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ルポ 「トランプ信者」潜入一年 | 横田増生 (著) | 2025年書評63

ユニクロ、アマゾンと潜入系のジャーナリスト横田氏が今度はアメリカ選挙で共和党のボランティア活動に潜入したドキュメンタリーになります。トランプ大統領一度目の任期終わりの大統領選挙なので2020年のコロナ時期、いわばコロナ対応で大混乱していた時期の活動でのまとめで、新書化になり兵庫県知事選挙の章を付け足して販売という形です。

最初の任期中にトランプ大統領は3万回嘘をつき、任期終了付近にどんどんと嘘は増えていき、選挙は操作されたと主張し数々の裁判はすべて負け、最後にはトランプ支持者がワシントンに集まり混乱を起こすという結末を起こしました。

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その選挙活動を追ったルポをみていきましょう。

📒 Summary + Notes | まとめノート

潜入活動へ

アメリカのミシガンにアパートを借りて、2019年の12月からアメリカに滞在。共和党の事務所を調べ身分証明書として免許書を取るために一ヶ月経ったのちにボランティア登録をします。ミシガンはいわゆるスイング・ステートと呼ばれ民主党共和党が入れ替わるような州です。

トランプの選挙活動を最初に立ち会ったのはオハイオ州。選挙活動は音楽フェスのような陽気な雰囲気でトランプが登場すると会場は大いに湧きました。会場の人々にインタビューすると、今まで言えなかったことを素直に口にする大統領の姿に、思っていることを躊躇なく言っても良いということに感銘を受けている人も居ました。熱心なキリスト教徒は旧約聖書の預言がトランプの大統領を預言していたとも言います。

共和党は伝統的に白人社会、白人中心の党です。16年の大統領選挙では白人の爆発的な任期であり、著者がインタビューした人々も白人が多くありました。しかしながら、トランプ大統領は自分自身をリンカーン以来の黒人寄りの大統領であると主張し、低所得者層への貢献を主張していました。演説はトランプ劇場であり、すべての貢献は自分のおかげだと主張します。

しかしながら著者が調べてみると、「ウィスコンシンの失業率は史上最も低い」という演説は嘘、「貧困層が最も大きな経済的恩恵を受けた」という主張も嘘であり上位10%の所得の伸びが最も高い、「黒人、ヒスパニック、アジア系の失業率も史上最も低い数字」という主張も嘘。オバマ大統領の批判として挙げる「6万箇所の工場が閉鎖」というのも嘘、それぞれ繰り返し繰り返し主張するのも、トランプ流でありウソを3万回発言していたことに注意が必要でした。

実際にボランティア活動に参加すると、参加の同期を聞かれ「トランプ自伝」を見せファンになったと言うとすんなり運転免許証だけで参加することができました。潜入すると、専用のスマホアプリを用いて、礼儀正しくするなど注意書きを読んだあとにウォークブックと呼ばれる地図にある有権者の家を訪問しアプリに情報を記入していくという作業に参加しました。

アメリカの街構成として、裕福な白人が住む郊外、黒人などが住む都市部(インナーシティ)、白人を中心とした農業・酪農地帯のカントリーサイドというような構成で、著者は郊外の有権者を訪れました。とある共和党支持者から赤い帽子をもらいそれをつけていくと効果抜群で共和党支持者からのウケが良くなります。反トランプ派からは諭されたり、赤い帽子を見るだけで拒否反応を受けるといったことも体験します。

トランプの生い立ち

トランプ大籠鳥の祖父はドイツに生まれ、兵役を忌避するためにアメリカに渡ってきます。カナダに移り住むと、飲食店や売春宿の経営で財を成し幼馴染と結婚しトランプの父フレッドが生まれます。祖父が不動産を購入したところで家業として不動産業が開始。祖父はスペイン風邪で急死したところでフレッドが家長となりわずか15歳で祖母と建設会社を設立。

第二次世界大戦から復員してきた兵士と家族のためのアパートを建てるなど建設業者として地歩を固めていきます。フレッドは父の先例に習い軍隊には入らず、トランプ自身も5回にわたり徴兵猶予を手にし戦地へ行くことを免れました。

戦後の兵士帰還の需要も相まって事業は順調に拡大。トランプは子どもの頃から手を付けられないいじめっ子であり規律が最も厳しい学校へ送り込まれます。大学卒業後は父親が経営する複数の企業を束ねるトランプマネジメントにて役員として働き始めます。

73年に公正住宅法に違反し、黒人の入居を意図的に拒んだとして司法省が訴えるとそこで映画アプレンティスでも知られる弁護士ロイ・コーンと出会います。ロイ・コーンは悪名高い弁護士であり、共産主義への恐怖を煽ったジョセフ・マッカーシー上院議員の右腕となった人物でもあります。

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2016年6月の時点で、USAトゥデイはトランプがそれまでにかかわった訴訟件数は3500件を超え、大統領出馬を表明した後だけに限っても70件が追加されていました。トランプが行う事業においても、実際は58階建ての建物を68階建てとして売り出し「真実の誇張」と表現します。自分自身で罪のないホラであり、きわめて効果的な宣伝方法であると自伝で書いていました。

89年の4月、ニューヨークのセントラルパークで起きた白人女性が殺害された事件において、14歳から16歳の黒人4人、メキシコ系1人が逮捕され、ニューヨーク市長が「憎悪におぼれてはならない」と呼びかけていた所、ニューヨーク・タイムズ含む地元紙4紙にて「死刑を復活させよ。警察を復権させよ!」と市長を避難する宣伝を出します。後にわかるのはこの少年たちは事件と無関係であり冤罪であるとわかります。宣伝を出したことについて問われると謝罪もなく過ごします。

度々大統領になる意向を聞かれていたものの興味を示さなかった中、オバマ大統領と決定的なやりとりが生まれました。民主党オバマと選挙で対戦していた共和党サラ・ペイリン共和党内での指示は劇的に高く、彼女が得意とする手法がウソ、陰謀論を平気で言う人物でした。彼女がオバマケアを激しく非難した際に使った「死の判定団」という言葉はその年の最大のウソとなりました。

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そんなオバマ大統領に対してトランプが「オバマの出生がアメリカではない」とした疑惑をふっかけます。その根拠としてさらに煽ることにより、エリート的思想に嫌気が差すアメリカ人の指示をえ始めます。

元々オバマ大統領側は大きなこととして捉えてなかった所、次第に深刻になってきたために出生証明を発表。その発表の方法はトランプがニューハンプシャーにヘリコプターで飛び出したタイミングを狙いメディアに公表。出し抜かれる形で到着したばかりのトランプに記者団が質問をすると「俺は俺自身を誇りに思う」と出生証明が出てきた事に対して誰もなし得なかったことだと主張しました。この後に12年の大統領選挙に出馬しないことを表明。ホワイトハウスが主催した懇親会に出席した際には、出生証明の件もありオバマが今度はトランプをからかい、トランプがホワイトハウスに来たら変化を起こしてくれる、カジノ、ゴルフを建てるだろうとからかいます。この時受けた屈辱が大統領への原動力になりました。

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選挙終盤

選挙終盤になり、次第に劣勢状況が判明してくると次第に陰謀論を発言しだします。トランプ支持者は選挙当日に投票所に行く人が多かった一方で、バイデン支持者はコロナだということもあり、郵便投票を多くしました。郵便投票が後半に加算されていくことから、不正選挙を主張し始めます。投票の締め切り時間より過ぎたものが含まれている、盗まれていると主張を開始。終いにはルディジュリアーニに言われ勝利宣言を発表。開票途中のものは辞めなければと主張しだします。この結果を見て共和党内部でも人が離れ始めます。

ルディ・ジュリアーニは9.11の際のニューヨーク市長でしたが、その後は怪しげな案件のみを高額で弁護する弁護士であり、浪費家、離婚、若い愛人などと金のためなら汚い仕事でもやる人間へと変わっていました。選挙関連の訴訟は他のどの弁護士も担当しませんでしたが、彼が担当。1日に2万ドルという高額な費用も他に頼れる弁護士は居ませんでした。

大統領選挙では負けを認めた候補者が「敗北宣言」を行うのが常ですが、16年の選挙戦でヒラリー・クリントンが実施したのに対して20年にはトランプは実施しませんでした。選挙終了から正式には各州の選挙人が連邦政府へ結果を送る1月6日が最終集計となるために、通常あるはずの敗北宣言がないために約2ヶ月間空白の時期が生まれてしまいました。

そこでトランプ信者たちは様々な不正と思われる点をSNSに投稿。例えば開票所で途中で目隠しされてから選挙結果が大きく変わったという主張があったものの、正式にマスコミ以外の撮影が禁止されていたが辞めなかったために開票者が不満をもらしたための目隠しでした。トランプ支持者たちにとってはそんな真実はある種どうでもよく、新聞機関のファクトチェックも信じられませんでした。CCP(中国共産党)が阻止したといったデマ、ジョージアでは州知事に対して選挙の投票がおかしいはずだと圧力をかけるなど民主主義の結果を否定しはじめます。結果議事堂に人々が押し寄せるという事件まで発生しました。

感想

トランプ陣営内に入り、奇妙さに出くわしながら活動を通じて出会う現象をまとめられた面白い本でした。結果的にはその奇妙さをまとめることで批判的な視点にはなると思いますが、冷静なまとめでした。3万回のウソをつき、相手がそんな明らかなウソとほっておけば言い続けることであたかも真実であるかのようになり、冷静な判断ができる人はウソと認識できますが、一部にとっては言い続けているのだからそうなのだろうと信じることを狙っているのか自身の認知が低下しているのかは定かではありません。

経歴も政治家になるようなものではなく、とにかく一番になりたい、権力をというような性分であり、過去の裁判件数は異例の多さであり、普通の人が紳士協定のように曖昧さや常識的な感情で行っていた慣行などに対してすべて切り裂いていく様子は大統領令を連発している様子からも分かります。その大統領令違憲であるものが多く含まれており、米国は混乱しています。

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本書を選挙戦の最中に読んで思うのは、何を言うかよりも何をしたかが大事だと感じます。選挙活動を通じての発言は、トランプ大統領が3万回ウソを付いてそれを熱狂的に信じる人が出るように、ウソや期待を煽る発言を繰り返すことで人気を獲得する。情報があふれる時代であるからこそ、情報を冷静に受け取るという作業は意識的にしないとと感じます。

📚 Relating Books | 関連本・Web

  1. https://amzn.to/44R0QWg 大統領の陰謀〔新版〕 (ハヤカワ文庫NF) Kindle版 ボブ ウッドワード (著), カール バーンスタイン (著), 常盤 新平 (翻訳)
  2. https://amzn.to/44TZ5HJ トランプ自伝: 不動産王にビジネスを学ぶ (ちくま文庫 と 18-1) 文庫 – 2008/2/6 ドナルド トランプ (著), トニー シュウォーツ (著), 相原 真理子 (翻訳)
  3. https://amzn.to/3UlbKi8 大統領選からアメリカを知るための57章 (エリア・スタディーズ 97) 単行本 – 2012/5/8 越智 道雄 (著)
  4. https://amzn.to/46ewoI5 反知性主義 (新潮選書) 単行本(ソフトカバー) – 2015/2/20 森本 あんり (著)
  5. https://amzn.to/4kNnpkM パラノイア合衆国: アメリカ精神史の源流を追う 単行本(ソフトカバー) – 2025/1/21 ジェシー・ウォーカー (著), 鍛原 多惠子 (翻訳), 木澤 佐登志 (解説)
  6. https://amzn.to/3GTnhlF 熱狂の王 ドナルド・トランプ 単行本 – 2016/9/28 マイケル・ダントニオ (著), 渡辺 靖 (その他), 高取 芳彦 (翻訳), 吉川 南 (翻訳)
  7. https://amzn.to/40WAmkT ポピュリズムとは何か - 民主主義の敵か、改革の希望か (中公新書 2410) 新書 – 2016/12/19 水島 治郎 (著)
  8. https://amzn.to/4lEw1vf 総力取材! トランプ政権と日本 (NHK出版新書) Kindle版 NHK取材班 (著)
  9. https://amzn.to/4m0b5hV ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く (岩波新書) 新書 – 2017/2/4 金成 隆一 (著)
  10. https://amzn.to/4m05Sqe ヒルビリー・エレジー (光文社未来ライブラリー) 文庫 – 2022/4/12 J・D・ヴァンス (著), 関根光宏 (翻訳), 山田文 (翻訳)
  11. https://amzn.to/3GInGYf 炎と怒り――トランプ政権の内幕 単行本(ソフトカバー) – 2018/2/23 マイケル ウォルフ (著), Michael Wolff (著), 池上 彰 (その他), 関根 光宏 (翻訳)
  12. https://amzn.to/4eU8Fz4 WHAT HAPPENED 何が起きたのか? 単行本(ソフトカバー) – 2018/7/18 ヒラリー・ロダム・クリントン (著), 髙山祥子 (翻訳)
  13. https://amzn.to/4kOvohp より高き忠誠 A HIGHER LOYALTY 真実と嘘とリーダーシップ 単行本(ソフトカバー) – 2018/8/17 ジェームズ・コミー (著), 藤田美菜子 (翻訳), 江戸伸禎 (翻訳)
  14. https://amzn.to/4kSGou9 民主主義の死に方:二極化する政治が招く独裁への道 単行本 – 2018/9/27 スティーブン・レビツキー (著), ダニエル・ジブラット (著), 池上 彰 (その他)
  15. https://amzn.to/4kJdRXJ 記者、ラストベルトに住む —— トランプ王国、冷めぬ熱狂 単行本 – 2018/10/19 金成隆一 (著)
  16. https://amzn.to/458ITno FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実 単行本 – 2018/12/1 ボブ・ウッドワード (著), 伏見 威蕃 (翻訳)
  17. https://amzn.to/4eU8UKu リバタリアニズム-アメリカを揺るがす自由至上主義 (中公新書) 新書 – 2019/1/18 渡辺 靖 (著)
  18. https://amzn.to/44UJUhM ファンタジーランド 【合本版】―狂気と幻想のアメリカ500年史 Kindle版 カート アンダーセン (著), 山田 美明 (翻訳), 山田 文 (翻訳)
  19. https://amzn.to/3TP58si 白人ナショナリズム-アメリカを揺るがす「文化的反動」 (中公新書 2591) 新書 – 2020/5/19 渡辺 靖 (著)
  20. https://amzn.to/4kWZEXC 世界で最も危険な男 単行本 – 2020/9/15 メアリー トランプ (著), 草野 香 (翻訳), 菊池 由美 (翻訳), 内藤 典子 (翻訳)
  21. https://amzn.to/3U8lvAp ルポ トランプ王国2: ラストベルト再訪 (岩波新書 新赤版 1793) 新書 – 2019/9/21 金成 隆一 (著)
  22. https://amzn.to/3IzD9dI 民主主義とは何か (講談社現代新書 2590) 新書 – 2020/10/21 宇野 重規 (著)
  23. https://amzn.to/3UplNTe 民主体制の崩壊: 危機・崩壊・再均衡 (岩波文庫 白 34-1) 文庫 – 2020/11/17 フアン・リンス (著), 横田 正顕 (翻訳)
  24. https://amzn.to/4m0bktl RAGE(レイジ)怒り 単行本(ソフトカバー) – 2020/12/4 ボブ・ウッドワード (著), 伏見 威蕃 (翻訳)
  25. https://amzn.to/4nUIGLR 不寛容論: アメリカが生んだ「共存」の哲学 (新潮選書) 単行本(ソフトカバー) – 2020/12/16 森本 あんり (著)
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  27. https://amzn.to/4lYTUx9 分極社会アメリカ 2020年米国大統領選を追って (朝日新書) 新書 – 2021/1/29 朝日新聞取材班 (著)
  28. https://amzn.to/3GKoBr8 バイデンの光と影 単行本(ソフトカバー) – 2021/4/29 エヴァン・オスノス (著),     (監修), 矢口 誠 (翻訳)
  29. https://amzn.to/4lyDkEx ホワイト・フラジリティ 私たちはなぜレイシズムに向き合えないのか? 単行本 – 2021/6/1 ロビン・ディアンジェロ (著), 貴堂嘉之 (監修), 上田勢子 (翻訳)
  30. https://amzn.to/4l5FvPb 最悪の予感: パンデミックとの戦い (ハヤカワ文庫NF NF 598) 文庫 – 2023/1/24 マイケル・ルイス (著), Michael Lewis (著), 中山 宥 (翻訳)
  31. https://amzn.to/451f0Er 歴史修正主義-ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで (中公新書, 2664) 新書 – 2021/10/18 武井 彩佳 (著)