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デザインのデザイン | 原 研哉 (著) | 2023年書評#38

前から読もうと思い買ってあった本を読んでみました。

📒 Summary + Notes | まとめノート

デザインとは何か

デザインは誰にでも関わる一方で、どこかアート的な文脈も含まれている上に言葉で表現しにくさもあると思います。英語で言うDesignと日本語で言うデザインも前者は設計というような響きが多くどこか論理的である側面もあります。

デザインとは、ものづくりやコミュニケーションを通して自分たちの生きる世界をいきいきと認識することであり、優れた認識や発見は、生きて生活を営む人間としての喜びや誇りをもたらしてくれるはずだ。

歴史的にデザインという概念は150年ほど前から始まり、産業革命を発端として大量消費大量生産化から生まれた生活に対して美意識や知性などの側面が注目されます。ジョン・ラスキン、ウイリアム・モリス、など反近代への運動がありました。

その後1919年にはドイツでバウハウスがワイマールにより創設されますが、1933年にナチスの弾圧により解体。バウハウスは僅かな期間ではありましたがその芸術教育は多くの影響を与えました。

つまり、モダニズムをいう枠組みの中で、デザインという概念が、バウハウスを契機として非常に純粋な形で成熟したのである

20世紀後半になるとデザインは経済に強力に牽引されます。デザイン思想には少なからず社会主義的な色彩がありましたが、産業成長という経済的要因の影響を色濃く受けます。元々日本では民芸と呼ばれるような生活形態に色濃く影響と受けたデザインという概念がありましたが、生活文化の方向性から日本のデザインは経済へと大きく向きます。

アメリカでは、第二次世界大戦の戦火を逃れアメリカへ転移した、ワルターグロピウスはハーバードへ、ミース・ファン・デル・ローエイリノイ工科大学へ、モホリナギはシカゴにニューバウハウスを設立するなどバウハウスのデザイン思想を軽症します。アメリカのデザインはマーケティングという側面を色濃くし成長しました。

ヨーロッパではブランドという概念による価値保存法が色濃くあります。

僕の専門領域はコミュニケーションであるが、その理想は力強いヴィジュアルで人々の目を奪うことではなく、五感に染み込むように浸透していくことであると考えるようになった。

リ・デザイン展

本書で多く触れられているのはリデザイン展についてです。別で本も出版されています。

www.ndc.co.jp

日用品に関して改めてゼロベースでデザインしてみようという試みであったこの展示は様々なデザイナーが参加します。

本展示にて坂茂はトレイットペーパーの芯を活用した建築、佐藤雅彦出入国のスタンプ、隈研吾ゴキブリホイホイ深澤直人ティーバッグなど印象的な作品も多く残りました。

無印良品との関わり

原研哉さんといえば無印というイメージがありますが、本書にはその関わり始めについて書かれています。2001年に田中一光さんからの依頼による無印良品のボードメンバーに加わることを打診されます。原研哉さんは同世代のデザイナーである深澤直人も同時に参加してもらうことを伝えます。

無印良品の無駄の無い(何も書かない)ようなデザイン広告が生み出されます。原研哉さんのスタイルととても一致していました。

引用:https://www.muji.com/jp/flagship/huaihai755/archive/hara.html

日本にいる私

興味深かった章の一つに日本のことをもう少し知りたいとの考えをまとめている章がありました。世界中を飛び回る中で日本や東京の面白さについて再認識し、陰翳礼讃を身近な友人が読み直しているなどから日本に目を向けます。

そこで行った仕事は鹿児島の温泉宿にて天空の森であったり、長野の小布施堂でありました。

tenku-jp.com

TENKU|天空の森|究極のリゾート|南きりしま温泉【公式】

obusedo.com

栗菓子の小布施堂(オブセドウ)

感想

昔から読んでみようと思い数年積ん読状態であった本をやっと読みました。デザイナーの語りにより自身の作品にどのような思いがあったのか、経緯があったのかなど知ることはとてもおもしろく感じました。

同時期にもう一冊デザインのめざめというエッセー集も読んだのですが、中々デザイナーの語り口は難解だなあと思いました。音楽もそうですが何が評価されるか分からないですし、時には時代性であったり新規性など実力に加えタイミングが重要な仕事にも感じます。

なぜ評価されているのか、何が評価されているのかなどの理解のために読むのはとても重要に思う一方で、こういったデザイン本を自分がうまく読む方法も勉強しないといけないように感じました。

📚 Relating Books | 関連本・Web

  1. https://amzn.to/419k8CT モダン・デザインの展開―モリスからグロピウスまで 単行本 – 1957/7/1 ニコラス ペヴスナー (著), Nicolaus Pevsner (原名), 白石 博三 (翻訳)
  2. https://amzn.to/3zHQgSn バウハウス――歴史と理念〈記念版〉 (アート&デザイン叢書) 単行本 – 2019/12/19 利光 功 (著)
  3. https://amzn.to/3UmirzV 陰翳礼讃 単行本(ソフトカバー) – 2018/1/18 谷崎 潤一郎 (著), 大川 裕弘 (写真)