変化の激しい現代に長期の計画をすることは大事なのでしょうか?最近多くの企業において長期、中期経営計画を取りやめる話もよく聞きます。
企業レベルにおいて、長期的な目標設定が足枷となり軌道修正できない事による衰退は多く語られています。失敗の本質にもありますが、間違えた目標設定や間違いに気がついていながらも組織の集団圧力により沈みゆく船に乗り続けるしかなくなる。
個人レベルでも長期的な視点は重要では無いのでしょうか?
本書ロングゲームでは、あまりに多くの人がゆとりを失っている。つねになにかに急かされ、追い詰められ、焦っている。こんな状態から意義深い人生を取り戻すために長期的な視点の重要性を問い直す内容になっています。
「長期の思考」があれば、危機のときに助けになる。「長期の思考」は、最も大切な目標に向けて歩む力になる。
つねに行き当たりばったりで、刺激に反応するような行動ばかりではな、いつまでたっても目標を達成できないだろう。長期戦略を立て、さらには途中で自分の進む道も変わる可能性もあると認識していれば、成功のチャンスを最大化することができる。
暗い時期を乗り越えたときに手に入る報酬は、だんだんと増えるものではない。ある瞬間に一気に増えるのだ。
自分の時間、自分の人生をどう使うのか。意識的に選択すれば、あなたは巨大な力を手に入れることができる。
📒 Summary + Notes | まとめノート
忙しさアピールの罠・余白の大切さ
コロンビアビジネススクールのシルヴィアペレッツァが行った研究によると、アメリカでは忙しいことは社会的なステータスの高さに繋がるとされており、私達は密かに忙しい状態を歓迎しています。自分が価値ある存在であるという証明に忙しくあるという事が無意識的に植え付けられています。
ティムフェリスはこう言います。嫌な感情を忘れたい時はとにかく用事を増やし、予定をつくっていた。そのためにコカインを使う人もいれば仕事を使う人もいる。
忙しく、仕事に集中していれば直視したくない問題を考える時間がなくなります。
忙しくてコントロールできてない人生、それが過ごしたい人生でしょうか?
まず長期的な思考、重要な問いについて考えるためには余白を作る事が必要である。GTDの生みの親アレンの言葉から著者はこの事が全てのスタートであると言います。
余白を作るために最も必要な事は、不要な事にNoという事です。それは誘いに対しての不参加であったり、自身への問いかけでもあります。そのときのコツに基準を作っておくと判断しやすく本書ではチェックリストとして①トータルでかかる時間は?②機会費用はどのくらいか?③身体的コスト、心理的コストはどんなものがあるか?④これをしなかったら1年後に後悔するだろうか?という観点を挙げています。
正しい目標を考える:興味、新しいことへの挑戦
現代で大事な価値観は「お金」に最適化されがちです。また「意義」に最適化するケースもビジョナリーとされてよく例にされます。著者が最も適切だと言うのは「興味」に最適化することだと言います。興味のあること、面白そうだと思うことを見つけて、戦略的ステップを積み重ねていく事ができれば、興味に最適化していくことも夢では無くなります。
ニューヨークに住んでいながら、慌ただしい出張で世界中を飛び回っていた著者はある年の目標に、ニューヨークでしかできない新しいことをすると決めました。Googleで言う20%ルールのように、負担のかからない範囲の20%程度の負荷をかけて新しいことを始め実験を始めます。リストを作成し毎週1つずつこなしていき、ミュージカルを見たときには自身も書きたいと思い週末に台本を書いていると、ある時ミュージカル作家と食事をしたことから、BMIワークショップに参加した方が良いとアドバイスを受け応募します(当時落選)。その後不足している物事や人脈を補い着実に夢の実現へと進んでいます。
挑戦に大切な6つのポイントにあげていることには①正しいサポート②コーチを雇う③期限を決める④学び続ける⑤負けても勝てるようにする⑥10年単位で考える(長期)が大事です。
実行のために
社会人となりキャリアを積んでいる状態で自分の立ち位置を認識し、目の前のことに全集中するべきなのか、目先を変えたほうが良いのかというのはとてもむずかしい判断になります。成長を最大化するためには、最も大切な1つのことに全集中した方がライバルを引き離す事ができるはずです。一方で、興味の対象が移り変わっていては中々1つに集中もできません。著者はキャリアを4つの波という表現で区切って考えています。
- 学ぶ:知識をつける状態(最初の波)
- 創造する:独自性を持ったアイデアをシェアして分野に貢献し、同じような考えの人に出会う(第2の波)
- つながる:自分の声をもっと多くの人に伝聞する
- 収穫する:最終段階。ただし収穫には賞味期限があり、新しい挑戦がないと停滞になる
戦略的忍耐
長期視点で行動する中で、実力が認められなくても粘り強く続けなければ行けない時期があります。フォローもされておらずレビューも無い、コメントされたかた思えばネガティブなもので拒絶される事もあります。
戦略的忍耐には、必要な努力を理解してその努力を続ける事が欠かせません。それでも、うまく行かない時にはどうすれば良いのか。3つの問いが本書では紹介されています。
なぜ私はこれをしているのか?
ほかの人はどうやって成功したのか?
信頼できる人は何と言っているか?
失敗をした時に実験として捉える事ができれば成功への糧とすることができます。目標を達成するまでの道は複数あり、人によって異なります。想定する道は複数あったほうがよいでしょう。
本書でとても良いと思った考え方に、やりたいことはリストしているだけでは永遠にやりたいことであるだけで実行日を決めることで先延ばしを避ける事ができるという考え方があります。これに似たような方法で、まわりを巻き込んでやらなければ行けない状態を作ることもあります。
あきらめず実行し続けること。それが戦略的であること。長期的な視点を持つことが大事になります。成長は突然指数関数的に現れることもあるため、忍耐を持って取り組んでいかなければいけません。
ロングゲームをプレイするために:大事なのはメンタル
終章にはここまで細かくロングゲームのコンセプトや闘い方を紹介されてきたまとめとして最も大事な事、ベースとなることにメンタルの重要性が強調されています。そもそもロングゲームは自分の人生の意味合いを求めるものであるためにほかの人と同じことをしていればよい安心感は無いですし、勇気を持って自分が信じる道を歩まなければ行けないからです。3つの資質①独立心:自分自身と自分のビジョンに忠実であること、②好奇心:自分が面白いと思えるもの、惹きつけられるものを理解すること、③立ち直る力(レジリエンス):偶然や運、個人の好みなどが状況を左右する力は思っているよりもはるかに大きく、だめだった時に次の打席に立つことができるか(打席に立つ回数)が重要になると著者は言います。
感想
本書の大事な論点の2つ、①忙しさへの満足感②長期的な視点を持つ忍耐力、について忙しさは日本人的な感覚が大きい部分かと思っていましたが、アメリカ人も忙しさについて気持ちよさを感じているという点はとても新鮮でした。
新卒の企業で会社内のムードが忙しいと偉い、忙しくて家族と時間を過ごしていない方が何故か誇らしくしているという様子を見たときから、忙しいということを言い訳にできないことを正当化しないと考えていました。
ついつい言ってしまう「忙しいから…」みたいな会話も正確な表現は「優先度が低いから…」「重要と思えないから…」という場合が多くあります。
読んでいてとても良いと思ったのはコーチを雇うことの重要性です。新しい物事を勉強したり、挑戦したりする時に成功のルートを知っている人と話すことができなければ努力の方向性や量を考えること自体が難しくなります。大学受験の時にOB・OGが合格体験記を語りに来たように、参考にできる存在が観測できることでメンタル的な安心感もかなり違うように思います。
そういう意味では挑戦したいことがあった時にお金を欠けずに独学で…!みたいな考え方も根性論的に有効な時もあると思いますが、モチベーションを上げることや最短ルートを選ぶためにはスクールに入りメンターを見つけることも手段の一つとして持っておくべきだと思いました。
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