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GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代 | アダム グラント (著), 楠木 建 (監訳) | 2024年書評53

学校生活や社会生活においてギブアンドテイクは切り離せない概念です。本書ではその人の性質と社会的な成功の関係を事例を持って調査した結果をまとめたものになります。

ギバー:人に惜しみなく与える人

イカー:真っ先に自分の利益を優先させる人

マッチャー:損得のバランスを考える人 日本のビジネスではギバーが中々報われない印象もありますが、本書ではギバーが最後には報われるというような点も少し性善説的な考えかもしれませんが語られており面白かったです。

📒 Summary + Notes | まとめノート

リンカーンのエピソード

農村地域の青年は「イリノイ州クリントン」になることが目標で政治の世界に飛び込もうとしていました。一回目の出馬は23歳の時で結果は振るわず、25歳の二度目の出馬で当選を果たします。

当時負債が多かった彼はスーツを借金して買う必要がありました。弁護士の資格を取ったのち45歳でついに上院議員選挙に出馬。当時の選挙には人気のあるジェームズシールズとライマントランブルがいました。

途中まで一番人気であったものの、現職の州知事ジョエルマットソンが選挙に参加した所形勢が変化します。リンカーンはマットソンが汚職をしているという噂があったためにマットソンが当選してはいけないということで、リンカーンは一番人気であったものの、考えが最も近く信頼していたトランブルを支持するよう自身の支持者にも訴えます。結果トランブルが当選し、マットソンは人気を終えた後に汚職が発覚。

恐ろしいまでのギバーでした。

その後、リンカーンが出馬した際にトランブルが支持を呼びかけるなどもあり、複数回落選したものの当選を果たします。

ギバーの特徴

成功するギバーがしている重要な分野に本書では4つ、人脈づくり、協力、人に対する評価、影響力、をあげています。

中々おもしろい内容だったのは写真を見ただけでテイカーがギバーであることがわかるという話です。

エンロンの写真は自身の顔が画面いっぱいにあり、ジョンハンツマンシニアの写真は胸元から頭部の少し上まで写ったなんてことない証明写真のような構図です。

イカーは自分のことで頭がいっぱいなので、三人称の代名詞より、一人称の代名詞を使うことが多く、CEOの写真の使われ方も自分の意識がより強いものになっています。

ギブアンドテイクの概念を持って推薦状を書くことができるようになったのがリンクドインというウェブサービスです。人脈力があり、人に信頼されていることが可視化することができます。また、休眠した人間関係でもマッチャーはテイカーよりもまた連絡することができます。

2つ目の特徴の協力について、ギバーは自分だけでなくグループが全員得をするようにパイを大きくする特徴があります。優れたクリエイティブを作る人でも自分の才能を全面に出したものが続くことは無かったようで、優秀なアナリストが超高額報酬とともに引き抜かれた後の成功事例を見ると5年後などでは殆どアナリストランキングから外れていました。

リンクトインの創設者リード・ホフマンによると「悪気がなくても、人は自分の貢献を過大評価し、他人の貢献を過小評価する」バイアスがあると言います。夫婦でも、自分のしたことは思い浮かぶのに、相手のしてくれたことは多く思い浮かばないという程です。

うまくいかないときは自分が責任を負い、うまくいっているときは、すぐ他の人を褒めるというのは意識しておいた方がよいでしょうか。

オバマ大統領にはラブと呼ばれる側近がいました。ラブはデューク大学でスケンダー教授の会計学の夏期講習を受講し、スポーツバカの印象であったラブは授業に熱心に参加。スケンダーの授業で学んだ在庫整理の知識がオバマの郵便室で郵便物をデジタル化するという地味な作業をしたところオバマの目に留まり、秘書に抜擢されました。

教育の現場では才能を開花させるブルーマーと呼ばれる存在に注目されています。教師が生徒の可能性を信じて「自己成就予言」が働くために、教師が期待を抱くことの重要性がわかりつつあります。

1980年代の心理学者ベンジャミン・ブルームは世界一流の音楽家やアスリートを調査したところ、彼らが生まれながらの才能があったのではなく、可能性を信じて応援してくれる存在がいた事が分かりました。

ギバーの特徴として書かれている4つ目の影響力です。ここれでも面白かったのは話し方の特徴です。

イカーは強気な話し方をする傾向があり、独断的で、率直。一方ギバーはもっとゆるい話し方をする傾向があり、控えマナ言葉を使って話す。イメージしやすい事が命令口調で指示されるよりも質問するような口調で問われる方が行動に移す時など分かりやすいですよね。

強気のコミュニケーションは短期的には良いかもしれませんが、チームワークやサービスの観点では尊敬や称賛を失うきっかけになりかねません。

人は質問をされて自分のエネルギーをかけて誰かを助けると相手に好感を持つ傾向があります。ギバーのセールスマンが他の人よりも時間をかけていたものは顧客の要望を聞こうとすることであったりと、質問力がとても重要な役割を果たしていました。強烈なリーダーシップよりも影響力がギバーの特徴です。

ギバーの燃え尽き

ギバーを意識するうえで与えたあとの結果に目を向けることも大事になります。ギバーは与えすぎて燃え尽きてしまうのではないか?と思われていますが、重要なのは与えすぎたから燃え尽きたのではなく、困っている人をうまく助けてやれない時に燃え尽きると言います。

状況の変化が見られないギブはおそらく消耗しやすいのでしょう。

また与えることが自己犠牲と感じているケースも注意です。楽しみと感じてギバーになれない場合にはダメージが蓄積されてしまいます。

その他

  • 人生でマッチャー、ギバー、テイカーどれか一つの領域ですべてを終える人はいない。どこかでテイカーになりどこかでギバーになっていたりする
  • 困っている相手を助けることは、自己意識に同化させて相手の中にある自分を助けているようなこともある
  • 共通点を与えるという行為は多大な影響を及ぼす
  • 人々は自分自身を連想させる人々、場所、ものなどを好む
  • 人は人生の多くの領域で、ほかの人がどう行動しているか知らないばかりに、受け取ることに終始している
  • 知能が高ければ高いほど、相手の成功に手を貸す

感想

与える人こと成功するとはどうも偽善の雰囲気が漂う様子なのですが、長く成功するタイプの人であったり企業であったりはとても良いムードであり、悪いところが見当たらない(私利私欲が薄い)時が経験としてありました。

成功なんてどの時間軸で切り取るかで結果の見え方も変わってくると思うので表現としてあまり好きになれないのですが、良いなと思う人に与えている人、最大限に周囲の幸福を選択していける人というのが多いと感じます。

本書の途中にギバーの注意すること、危うさなどにも書かれており、著者からもテイカーが成功する人にも一定数居ると感じている事が示唆できますし、与える人が良いのか?と思う人が居ることを想定した注意をまとめていることも良い印象でした。

この資本主義社会でテイカーが総取りのような風潮もありますが、ギバーの精神も磨いていけると良いなと思います。

たまにYoutubeで流れてくる、金銭的にギブする人の動画など(おそらく打算も多く含まれている企画もあると思いますが…)も一種のギブを世に拡散している良い傾向なのでしょうか。

社会人になってから金銭的にギブできるようにと始めた国境なき医師団への募金も毎月小学ながらどこかで活用されていると良いなと思ったりしました。

 

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