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元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者 | 小林 義崇 (著) | 2023年書評72

国税職員の相続税を担当していた著者小林さん。お金持ちでないと中々相続税に関する情報や手続きに触れる機会が無いものですが、本書では小林さんの職務での経験から、お金持ちと言われる人たちが実際にどんな生活をして過ごしているものなのかが書かれたものになります。 

タイトルはトマスJスタンリーのとなりの億万長者を意識されていると思います。トマスJスタンリーがアメリカ版の内容だったもの、本書はその内容が日本版になっているような印象でした。

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著者の小林さんはYoutubeもやられており面白い内容も多くあります。

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📒 Summary + Notes | まとめノート

相続税の申告は10%

日本で相続税を申告するのは年間死亡者の約10%であり、税務調査に入るのは4%程度だったそうです。財産が多い人ほど調査の対象となるようで、小林さんはつまりかなり高位の富裕層と接していた事になります。

富裕層という定義はクレディ・スイスから発表されるウェルスレポート(http://www3.keizaireport.com/report.php/RID/516624/)にて100万米ドルの資産を持つ人であり、日本においては2022年時点ですと5.4%であるそうです。

3位の日本 (5.4%) の割合は今世紀に入ってから着実に低下しており、現在では英国 (4.6%)、フランス (4.5%)、ドイツ(4.3%) にその座を脅かされています。

為替にもよりますが1億以上を持っているような人が本書では想定されています。

億万長者の家計

著者小林さんが接してきた富裕層は以外と質素な暮らしをしている事が多く、時には電話代も国税局から欠け直してもらうようにするほどに倹約家な人も少なくなかったそうです。カジュアルなファストファッションの人が多く、買ったものは長く使う方が多い。

出典:著者Youtubeより

収入別の消費割合を見てみると、食費、住居費などは高所得になるほど下がる傾向があるのですが、教育費は割合が高くなる傾向があり、高所得者は教育費に支出を増やす傾向にあります。

お金の管理についても特徴的な傾向があり、家族とお金の情報をシェアし時には管理も任せているケースが多くあったそうです。相続税を申告する場合には素早い対応が求められることもあり、財産管理を他者が行っているメリットはここにもあります。

働き方についても特徴があり富裕層は定年なく長く働いている事が多く自営業の方も多くいるようでした。これはとなりの億万長者でも言われているものと似たような内容で自身で仕事をしている地味な職業が多いというところは興味深いです。自営業をするメリットには税率を下げられる方法が増えるということもあります。

在職老齢年金制度などもありますので、職につきながらうまく年金を受取る方法も認識しておくべきでしょう。生命保険を活用した遺産分割もあるようです。

億万長者の資産運用

億万長者には現金信仰も強く申告された相続配分の中の33%は現金・預金であったようです。こちらは時代にもよるとは思いますがバブル時は定期預金でも利率がよく元本割れせずに必ず儲かる方法であったこともあるように思います。現金を預金する場合は1000万円ずつで預金口座を分けて預金している事が多くあったようです。

現金以外の方法では最近増えているのは有価証券の保有(株式など)や不動産です。所得税の負担率は1億円までは上がり続けますが1億円を超えるとまた下がり始める、著者はこれを一億円の壁と呼びます。株式の所得は税率が20%ですので、1億円の壁を超える人達は株式などの売却益が多く含まれるのでしょう。

不動産については結構びっくりする話なのですが、先祖が1万円で買った土地が数千万円の資産価値になっているような事例がたびたびあったようです。相続税対策にも効果的であり、不動産は評価計算により価値を算出され時価の8割程度になる事が多くあります。また、賃貸として利用していた場合はさらに借地権を差し引いて換算できるためにさらに節税効果が見込まれます。

株式投資に関してはかなり損する人も多く見られてきたようで、基本的には長期の分散で短期的な売買や手数料が多く無いものである方が良いと紹介されています。

退職金に関しては大きな節税効果があるために、退職所得控除やiDeCoをフル活用すると良いでしょう。

億万長者の生活

富裕層は持ち家派が多く、年収500万円程度だと持ち家率が66%程度なのが2000万円を超えると9割以上になるようです。小林さんの経験でも賃貸での方は殆ど居なかったとのことでした。

相続税の都市別の申告状況を見ると100億円以上は全国で17件でその中の11件は東京です。やはり都心に多く都道府県別の資産状況の情報も興味深いものでした。

相続税の仕組みとして生前贈与などの方法もあります。年間110万までであれば相続税がかからないこともあり富裕層の間では110万円を生前に贈与していく方法もしているそうです。

また、住宅購入の際にお金を負担することや教育費にお金を使うことなど相続に当たらない範囲で金銭を贈与していく事ができます。

感想

相続税という観点から富裕層の話をまとめている本になります。日本では相続税の負担が大きいためにどのように贈与するかによって税金の支払いを引き下げる事はとても大事になりますし、富裕層ではさらに学が大きくなるために必要な情報になります。

親族が亡くなってから話すと時間も限られており対策も立てづらい中でこういった情報を知っておくのはとても大事ですよね。

また、資産を沢山持っている方がどういった傾向があるのかという事も垣間見れる面白い本でした。本書を読む中で以外にいろんなレポートで富裕層の情報が公開されているものも面白いものでした。ウェルスレポートなどで世界の情報も見れますし日本の情報も多く公開されています。

こういった情報も見ながら勉強していきたいと思います。

📚 Relating Books | 関連本・Web

  1. https://amzn.to/3OQs87p 竹中教授の14歳からの経済学 単行本(ソフトカバー) – 2009/8/29 竹中 平蔵 (著)
  2. https://www.credit-suisse.com/about-us/en/reports-research/global-wealth-report.html Global Wealth Report 2022
  3. https://www.freee.co.jp/kb/kb-kakuteishinkoku/severance_pay_tax/#content5-2 退職所得控除
  4. 年収は「住むところ」で決まる 雇用とイノベーションの都市経済学 単行本(ソフトカバー) – 2014/4/23 エンリコ・モレッティ (著), 安田洋祐(解説) (その他), 池村千秋 (翻訳)