1970年代の世の中は大量消費による大きな経済成長がもたらされました。これは産業革命依頼、イギリスでもニューヨークやアメリカ、現在の中国やインドでも同じことが言えると思います。
多くの株式会社は成長を求められ、製造業ではものを作ることにより売上を伸ばすことが求められるために意識は変化しつつあるものの大量に消費する文化は健在です。
一方で、ESGの意識も芽生えつつ投資家はESGが充実した会社に投資する傾向も強くなってきました。本書は日本ではまだ少ないSDGやESGを重視しアドバイスをする会社Signifiantの村上さんによる著書になります。
📒 Summary + Notes | まとめノート
資本主義の限界
ピケティによる r(資本によるリターン)>g(実体経済の成長率) という資本成長が経済成長を上回るということが唱われました。お金を持つものはさらに富を生み出すという時代です。
経済が成長すると給与として還元されますが、その還元分よりも投資家へのリターンが高い状態は世界中で起こっており、日本に至っては給与の成長が無く経済の成長率がほぼ無い状態になります。
資本主義の大きな問題点としては地球の資源を切り崩し、売り物にして投資家が多くのリターンを得ています。
本書の考えに株式会社地球という概念で見てみると、損失計算書は以下で構成されます。
売上:GDPの合計
費用:労働力
利益:増加する価値総量
売上の多くは偏った分配をしており、富裕層では労働力が低下。持続可能でない状態に拍車がかかっています。
さらに、利益を生み出すために必要な地球の価値が環境問題や資源の枯渇などから毀損されています。
よりより企業に投資することや、考える消費をすることの重要性が増してきています。
未来をつくるために
著者はこの投資家>労働者>消費者というバランスから消費者>労働者>投資家という意識が大切と言います。消費者が居なければ、労働力は必要なくなり、そうすると投資家も資金を投じるインセンティブがなくなります。
メルカリやTeslaは消費者に支持されたために既存の会社から多くのユーザーを獲得し成長できました。マインドとして消費者が良い消費をすることが求められる社会になってきています。
資本主義の課題
現在の資本主義構造では高齢化(人口問題)、国際紛争問題、エネルギー問題、環境問題、食糧問題、貧困問題があると著者は言います。これらはAbemaなどでよく語られている問題でもあります。
現実問題として、これらは複雑に絡み合っているため簡単な解決策が無い上に、投資家が中心の富のサイクルが労働者へ分配されてないこと、余裕が無い個人は消費行動を変えることができないことなどあります。
消費者の考えが重要であるはずなのに、消費者が考慮する余裕も無いという残酷な問題があります。
そこで著者が考える「サステナブル資本主義」という考えをもっと普及される必要があるといいます。実行する条件として著者があげるのは5つの項目であり、日本は条件に即している状態です。
- 十分な人口を有している
- 個人が十分に豊かであること
- 教育インフラを融資、教育水準が高いこと
- 社会課題への共感力があること
- 実行力があること
感想
現在の資本主義の歪にたいする指摘、持続可能なも形態に移行するためには個人が考えることが必要であり、サステナブル資本主義という概念を謳います。著者のファンドはスタートアップに対して投資を行いサステナブル資本主義の考えを基に投資先を決めているそうです。
投資先を見てみると、ITサービス系が多く、FOLIO、タイミー、ベースフード、SmartHR、ニューラルポケットなどがあります。
著者は投資家という位置からサステナブル資本主義を実現しており、「考える消費」ができる企業に投資しているということではあると思いますが、投資家は利益を出す必要があり、ビル・ゲイツのエネルギーファンドのようにより攻めた投資がどこまでできるかというと利益面を考慮しなければいけない側面は強いように思います。
現時点では資本主義のシステムに乗っかり資本主義の恩恵を受けるということが消費者・労働者のできる最大限のリターン受理行為であるために、「投資」の重要性は高くあり続けるように感じます。
その中で、基本はリターンを最大限できる企業に投資する必要があり、どこまで持続可能性を考慮した投資に配分できるかというと個人レベルでは難しい側面もある気がします。
消費行為に関しては、「考える消費」という概念は重要ですが、経済性(安いもの)が重要性が高くあり続けてしまうのは仕方がない部分になります。