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チャイナ・イノベーション | 李 智慧 (著) | 2022年書評#11

中国のデジタル政策について学ぶべくチャイナイノベーションを読みました。

中国製造2025

ついこの間までの中国は模倣品、安かろう悪かろうのものづくりという印象がある日本人は多いのではないでしょうか。さて、この印象は今も同じでしょうか?

本書が書かれたのは2018年、今から4年ほど前になりますが、当時中国のIT産業の飛び抜けた躍進は眼を見張るものでしが。

その一つの背景に中国がハイテク産業育成しようと掲げた中国製造2025という取り組みがあります。

www.nikkei.com

この取り組みの代表的な成功例は貴州省です。中国内陸部にある貴州省は国内GDP比較で下から3番目と国内でも貧しい地域でした。同省はビッグデータ活用のためにIT産業の誘致を始め目覚ましい発展を遂げます。結果2021年までに成長率は国内トップを維持し続け、その豊かな自然や自然エネルギーの活用からテンセントなどITや起業のデータセンターとして活用されました。

www.afpbb.com

チャイナイノベーションをまとめると、1995-2010年は情報化、現在はデジタル化、今後はスマート化とAI、人工知能ブロックチェーン、画像認識などこれからのIT活用の地盤が着々と整ってきています。

これを後押ししているのは政府の財政支出もあり、2020年までにはAI関連分野に1超元規模、2025年までに5兆元規模、2030年までの10兆元規模にすべく、デジタル活用を後押ししています。

中国がITで解決したかった問題

中国ではスマホ普及率の高さもありQR決済がかなりのスピードで規模拡大していました。偽札の危険性や偽物流通、クレジット文化が無い中国においてEコマースはじめお金の支払いは問題となっていました。店舗と消費者の支払いの間にアリババが入ることにより、顧客の支払いを一度アリババがストックし店舗側から消費者へ物が移動してからアリババがストックした費用を渡すという間に入ることで、オンラインショッピングのスキーム改善に取り組みます。

2013年にはスマホの普及率の上昇に伴い、アリババは「All in Mobile」戦略を打ち出し、全てスマホで完結できるようにアリペイウォレット、資産運用、予約システムを作り出していきます。

モバイルプラットフォームを構築したアリババは、2017年オンラインとオフラインの融合を目指しHemaという高度にIT化された店舗をつくりました。

ohtanao.hatenablog.com

素晴らしいのは店舗の体験にオンラインを融合してきており、スマホで注文し近隣への配達や、販売している野菜のレシピをQRコードを通じて見れたり、支払いはQRで完了、裏側では顧客の買い物データを分析し消費傾向の調査をするなどかなり未来的な取り組みとなっています。

またシェアリングエコノミーでのモバイル活用では代表的なものは自転車レンタルサービスのMobikeとOfo、タクシー配車サービスのDidi、スキルや空いた住居スペースのシェアなどありとあらゆる分野でデジタル化が進みました。

中国のテックジャイアント:アリババとテンセント

中国のデジタル化に欠かせない主役はアリババとテンセントです。

デジタル躍進で先行していたのはアリババ。決済システムのエスクローサービス(第三者信託)を中国で最初に導入し前述した金銭支払時の信頼問題の解決に取り組みました。

サービス当初は銀行でない第三者に資金を預ける文化は無く、全額補填や手数料無料化などで利用者を拡大、7年以上かけて徐々に市民権を獲得していきます。すごいのはアリババの活動により後付で規制が整備されていった所で、2011年に中国人民銀行から「決済業務許可証」を取るまで正式に認められるものはなかったそうです。

アリペイの機能はどんどんと整備されていきます。銀行としての役割が完成された頃には資産運用するプラットフォーム、ユニバオを開始。随時、銀行口座⇔投資口座への資金移行が簡単にできる上に、リアルタイムで投資の増減が確認できるシステムを作ります。

元々あったオンラインコマースのタオバオもモバイル決済に親和していき、独身の日の買物額は年々飛躍的に増加。今では一大イベントとなっていますよね。

一方、遅れて参入してきたのはQQというチャットアプリを展開していたテンセントです。

モバイルが普及される前はICQというPC用のメッセージサービスを展開していましたが、携帯の普及に伴いサービスの形を移行していきます。

iPhoneが発売され、当時欧米ではやっていたkikという無料メッセンジャーにインスパイアされWechatの開発に取り組みます。ここでXiomiも同様のサービスを開始しておりましたが、QQの基盤を活用しWechatはこの戦いを制します。

2013年にWechat Pay機能が実装。当初は利用者が伸び悩みましたが、お年玉配布の機能により一気にブレイクし利用者数が拡大します。

このあたりの細かい話は壮絶で、ライバルが出ては札束の殴りあいのようなキャンペーン合戦、容赦ない模倣などとても興味深かったです。市場による選別が行われており、弱いものが淘汰されていき、新しいものにもチャンスがあるというのは、民主主義的な市場環境にも感じますね。

2強を脅かす存在たち

アリババとテンセントを脅かす起業も続々と登場しているのが中国IT界のすごいところです。

DidiはUberの模倣版のような形のタクシー配車アプリでしたが、本家のUber、ライバルであった快的の容赦ないバラマキ合戦で生き残りました。

当時中国で生活していたのですが、友達含め両方のアプリを利用して良いクーポンがある方を利用、のように消費者はとても恩恵を受けていた事を覚えています。後にUberは撤退、Didiと快的は合併することで結末を迎えました。

アントファイナンスなどを代表にフィンテック分野も多くの会社が生まれます。

AI分野ではセンスタイムやFace++、iFlyTek、モブボイともうどの分野にも入り込んでいるのではないかというぐらい多くの企業が切磋琢磨しています。

本書には無いのですがTikTokなどは今アジア発で最も成功しているSNSでは無いかと思えるほど躍進していますね。TikTokの前進であるMusicalyのオフィスへ行ったのが懐かしいです。

 
 
 
 
 
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中国型イノベーションの本質

中国のイノベーションでかなり重要なものの一つにスピードがあります。模倣される事が当たり前のように起こり得るのでスピードが無いとすぐに足元をすくわれるような環境です。テンセントでは速いときには1ヶ月未満でサービスの開発から実装まで行われ、失敗をしながら改良していく、という考えが強くあります。

また、外部人材の活用や、女性も活躍できる環境作り、さらに産学連携の土壌などオープンな環境があります。中国企業で働きたくなるような情報ばかりですよね。

ユニクロはアリババやテンセントのプラットフォームを活用し大きく売上を伸ばし、また両社は中国進出の実例を作るべくユニクロの販路拡大を支援したと言います。

モバイルファーストとデータ活用の文化は中国から多く学ぶ所があると思える一冊でした。