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未来をはじめる: 「人と一緒にいること」の政治学 | 宇野 重規 (著) | 2026年書評51

 

 

 

過去読んだ民主主義の本の著者宇野さんが、2017年に豊島岡女子学園で行った5回の講義についてまとめた本「未来をはじめる」を読みました。

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中学校や高校時代の先生から面白い授業があるというのはとても財産になると思うので宇野先生のような方が出張授業に来る機会へ参加できる生徒さんが羨ましく感じます。 5回の出張授業でのテーマは政治についてなのですが、学校での生活と関連づけたりしながら優しくでもポイントを外さずに進めていく講義の様子がとても面白い内容でした。

 

📒 Summary + Notes | まとめノート

変わりゆく世界

日本では一般会計の歳出歳入状況が悪くなっていき、イギリスではブレクジット、フランスではテロが横行しています。トランプ大統領の出現で世界は大混乱。悲観的な展望が語られますがよく考えてみると、昔から展望なんてものは当たらないことが沢山でした。

1979年にジャパン・アズ・ナンバーワンをヴォーゲル博士が言って話題になったもののその後の日本のバブル崩壊は記憶に新しい。レーガンが大統領になるなんて誰も想像していなかった。フランシス・フクヤマは冷戦が終わるにつれ歴史の終わりと言い、ネグリとハートが書いた帝国の予想など尽く予想は当たりませんでした。

アジアの人口が世界の半分を占め、そしてアジア諸国では少子高齢化がものすごいスピードで進んでいく。グローバル化した世界では否応なく人々と繋がりながら行きていかなければいけません。そんな中宇野先生が追いかけているテーマに「平等」があります。

トクヴィルはフランス革命で貴族である家族はギロチンにかけられそうになるなど革命で被害を受けた立場にありました。世界を見ようとフランスからアメリカに渡ると貴族も平民も関係ない平等の世界を目にします。この平等という考えは非常に難しく、移民に対して平等を与えようとする人もいれば、移民により仕事が奪われたと考える人も居ます。ブレクジットやトランプ大統領誕生にはそういった強い考えも後押しでした。しかしながらグローバル化した世界では自国で作っているだけではものが高くなるのも事実。

こういったように意見が違う人達がいる中で物事を進めていかなければいけない。そういったもの全て含めて政治であり、時には多数決、時には経験のある人が決める。考えてみれば学校の修学旅行を決めるのでさえも政治とも言えます。

今の日本の状況を考えてみましょう。今ではサラリーマン社会となり、メンバーシップ型の働き方をする人が殆どになりました。家庭に居た女性の働き手は貴重な人材となるものの、メンバーシップ型雇用をするか、ジョブ型雇用をするか、いわゆる正規、非正規雇用で大きく二分されていきました。さらに足りない働き手は海外からの労働力で賄おうとしています。

このような環境で私たちは政治に何を求めるのかを考える必要があります。アメリカのように社会保障が不足しているが資本主義の恩恵を大きく享受できる世界。はたまた北欧のように高い税金を払いしっかりとした公共サービスを受けるような世界。こういった制度や仕組みの影響を受けやすいのは若い世代であるために、若い世代が政治に関心や期待を持つことが大事になります。

人と一緒にいること

政治とは何かを考えると人と一緒にいることとも言えます。教室カーストなどという言葉が流行ったように教室の中でも色々な人間関係や意見があります。インドのカースト制度は生まれながらに身分が固定されてしまう。いつも一緒にいると上手くいかないことも出てくる。

ルソーは誰よりも傷つきやすく、すぐに落ち込んでしまう。それなのに人との関係も多く子どもも沢山つくりました。過酷な人間不信であったルソーはフランスに居られなくなるとヒュームに受け容れられます。しかしながらヒュームにも心を開くことはできずせっかくイギリスで拾ってくれたのに結局悪口を書き大喧嘩。そんな人間関係に困ったルソーが書いた社会契約論にて人と一緒に居ることについて書きました。

ルソーが考えた一般意志という概念を発展させたのがカントとヘーゲル。理性と感情、そして人々が一緒に居る体制について考えられました。

民主主義の世界ではいわゆる多数決で候補者が選ばれる形であるために、民主主義≒多数決という理解が多くあります。チャーチルは過去に民主主義を「頭をかち割る代わりに、頭数を数える制度」と説明しました。多数派の意見を採用するのが良いとは限らないが殺し合いをするよりはマシだとの意味です。

アメリカの大統領選挙でも実は多数決になっていない。州の選挙人を選ぶために、票数では無く過半数の選挙人を獲得する必要があります。ボルダルールと呼ばれる選び方もあり、より小さな国では実行されていますが、現在アメリカでも日本でも採用はされていません。宮本常一さんは忘れられた日本人の中で対馬にて民族調査を行っていた所史料の閲覧に関してその村の寄合で意思決定される様子を見ます。「寄合で決まったとおり」するということで待っていても話し合いは脇道にそれ何回も脱線。仕舞にはまた違う日の寄合で判断と、何回か繰り返すうちに最後は「村長が決める」ということで史料をみることができました。

本書の最後はハンナ・アーレントの言葉でまとめられており、彼女が思考すること、世界には複数人いること、自由、生まれてきたことにまつわるエピソードを通じて政治に対して考えることの大切さがまとめめられています。

感想

宇野先生らしい面白い本でした。民主主義や政治についてやさしく触れられるような構成であり、(優秀そうな)学生たちとのやり取りも面白いものです。今でも関心薄いですが、政治や民主主義について誰かがやってくれて大きな問題なければそれで良いよ(誰がやってもあまり変わる気がしないし)というスタンスです。仕組みについて知ることが好きなので選挙毎に討論を聞いたりするのですがその討論内容が守られるイメージも無いため投票に言っても白紙で出す事も度々あります。

台湾の友人たちを見ると投票の度に飛行機に乗り返ったりしているのを見ると気合入っているなと思うと同時に、分かりやすい軸が無かったらどうするのだろうかと思うこともあります。選挙で投票することはもちろん良いことだと思うけれども、投票しないのも民主主義の自由だとも思ったりする。

しかしながら、アメリカを見ると選挙は世紀末のようにも見えるし、時に冗談と思われていたようなことさえ起こるから不思議に思う。ルソーを生み出したフランスも若い大統領は誕生するもののどこか不安定さも感じる。みんな違って、みんな良い、みたいなそれぞれの国の個性を眺めながら民主主義について考える。

📚 Relating Books | 関連本・Web

  1. https://amzn.to/3Q6z0Ca 新版 ジャパンアズナンバーワン エズラ・F.ヴォーゲル (著), 広中和歌子 (翻訳), 木本彰子 (翻訳)
  2. https://amzn.to/4ehE12J 新版 歴史の終わり〔上〕: 歴史の「終点」に立つ最後の人間 (単行本) フランシス・フクヤマ (著), 渡部 昇一 (翻訳, 解説), 佐々木 毅 (解説)
  3. https://amzn.to/4uZQxLz <帝国> グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性 アントニオ・ネグリ (著), マイケル・ハート (著), 水嶋 一憲 (翻訳), 酒井 隆史 (翻訳), 浜 邦彦 (翻訳), 吉田 俊実 (翻訳)
  4. https://amzn.to/4xiAWYQ アメリカのデモクラシ- (第1巻 上) (岩波文庫) アレクシ-・シャルル・アンリ・モリス・クレレル・トクヴィル (著), 松本礼二 (著)
  5. https://amzn.to/4vxHh0N ポピュリズムとは何か - 民主主義の敵か、改革の希望か (中公新書 2410) 水島 治郎 (著)
  6. https://amzn.to/4xk8Lc5 〈私〉時代のデモクラシー (岩波新書) (岩波新書 新赤版 1240) 宇野 重規 (著)
  7. https://amzn.to/4e7nDlm トクヴィル 平等と不平等の理論家 (講談社学術文庫 2551) 宇野 重規 (著)
  8. https://amzn.to/4ec42R8 新しい労働社会: 雇用システムの再構築へ (岩波新書 新赤版 1194) 濱口 桂一郎 (著)
  9. https://amzn.to/4fuPqOZ 働く女子の運命 (文春新書) 濱口桂一郎 (著)
  10. https://amzn.to/4vuz7Gs マルクス 資本論 1 (岩波文庫) エンゲルス (著), 向坂 逸郎 (著)
  11. https://amzn.to/43kWS86 レ・ミゼラブル (上) (角川文庫) ヴィクトル・ユゴー (著), 永山 篤一 (著)
  12. https://amzn.to/4vEBNS9 21世紀の資本 トマ・ピケティ (著), 山形浩生 (翻訳), 守岡桜 (翻訳), 森本正史 (翻訳)
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  14. https://amzn.to/4oho80R 財政から読みとく日本社会――君たちの未来のために (岩波ジュニア新書) 井手 英策 (著)
  15. https://amzn.to/4fwkaPH 18歳からの格差論 井手 英策 (著)
  16. https://amzn.to/3RNIgvz 友だち地獄 (ちくま新書) 土井 隆義 (著)
  17. https://amzn.to/4uu0CPM 教室内(スクール)カースト (光文社新書 616) 鈴木 翔 (著), 解説・本田由紀 (その他)
  18. https://amzn.to/4gftZ4C 転職: ネットワ-クとキャリアの研究 (MINERVA社会学叢書 4) M グラノヴェター (著), Mark Granovetter (原名), 渡辺 深 (翻訳)
  19. https://amzn.to/49QMAjI 弱いつながり 検索ワードを探す旅 (幻冬舎文庫) 東 浩紀 (著) 形式: 文庫
  20. https://amzn.to/43pL5W1 社会契約論 (岩波文庫 青 623-3) J.J. ルソー (著), 桑原 武夫 (翻訳), 前川 貞次郎 (翻訳)
  21. https://amzn.to/4fADiMl 人間不平等起原論 (岩波文庫 青 623-2) J.J. ルソー (著), Jean Jacques Rousseau (原名), 本田 喜代治 (翻訳), 平岡 昇 (翻訳)
  22. https://amzn.to/4aki0z4 ルソー,ジャン=ジャックを裁く〈上〉 (1969年) (古典文庫〈28〉)
  23. https://amzn.to/4vDx7Mn 悪魔と裏切者: ルソーとヒューム (ちくま学芸文庫 ヤ 23-1) 山崎 正一 (著), 串田 孫一 (著)
  24. https://amzn.to/4akooq0 離脱・発言・忠誠:企業・組織・国家における衰退への反応 (MINERVA人文・社会科学叢書 99) A.O. ハーシュマン (著), Albert O. Hirschman (原名), 矢野 修一 (翻訳)
  25. https://amzn.to/4eek5xR 啓蒙とは何か 他四篇 (岩波文庫 青625-2) カント (著), 篠田 英雄 (翻訳)
  26. https://amzn.to/4dXITev 「接続性」の地政学 上:グローバリズムの先にある世界 パラグ・カンナ (著), 尼丁千津子、木村高子 (翻訳)
  27. https://amzn.to/3ROBlCj 9プリンシプルズ:加速する未来で勝ち残るために 伊藤 穰一 (著), ジェフ・ ハウ (著), 山形 浩生 (翻訳)
  28. https://amzn.to/3RSEYHn 西洋政治思想史 (有斐閣アルマ) 宇野 重規 (著)
  29. https://amzn.to/3SuTCVf 多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書) 坂井 豊貴 (著)
  30. https://amzn.to/3QaBQWA 民主主義の条件 砂原 庸介 (著)
  31. https://amzn.to/4xxWUHE 忘れられた日本人 (岩波文庫 青 164-1) 宮本 常一 (著)
  32. https://amzn.to/4uYvx7E なめらかな社会とその敵 ──PICSY・分人民主主義・構成的社会契約論 (ちくま学芸文庫) 鈴木健 (著)
  33. https://amzn.to/3Q8QqOw 僕たちは島で、未来を見ることにした 株式会社 巡の環 (阿部裕志 / 信岡良亮) (著)
  34. https://amzn.to/4e8pq9F 習慣の力〔新版〕 チャールズ デュヒッグ (著), 渡会 圭子 (著), 長谷川 裕貴 (ナレーション), Audible Studios/早川書房 (出版社)
  35. https://amzn.to/3RUOdXv 市民自治 (ディスカヴァー携書) 福嶋浩彦 (著)
  36. https://amzn.to/4xkaZIt ハンナ・アレント (講談社学術文庫 2236) 川崎 修 (著)
  37. https://amzn.to/4v0TGKQ ハンナ・アーレント「人間の条件」入門講義 仲正 昌樹 (著)
  38. https://amzn.to/3SfON25 エルサレムのアイヒマン――悪の陳腐さについての報告【新版】 ハンナ・アーレント (著), 大久保 和郎 (翻訳)
  39. https://amzn.to/4eeSzQK 民主主義のつくり方 (筑摩選書) 宇野 重規 (著)
  40. https://amzn.to/4xoeHky 大人のための社会科 -- 未来を語るために 井手 英策 (著), 宇野 重規 (著), 坂井 豊貴 (著), 松沢 裕作 (著)