久しぶりに小説も読んでみようと言うことで昔から好きな作家の一人でもある川上未映子さんのあこがれを読みました。
物語
物語は2章構成で二人の男女の主人公による視点の入れ替えで各章が描かれています。
1章目は小学生の男の子の視点で描かれています。ミスアイスサンドイッチと称する愛想の無い女性店員が気になる男の子。いつもサンドイッチを買うのですが特に話すことも無く日々を過ごしていると、いつものように並んでいる眼の前でいわゆる普通の何でも無い男の大人の人がそのスタッフに態度が悪いと起こる様子を目撃します。
細かい心の描写をストレートには書かずにも心理描写が伝わるような情景描写は、小学生の細かな心の変化を映し出しています。
男の子の母親は怪しい占いにハマっており、サンドイッチ屋さんの近くにあるパワーストーン屋の占い師と仲良く、家の中にも占い部屋があり、あまりの雰囲気の悪さにその部屋に立ち入ることもしません。
父親は若い頃に亡くなったために母親とおばあちゃんと過ごす日々ですが、おばあちゃんが死へ近づく様子を見て感じていること、怪しげな母親の活動に対しての不信感など子供の視点が散りばめられています。
ミスアイスサンドイッチがある時から店に出なくなり、ふと気になった男の子は親友である女の子と店を訪れ女の子が店の人に聞くと辞めてしまってもうすぐ最後の挨拶に来る日であることを知ります。
男の子は絵が得意で、ミスアイスサンドイッチを描いていましたが最後に会えた日に勇気を持って声をかけ絵を渡します。何度も店で買物をしていたことを告げると「ありがとう」と言われ、結婚するから違う街へ引っ越しすることを知りました。
そこに至るまでに親友の女の子に言われたことに「会いたいと思う人に会える時にあっておかないと、人って突然居なくなってしまうものだよ」という言葉も子供の直感的で素直な言葉もどこかはっとするものでした。男の子はおばあちゃんにもその言葉を照らし合わせます。
2章目は男の親友でもある女の子の視点です。こちらの家族も父親との二人暮らし。小学6年生の女の子が自分の父親に別の家族があったと知り同様しながらも、好奇心でその家族のことが気になります。
そのきっかけは学校の授業で友達が調べていた画面を見てみると、自分の父親の記事が調べられておりスクロールすると画面の最後に経歴があり、娘を一人持つこと。そして昔に離婚していて別の娘、つまりお姉ちゃんが居ることを知りました。
映画評論家として多くの映画を家にあり、記事が世に出ていることから、インターネットで親の名前を調べてみると、どうやら1時間ほどのところに住んでいることがわかります。父親の携帯を調べて家を突き止め、とある日に家へ向かいます。
親友の男の子を家の向かいにあるコンビニで待ち伏せし犬の散歩に出てきた高校生ほどの女性がお姉ちゃんであると直感的にわかり、ついていったら犬が用を足すために止まっているところに鉢合わせ話すことになります。
そこで家へ招かれケーキも出される。結局会ったら何を知りたかったすらも分からない。帰りの時に男の子と話していると今日の違和感に気が付き問いただすと結局はバレていて親から男の子に電話があり口裏を合わせて計画をしていたことがわかります。
裏切られたような感覚でパニックになり思わずその場を離れますが、気持ちが落ち着いて駅に戻ると男の子が待っていて謝罪。その後父親とのギクシャクも戻り、習慣であった金曜日の夜に男の子を招いて父親と三人で映画を見るイベントも再開しました。
途中には男の子が断りきれず付き合うことになったイケイケグループの女の子から親友と話すのを禁止されます。そんなの関係無いと言いながらも少しギクシャクする様子。小学6年生にもなると男女の親友といった関係も付き合ってるのかと思われる、誰しも味わったことがあるような感覚も描かれていました。
感想
いつもいわゆるビジネス書みたいなものを読んでいると、どこかうまく言った経験やドラマ、正解を見つけにいったり、何か仕事に活かせるもの、みたいなものに意識が行っているように思います。
小説を久しぶりに読んでみると、なんでも無いような心の動きや心情のゆらぎが新鮮で、ビジネス的なワクワクして読むものと違う楽しみがありました。
ある種どうでも良いような日常に心の動きが右往左往しながらも物語が進み、ふと書かれていることに心が打たれたり、はっとする気づきのようなものもあります。
自分の生い立ちの視点以外にもこんな視点を持っている小学時代の友達も居たのかと思うのもはっとしたことでした。
なんとなく感じていた祖父の世代の他界に対する感情であったり、いつも居た人がライフイベントで自分の生活圏から居なくなる寂しい感情。恋心が芽生え始めて男女関係のギクシャクなど振り返るとそういうこともあったななんて思います。
ビジネス書の方が配分は多くなるとは思いますが、今後は共用として知られているようなものであったり、話題の小説なども読んで凝り固まった考えをほぐせるようになればなと思いました。
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