9感性思考を読んだ。
📒 Impression and Review | 感想
Takramの佐々木さん著の本。
子供用の歯ブラシはただ小さくしても使いづらく、子供が握りやすいように太く作ることで子供でも上手に取り扱えるようになった。
今まではロジックで子供は小さいから小さくつくる、というアプローチが主であった一方で、これからは人間観察をしてユーザーが何を欲しているかより具体的なニーズを調査していくべきである、というデザイン思考でいう人間中心の問題解決方法について紹介されています。
イリノイ工科大学のデザイン修士を取得した方の本が出版され、最近はIDEOなどデザイン思考の普及が進んできているように思います。
イリノイ工科大学のデザインスクール必須授業「10types of inovation」の授業ではデザイン思考とは?機能する条件は?をラリーキーリー教授が授業されており、デザイン思考でおろそかにされがちなコンフィギュレーション、オアファリングの要素の重要性を説いています。
10 types of innovation - innovation picture book
アジャイル経営
旧来日本でも多くある経営、開発体制として入念に計画を練って実行するというアプローチは問題を抱えています。実験→修正を繰り返す実行受動型のプロセスはアジャイルと呼ばれ開発スピードの早いIT業界では使われることが多くなってきました。
Burbnという位置情報共有アプリはサービスローンチから、ユーザーが写真共有の機能の利用が多いことから写真共有アプリへ変異しInstagramへと生まれ変わりました。
また、Kickstarterでは今まで銀行融資のために必要であった事業計画の作り込みよりも、ユーザー体験を描くビデオ紹介などからスピードのある資金獲得の手段を生み出しました。
顧客のニーズを想像できない人間たちで計画を繰り返して練り込むよりも、いち早くニーズを得るためにサービスローンチやビジョン公開し、実験的にニーズを理解していくというアプローチは今後さらに主流となるように思います。
プロトタイプの重要性
本書含めデザイン思考ではプロトタイプの重要性を説きます。プロトタイプは大きく2種あり、スタイリングプロトタイプと呼ぶ外見について、テクニカルプロトタイプと呼ぶ機能面を確かめるためのものです。
プロトタイプを作ることにより、体験がより鮮明になり、アイデア創造の発射台、コミュニケーションツール、意思決定ドライバーとなります。
こう考えると、よく会社でありがちなラフなスケジュール案やプレゼンなどは議論のスタートになるのでとても重要なツール・行為である気がしました。
また、プロトタイプにあわせて体験イメージを共有するストーリーボード、ビデオプロトタイプなども重要であると言い、まさしく体験イメージの粒度を上げるためだと思います。
創造性を高めるインプット
デザイン思考的なインプットの大前提には人間はバイアスがかかっていると認識する事です。それにくわえ3つのS、Structuralize(構造化)、Simplify(単純化)、Storytelling(ストーリー化)が大事だと言います。ステップとしては
- 問を設計する
- 情報を広く深く集める
- 情報を整理する
- ストーリー化
他にもインタビューや、インタビュー時に極端なユーザーにあたったり、ユーザー観察なども重要なフレームワークです。
感性を磨き続ける
日常的に新しい物事に触れ続ける佐々木さんが意識していることに①芸術や最先端の技術にふれる②レッテルを剥がす③多様な人と会う、ということをしているようです。
様々な企業に立ち会いともに仕事する中で提案のレベルやコメントの有用性など求められる厳しい環境で働きながらも常に勉強しているとのことでした。
もしデザインスクールに通いたい場合主に6つのカテゴリーがあるようで①コミュニケーション②プロダクト③インタラクション④プランニング&ストラテジー⑤ユーザーリサーチ⑥システムズ、というカテゴリーについて自学してみるのも良さそうです。
デザインスクールでの4つの学び
- 人間中心的
- 破壊的
- 反復型
- 多様性
今はVUCAが重要な時代
- Volatility(変動性)
- Uncertainty(不確実性)
- Complexity(複雑性)
- Ambiguity(曖昧性)
重要なのはとりくみのにふさわしい課題を解決する
ブレストの6フレームワーク
📒 Summary + Notes | まとめノート
感想
IDEOの影響などによりデザイン思考について知る機会が多く、計画を練り込むより実験的に物事を進行するアプローチは今の時代にとても適合した物事の進め方のように思う。
もちろん、事故につながった場合のリスクが大きい分野などには適合しないが、世の中の多くはもっとアジャイルで良い気がするし、特にウェブ周辺の物事はアジャイル思考が大事なように思う。
プロトタイプにてビジュアルプロトタイプとテクニカルプロトタイプの切り口はとても合点がいくものであるし、草案があることにより議論がより具体的になるという点とあわせてもプロトタイプを作りシェアするという事の重要性が認識できた。プロトタイプの精度や質を上げていったりできるとさらにアジャイル思考が発展するように思う。
この勢いよく物事を進めていきピボットしていく考え方を見かけるのは最近の中国であったり、アメリカであるように思う。既存のものを破壊できる視点・選択肢・柔軟性というのは文化背景に依るものだと思うが、日本の社会にもう少しあっても良い要素に思う。
また、感性を磨くために新しい物事に触れたり、旅行に行く、多様な人と接する、本を読むということは続けていければ幸せだなと思う。
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