アメリカのハドソン研究所はアメリカのシンクタンク。そこで働く村野さんの著書を読みました。
そもそも国防について素人すぎてハドソン研究所すらよく分からなかったり、なぜGDP比での拠出について言及するのかという点があまり理解できないほどの素人ですが世界を知るという意味合いで国防の勉強がてらに読みました。
Military balanceによると各国の軍事費拠出は下記のようにあり、日本は9番目のサイズです。
第一生命経済研究所のレポートで最新版も紹介されています。
引用:https://www.dlri.co.jp/report/ld/442151.html
本書の出版後にPHPやPIVOTなどでも話されている動画もあります。
📒 Summary + Notes | まとめノート
アメリカの国防
トランプ大統領就任になりウクライナ戦争の停戦を狙っていた様子が知られていますが、その背景にはいわゆる2個所以上でのリスク対策ではなく、1箇所に集中してリスク管理をする狙いがあります。
背景としてはやはり台湾有事の対応能力を準備しておきたいということでしょう。一方アメリカの世論として軍事費に費用を費やすことの理解が得られにくくなっているためにアメリカ国内でも軍事費にさける費用は限られつつあります。
台湾有事の想定ケースには1)封鎖およびミサイル・航空攻撃、2)着上陸侵攻、3)台湾内部での戦闘という3段階があります。台湾海峡を突破することは簡単ではないため、シュミレーションによると殆どのケースで防衛できるものの、日本が米国に対して、在日米軍基地の使用を認めないケースには唯一台湾侵攻成功が想定されていると言います。
最悪の条件にはさらに朝鮮半島で戦争が起きてしまいリソースが分散されてしまうことです。
米国キーパーソンとの対談
本書は村野さんのパートの後に4人との対談内容でまとめられています。
- アンドリュークレピネビッチ https://en.wikipedia.org/wiki/Andrew_Krepinevich
- HRマクマスター https://en.wikipedia.org/wiki/H._R._McMaster
- エルブリッジAコルビー https://ja.wikipedia.org/wiki/エルブリッジ・コルビー
- マイケル・ベックリー https://en.wikipedia.org/wiki/Michael_Beckley_(political_scientist)
アメリカ視点からの日本の立ち位置やすべきことなどが語られています。
現在のウクライナ侵攻についてアメリカは多大なる支援をしている状態にあります。その横で中国がICBM用のサイロを300箇所も建設していたり、核弾頭数についても向こう10年で数百発から1000発以上に拡大しているという推計もあるようです。そのためにリソースが分散することにより、量による差が出てしまうという問題もあります。
歴史的に見ると、ナポレオンが欧州を支配しようとして以来、第一次世界大戦時のドイツ、第二次世界大戦時の枢軸国、そして冷戦期のソ連と、覇権をめざそうとする国はいずれも特定のある国ではなく、複数国の連合によって敗れています。
ウクライナ侵攻に伴うアメリカの武器供給によるアメリカに十分な規模の武器や弾薬が不足しつつあります。また日本が保有するものを共有することで備える事が重要になります。
トランプ大統領政権下で国防政策担当に務めるコルビー氏は緊迫感のあるコメントをしています。
日本は自国の安全保障に注力する必要があり、すべてを相互に結びつけて考える必要はないということです。欧州や中東は自分中心ですが、アジア諸国は自分たちが必要なことだけと考えているように見えません。
皆さんは、遠くでクマに襲われている人のことを心配していますが、自分の目の前にいるドラゴンを無視するべきではありません。日本の人びとには、目の前の危険がどれほど大きいかをわかってもらいたい。
日本の防空システムは増やそうとしていますが、十分な量であるとは思えないというのも書かれています。また、日米韓での連携も北朝鮮対策としては一定あるもののそれ以上のものはみられないために過大評価してしまう危険を唱えます。
感想
あまり馴染みの無い軍事や国防に関わる著書でした。基本的には日本の安全保障意識の低さや本気度の無さというのが目に付く内容でした。そもそも考えてみると、日米同盟という定義もどこまで有効であるのか、なぜ米国が日本のことを守るという意識になるのかとも思います。
一方で感じるのは、今の時代に領土侵攻・支配するメリットというのは何があるのだろうかという点です。明らかに記録が残る中で土地を奪う(奪い返す)という行為により世界中が目撃者になり、そういった国に世界が従うようになるかというとそうならない気がしますし、相互依存しているこのグローバル世界でマイナス影響の方が多く感じます。
リー・クアンユーの回顧録を読んでいて思ったのは当時植民地であった所はある意味メリットの教授もそれなりにあった点も感じられます。自国で独立するのが成り立たない時に助けてもらうという点では支配という手もあると思いますが、自立できている状態で取り込み行為がどこまで有効であるのかは疑問に感じる点もあります。もちろん、ウクライナ侵攻をみているので起こらないとも思いませんが、ロシアは孤立する運命を歩んでいるように見えます。
ただし、アメリカからすると自国のことは自国で守るように頑張ってねという視点は当たり前に感じます。より自国の状況がどうしようも無くなってきたら拠出できる費用や人員も制限される中で世界中の警察をやる余裕が無くなってくるでしょう。そういった意味では唯一の各被害国ということで非核三原則に縛り続けるだけというのも考え直す時期はくるのかもしれません。
📚 Relating Books | 関連本・Web
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- https://amzn.to/4lOfm8R 戦場としての世界 自由世界を守るための闘い 単行本 – 2021/8/21 H・R・マクマスター (著), 村井 浩紀 (翻訳)
- 日本の戦略3文書 https://www.mod.go.jp/j/policy/agenda/guideline/index.html
- https://amzn.to/4jZfz7v 拒否戦略 中国覇権阻止への米国の防衛戦略 単行本 – 2023/12/23 エルブリッジ・A・コルビー (著), 塚本勝也 (翻訳), 押手順一 (翻訳)
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