み出される一方で、工芸品は素材や作り方の制約を受けつつ勝負しないといけない世界になります。
そんななかで消費者にどう選ばれるのか、どう伝えるのか、そして流通に関するベーシックな在庫管理などを行い大きな成長を遂げているのが中川政七商店であるように思います。
職人仕事が多い工芸の世界では生産量も限られて、さらには機能性もそんなに高くないようなものが多く、昔ながらの素材を昔ながらの手法でという部分があります。伝統工芸の看板があり他者が入り込めない領域に位置できている一方で、その看板が自由度を失わせているという点は難しい問題です。
ヴィトンのバックなどのように職人仕事でかつブランド力を爆発的にあげて利益を生むのはあるべき姿なのかと言うと個人的には疑問であり、少し不健全な形態にあるようにも感じます。
中川政七商店はその中でもうまくバランスを持ったブランド力を育て上げて、ものとしての伝え方も使い手に与えてくれている成功事例の一つといえるように思います。
ブランドをデザインする
中川淳さんがよく言う表現に「下駄を履かせる」という言葉があります。「日本製だから…」「Appleの製品だから…」みたいなものも下駄を履いた状態といえるでしょう。下駄を履かせる状態をいかに作り出せるか中川政七商店は取り組みました。
流通をデザインする
中川政七商店は百貨店や路面店を始め、少し年齢層が高くてもよい消費者へアクセスできる店舗出店をしています。百貨店などでは安い品物ですと逆に不安になり好まれないというのは面白かったです。
私は本来、売れない商品はないと思っている。では、なぜ売れない商品が生まれるか?売る場所と売る価格が合っていないからである。
また、価格決定の主導権がメーカー自身に無いことは不健全であるとして、流通と価格で商品の売れ行きが決まるなかで価格決定の主導権を持てるあるべき姿へ少しずつ修正していったそうです。
直営店舗を増やし、価格決定のできるように行うことを初期段階に行いました。
売り場を1年間回すことで、どの季節でも鮮度を保ちながら運営することは当時の中川政七商店では中々難しかったようです。そのために商品数を増やし、アイテムの出し入れをできるように商品企画を行いました。
今の時代、小売り=売り場に求められるものは何か?「商品の背景」と「価値観の時代」
中川政七商店は伝えることにも多くの力を入れています。商品の背景を最も知り得るタッチポインターとしての役割として、背景をWEBや販売店舗、書籍などでまとめています。
セレクトショップなどはまさに商品の背景と時代ごとの価値観に合わせた商品選定をする役割があり、大きなビジネスとして成り立っています。
もの作りの仕組みをデザインする
「よいもの」とは、商品を通じて会話が生まれる商品
よいものが必ず売れるのか?というと経験則的にはそうでないと言います。売れる商品は、ターゲットとする層にきちんと理解される「よさ」を備えたものであるために、売れる=良いとは限りません。
確かに中川政七商店のふきんがユニクロにおいてあっても売れない可能性が高いかもしれません。
そこでキーとなってくるのは社内デザイナーであると言います。企業のターゲット層に対して良いものを出せているのか、社外のデザイナーと仕事するにしても自社のことを理解して正確に要望できるか。「変えるべきこと」と「変えてはならないこと」のバランスも理解しながら商品群を組み立てる必要があります。
感想
前書と同様に中川政七商店の考え方がうまくまとめられている本でした。
今の時代ものづくりをやられている企業どこも抱えている問題に差別化が中々難しく、ブランドコンセプト先行でタッチポイントがWEB周りだけでやるケースもあれば、広告大量透過で認知力あげて勝負のような闘い方も見られます。
中川政七商店はその中でも、伝統工芸品というアイテムを持続可能なスタイルで広告もほぼ無く拡大されてきました。今の情報があふれる時代と言われている中でも、伝えたい情報をターゲットにリーチできるようにWEB周りも充実し作り込まれています。
個人的にはWEBにまとめるのはありがたい一方で、コンテンツが増えすぎるとターゲットのコンテンツと消費者がアクセスしにくくなり目に付きにくくもなるために、WEB周りの整理も最適解が難しい印象です。
メーカーがプラットフォームのように情報を掲載し、キュレーターがその中から季節ごとのおすすめなものを用意するなども一つ見られる形に思います。
伝統工芸のような地域文化を取り込んだ商品が今また注目されてきており、日本だけならず世界に向けても伝えられていくような未来が楽しみです。