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パラサイト 半地下の家族 公式完全読本 | ポン・ジュノ (著), 町山 智浩 (著), ミルクマン 斉藤 (著), 浦川 留 (著), キシオカ タカシ (著), 土田 真樹 (著), 岡本 敦史 (著, 編集), タダーヲ (著), 東 奈江 (著), 早見 純 (イラスト) | 2024年書評90

パラサイトを観たので解説を色々と見る中でたどり着き読みました。アカデミー賞カンヌ国際映画祭で賞を受賞した作品になりますが、見る機会に恵まれずやっと見ることができました。そちらの感想は別途書きたいと思います。

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📒 Summary + Notes | まとめノート

絵コンテ

本書の多くの部分でポン・ジュノ監督の絵コンテが紹介されています。日本の漫画に大きな影響を受け昔趣味で漫画を描いていたというポン・ジュノ監督のストーリーボードなのですが、映像の再現度が高くとても精密に描かれています。

カメラのアングル、揺れや動かし方なども既に指示が書かれており一緒に仕事をするカメラマンらとしてはとても想像がしやすいものでありがたそうです。

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本書でも紹介されている所としては、パラサイトはカット数が通常と比較して少ない(長尺カットが多い)のもこのように指示が明確である賜物に思います。

ポン・ジュノ監督

ポン・ジュノ監督の作品の特徴として社会問題を描いている点があるようです。日本で言う万引き家族の是枝監督のようなイメージなのでしょうか。パラサイトでも多く社会問題が描かれています。

半地下は北朝鮮の攻撃に備えた防空壕のような施設であり古い建物にはよく作られており、ソウルの人口急激による住居確保のために半地下、地下の家が貧困世帯に貸し出されるという背景があります。そのような家ではトイレが設備の関係で半地下の床よりも高い位置にあることから床から登った位置にトイレがあることなども映画で描かれていました。

高低差も本作で上級階級と下級階級を対比するために使われております。印象的な階段や坂道は随所に描かれています。家庭教師に行くIT社長の家は坂の上にあり、家の中でも階段が印象的な場所にあります。大雨の中自宅へ変えるシーンでは階段を下っていき現実の世界へ引き戻される様子が象徴的です。

メイキング

メイキングの様子も色々と書かれています。本書を読んだ後にYoutubeでメイキングの様子を探しました。半地下の家と町並みは巨大なプールの中に作られており、街の向こう側はVFXで作成されています。IT社長の家は1階まで作成されましたが2階はVFXで作成されていました。

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キャスティング

キャスティングの話も意外と面白かった内容の部分でした。半地下に住む家族の父親役の俳優はポン・ジュノ監督作品に多くでる俳優です。主演を努めた家族の長男の話や、お母さんのキャスティング背景も面白かったです。IT社長の家の地下に隠れて住んできた元家政婦の旦那役の俳優さんはパラサイトの宣伝活動には全く姿を現さず、オスカーなどの授賞式に突然居たため誰か話題を呼ぶ形になったようで、その理由は物語後半に登場するネタバレしたくない役であったため内緒にするためにそうしたとのことでした。

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紹介された映画

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感想

映画を観るとついつい背景やメイキングの物語を調べる癖があるので公式解説本が出ているのが嬉しく楽しく読みました。ポン・ジュノ監督が影響を受けた映画や漫画の話から、パラサイトのコミカルな部分の背景を理解できました。映画の中の様々なシンボルである、階段や格差社会、シンプルと呼ばれる女性、社会的に姿を消した男性の存在、家庭教師や猛烈な受験制度、半地下で住む家族は無職であったこと、モールス信号、石、などキーになるメッセージを解説してくれており面白かったです。

韓国の社会背景、社会問題を多分に含んだパラサイトが欧米社会で高く評価された事も現象として興味深いものでした。社会問題を取り扱う映画は個人的好みなのでとても楽しく映画を楽しめました。

今年は映画を観る機会を増やしたいと思い、映画がどのように作成されているのか知りたいと思う事が増えたので、感性を磨く意味でももっと映画を観ていきたいと思いました。