こちらも2021年に読んだ本ですが年内に書けなかった書評になります。
2021年は振り返ると40冊前後読んでいたように思います。
2022年からはしっかりと記録していくよう頑張りたいです。。。
📒 Impression and Review | 感想
最先端のテクノロジーに関して現場にいる著者が書く、楽観的な側面たっぷりの未来予想本のようなものでした。
本書のタイトルにあるように今の10年の変化と数世紀前の10年の変化を比べると異次元のスピードで変化しているのだなと改めて実感します。この壮大な変化に対してマインドセットとして柔軟性が無いといつまで立っても「昔は良かったよねおじさん」になってしまいそうですし、祖父母の世代から見ると今のスマホで買い物なんて世の中わけわからないような、なんてのも思います。
新しいテクノロジーについても、幅広く知れるとても良い本だったように思います。やはり仕事の業務だけこなしているとなかなか出会わない分野のことであったり、狭くなった視野を再認識させてくれます。ワイヤードなどの雑誌もそうですが、定期的に新しいテクノロジーに認識していくことはもう少し意識的にしないとだめだなと感じました。2022年の課題にしたいです。
新しい技術は沢山の可能性を秘めていて、この先の未来がどう変わっていくのか。
個人的には伸びすぎたと思っている人間寿命もどんどん延びていき、課題山盛りなエコの話題にどう人間が振る舞っていくのか、テクノロジーの力によって少しでも幸せな人達が増えていくのも楽しみに過ごしていきたいと思います。
📒 Summary + Notes | まとめノート
すべてが加速する未来
今、テクノロジーにより飛躍的な成長ができる世界になりました。本書の「加速」する未来というのは分野違いのテクノロジーが融合していくことにより、変化がより加速的になっていくということを分野ごとに紹介していくものです。
著者はピーターディアマンディス。数々のスタートアップやシンギュラリティ大学の設立などテクノロジー界の最も影響力のある人間の一人です。
最初の事例は日本でもおなじみになったUber EatsのUberです。Uberは移動のコストを大幅に下げ、将来は自動車を所有する経済合理性が無いようになることを目指していると言います。そもそも、車を所有している中で車の稼働率は1日の中で5%以下であり、殆ど眠らせている財産状態です。それもそのはずで寝ている時間や通勤移動時間以外はだいたい泊まっています。
仮に自動運転が完全に可能になったとすると、車の所有者は車を常に放り出しておきタクシーとなってもらい、勝手に充電しに帰ってくると通勤の時間には自分が利用する。そんな世界を描いているそうです。
そうすると十分な都市部では今よりもさらに車を所有する人は減りそうでうすよね。より贅沢品的な趣向が強くなっていくのではないでしょうか。
イーロン・マスクを見ていると加速度的な進化がより伝わってきます。テスラはEV車で圧倒的な地位を築き、スペースXは宇宙旅行を実現し、ハイパーループも建設中です。イーロン・マスクはTwitter上でオープンな議論も好きですし、ポストしてから実現までとてつもない速さで物事を実現させていきます。
コンピューターは今までムーアの法則でエクスポネンシャルグロースを見せていましたが、今後は量子コンピューティングによりムーアの法則の比ではないレベルの加速度的な変化があるかもしれません。
エクスポネンシャルテクノロジー
加速度的な変化をするためのフェーズは大きく6つのステージがあると言います。
デジタル化→潜行→破壊→非収益化→非物質化→大衆化
一つわかりやすい例はカメラでしょうか。元々はフィルムなどカメラそのものも高価でありフィルム、現像などすべてにおいてお金のかかるものでした。デジタルカメラの普及により今の産業を破壊的に変え、低コスト化が起き今ではiPhoneなどスマホに収められるほどの大衆化を見せました。
さて、エクスポネンシャルテクノロジーの例に移っていきましょう。人工知能、ネットワークなど今驚くほど生活に浸透してきています。5G、気球、衛生、センサー、ドローン、ロボットなどは今大衆化までは程遠いですが潜在的な可能性を秘めるものです。
仮想現実、拡張現実、3Dプリンティング、ブロックチェーン、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、クリスパー、どの技術もまだまだ多くの可能性を秘めている段階で、これらのテクノロジーは世の中を爆発的に変化させる、かもしれません。
本書と話はそれますが、コロナの対応なんてまさしくテクノロジーが集約されたものだと思っています。mRNAワクチンは医療を大きく変えるゲームチェンジャーになり得ますし、今後数年は要観察期間ではありますが、コロナワクチンにより大きな実績を掴む可能性がありますよね。今後mRNAワクチンが多くの病気に対して有効なものを作り上げていければガンにより死者数も大幅に減るなんてこともあるかもしれません。
話を戻しますが、本書ではこの加速をさらに加速させる推進力も紹介しています。
1.時間の節約、2.潤沢な資金、3.非収益化、4.「天才」の発掘しやすさ、5.潤沢なコミュニケーション、6.新たなビジネスモデル、7.寿命を延ばす
今の世の中はコンピューターの演算能力により長時間必要であった計算はより短期間でできるようになり、資金調達方法も多様化し機会は増えています。世の中の人がネットワークを通じて世界中どこでもやりとりできるため才能の発掘も容易になってきております。天才たちの寿命が延びればより人類の進化に爪痕を残すことができるため、進化を推し進めるでしょう。
今では人類の寿命はすでに伸び続けており、感染症対策や抗生物質の活用、グーグルは死の克服を目指すプロジェクトを始めたとも言われています。
すべてが生まれ変わる
本書はより具体的な話に進みます。
買い物の未来を考えてみましょう。
店舗型のモデルでウォルマートはより効率的な安いビジネスを始めます。その成長はとても素晴らしいもので一つの加速度的な変化であったと言えるでしょうか。その後eコマースが始まりアマゾンやアリババが圧倒的な販売能力を見せます。パーソナライズされた商品のリスティングであったり、配達システムなど年々快適になってきていますよね。イスラエルのスタートアップ、ビヨンドバーバルはAIのカスタマーサービスを提供し、顧客の声色でより効果的な受け答えをし対応満足度をあげようとしています。
アマゾンの実店舗AmazonGoではIoT化によりレジ待ちの無い体験を作り出しました。アリババのフーマもそうですよね。
ハイテックスーパー 盒马鲜生 (Hema Xiansheng)に行ってみた! - ライフイズビューティフル
レジ待ちがより無くなる日も遠くないかもしれませんね。
3Dプリンタがより使われ始めると、足りない部品の取り寄せなどしないで、3Dプリンタで作成して修理する事ができるようになるなど、物質の移動がより無くなる可能性もあります。
広告の未来について考えましょう。
今やSNSは大きな広告産業です。Googleは広告をより適切に表示させ、Facebookは細かいパーソナル情報を活用しています。著者は今後web3.0の世界ではより空間的な広告が増えると言います。AR対応したゴーグルをかけるとその中でよりひとが詳しく説明してくれたり、店舗では視線を検知するセンサーで興味度合いを調べ、興味のある商品の色違いなどレコメンド。声のコピーやディープフェイクの世界ではAR内で有名人があなたに商品説明なんてこともあるかもしれません。
また、音声認識からスマホに「歯磨き粉買って」と言えば既存製品の比較をしてあなたに最適な商品を見つけ出すこともあるかもしれません。
エンターテイメントはどうでしょうか。
ネットフリックスはレンタルの概念を変えました。さらに自社コンテンツは高クオリティですし、あなたにあった作品もどんどん紹介してくれます。
Youtubeはクリエイターへプラットフォームを開放し、稼げるエコシステムをすべての人へ提供し多くの人がエンタメだけでなく時間を過ごしています。
今後ARが発展するとより没入型コンテンツが発達し、TikTokのようなアテンション型の仕組みで人々はさらに時間を費やすことになるかもしれませんね。
次は教育です。
画一的な教育はもう過去のものになるかもしれません。子どもたちにタブレットが提供されアプリが整備されれば、自分が学びたい事を自分から学び、それも優秀な教師から教えてもらえるなんて世界がすでに始まっているように思います。
社会科見学や修学旅行はスマートグラスを通じてエジプトに気軽に行けるようになるかもしれませんし、ホームレスの現状を理解するのにAR上で生活を体験したりコミュニケーションするなんてことも起こり得るかもしれません。
次は医療です。
1992年、マーティーンロスブラットは娘の余命が宣告されたため、優秀なチームを元に薬のライセンスを取得し娘の命を救うことに成功した。設立された会社ユナイテッドセラピューティクスはこの薬により毎年15億ドルの売上を得ているといいます。
数々のセンサーで人体データを取得しているのも今後健康改善に期待できるでしょう。Appleは健康データを取得し、Xiomiなども睡眠、歩数、脈拍データなどリストウォッチからデータを気軽に取得できるようになりました。
遺伝情報からの健康予測や、遠隔医療もより普及する可能性を秘めています。
そうなると次は寿命の話題です。
不老不死は大昔からのテーマでした。アマゾンのベゾスや、投資家のピーター・ティールもアンチエイジング会社に出資し長く、より健康に生きることに対して投資している人たちです。
ちょっと長くなってきたのでさっと進めますが、その他に、保険・金融・不動産の未来、食料の未来に関するテクノロジー紹介も沢山書かれています。
エコに対する技術利用
世界経済フォーラムで定期的に刊行される「グローバルリスク」で5つの脅威について書かれたものは、水危機、生物多様性の喪失、異常気象、気候変動、環境汚染、とすべてエコに関わる内容でした。
著者はこれらの危機に関してもテクノロジーによって解決できるものが多くあると言います。
ディーンケーメンは水危機に対して小型の浄水器を作り出す事により、綺麗な水を飲めない人たちをなくそうと試みています。動力は可燃燃料ならなんでも可で牛糞でも可能。さらにケーメンは清涼飲料サーバーを開発し、150もの清涼飲料水を作り出してしまえるサーバーをコカ・コーラと共同で普及させようとしています。
発電の世界は風力、太陽光、蓄電はテスラのギガファクトリーやEV開発で大きなうねりの中にあるといえるでしょう。
5つの大移動
個人的に一番興味部かかったのが最後の章です。
著者は人の移動が進歩のカギであると言います。スタンフォード大学の経済学者ペトラモーザーはスタンフォードの同僚の半数以上が移民であった経験からイノベーションの加速の度合いを定量化しようと考えました。研究ではユダヤ人が大量にアメリカに流れてきてから特許の出願数が飛躍的に増えている事を見つけます。
アメリカの大学が出願する特許の3/4は少なくとも1人の移民が含まれると言います。
2016年のユニコーン企業の半数は移民が会社であり、移民は爆発的な雇用も生み出している。
この優秀な移民はプラス効果を生み出しているという結論は実にアメリカらしく、日本も見習ってほしいですね。
もう一つ興味深い点は、今後の都市への人口流入の加速化です。2050年には世界人口の66〜75%が都市に住むようになり、ハイパーシティと呼ばれる街が増えるとされています。都市は経済合理性が高く、簡単に言うとインフラ整備が効率的にできるからですよね。今の日本でも東京で生活するほうが圧倒的に便利ですし、インフラも整っています。さらに、都市のほうが生産性が圧倒的に高くなります。
📚 Relating Books | 関連本・Web
- https://amzn.to/3zcXuNa 創造する機械―ナノテクノロジー K.エリック ドレクスラー, K.Eric Drexler他
- https://amzn.to/3mNAI9B 楽観主義者の未来予測(上): テクノロジーの爆発的進化が世界を豊かにする ピーター・H. ディアマンディス, スティーヴン コトラー他
- https://amzn.to/3zin6Za ダイヤモンド・エイジ〈上〉 (ハヤカワ文庫SF) ニール スティーヴンスン, Neal Stephenson他
- https://www.bloomberg.co.jp/quote/UTHR:US ユナイテッドセラピューティクス
- https://jp.weforum.org/reports/the-global-risks-report-2021 世界経済フォーラム
- https://wired.jp/2008/03/27/『segway』発明家による、高効率の蒸留型浄水器/ 『Segway』発明家による、高効率の蒸留型浄水器
- https://www.flowresearchcollective.com/zero-to-dangerous/overview Zero to Dangerous
- https://www.abundance360.com/summit Abundance360
- https://www.abundance.digital/ Abundance degital
- https://www.su.org/ シンギュラリティ大学
- https://www.xprize.org/ Xプライズ財団
- https://boldcapitalpartners.com/ ボールドキャピタルパートナーズ
- https://healthnucleus100plus.com/ ヘルスニュークレアス