近年のコンマリブームもあり、ときめくものにフォーカスした人生ということが最近流行っているように思う。デジタルミニマリストという新書を書いたカルニューポートの以前書かれた本、ディープワークを読んだ。
MITで博士号取得をしたカルニューポートは効率の良い仕事の仕方などを紹介したブログSTUDY HACKSで彼の考え方は多くの人に知られることになる。
過去の偉大な業績を上げた人たちはディープワークと定義するスタイルから生み出されており、①21世紀の変化が大きい世界で複雑なことを素早く身につけること②ネットワーク革命により価値のある能力に対して消費者が世界中でアクセス可能なことの2つのことを理由にディープワークを実践し価値あることを身に着けていくことがどれほど大切であるかというメッセージの本になります。
ディープワーク(DEEP WORK)とその対比とされているシャローワーク(SHALLOW WORK)の定義を上げており、
ディープ・ワーク
あなたの認識能力を限界まで高める、注意散漫のない集中した状態でなされる職業上の活動。こうした努力は、新たな価値を生み、スキルを向上させ、用意に真似ることができない。
シャロー・ワーク
あまり知的思考を必要としない、補助的な仕事で、注意散漫な状態でなされることが多い。こうした作業はあまり新しい価値を生み出さず、誰にでも容易に再現することができる。
こう見ると、仕事の時間を奪われているものの多くがメールの返信や事務作業などのシャローワークであると認識し直すことができる。
これからの時代に絶対に必要な能力として上げているのは次の2つの点であると主張している。
新しい経済下で成功するための二つの能力
1.難しいことを素早く習得する能力
2.品質も速度も一流レベルの生産能力
簡単(雑)に言うと、10年後必要なスキルなんて現時点で無い可能性もありその時々で必要であることは変化していくので、新しい物事を習得しその習得レベルも高いものであるというのが大切なのではというものだとしている。
よく社内のアメリカ人達と話す時に”メキシコなどの移民に仕事を奪われている”と感じているアメリカ人が多いという話題が上がった際に、仕事は奪われているのではなくて必要な仕事が変化したのに気がついてない(気がつこうをすない)人が問題だと思うというような話を聞くのだが、それと似ているように感じる。
それでは、時代によって変化していく価値のある能力を身につけるためにどうしたらいいの?という答えがディープワークであると言うことである。
価値のある能力がある人々(熟練者)になるためにPEAK『超一流になるのは才能か努力か?』の著者でも有名なアンダースエリクソンが必要としたことは「意図的な練習(deliberate practice)」である。
意図的な練習に必要なこと
1.あなたが高めようとしている特定のスキル、または極めようとしているアイデアにしっかりと注意を集中する。
2.最も生産性の高いものに注意をむけ続けるために、あなたのやり方を正すことができるようフィードバックを受ける。
価値のある能力を身につけるためには、難しいが重要な知的作業をまとめて、長期間、中断することなくつづけること。
その中でアテンションを得るためが目的に作られたソーシャルメディアや返事をしなくても良い類のメール返信に時間を奪われる事を減らした方が良いですよ、というのが概ねのメッセージである。
1万時間の法則で知られるマルコム・グラッドウェルの時間に対する要素に加え、集中力も大切というカルニューポートの意見はよりマルコム・グラッドウェルの主張に正確性を与えているように思う。
成果を最大にする働き方=費やした時間×集中度
では、ディープワークをするためにどういった戦略があるの?という問いに対して18の戦略をまとめている。
18の戦略
1.仕事スタイルに合わせてディープワークを取り入れる
2.儀式化で、集中を乱すものを最小限に
3.どこかに”缶詰め”になる
4.一人で仕事をしない
5.「何を」と「どのように」を分ける
6.自分の脳に休息を与える
7.「ネット断ち」は効果がない
8.優先順位の高いディープワークを見きわめる
9.生産的に瞑想する
10.トランプのカードを覚える
11.「80対20の法則」を適用する
12.ソーシャルメディアをやめる
13.楽しみのためにネットを使ってはいけない
14.1日の予定を分刻みで立てる
15.すべての活動の深度を評価する
16.無駄なシャローワークに「ノー」と言う
17.5時半までに仕事を終える
18.連絡が取りにくい人になる
比較的当たり前のようなことが書かれているのではあるのだが、本の中ではそれぞれに対して具体的な理由・事例など多くの参考情報があり細かく説明されているので各項目に対する詳しい洞察を持つためには一通り読んで見るのとよりすんなり頭に入ってくると思う。
世の中に価値のあることをするためには、インスタント的な思考ではできなくて、しっかりと集中した状態でないと優れた物事を生み出せない。そうするためには気を散らす物事からどう身をまもるのかということが大切である。
脳の作りとして、”注意を向けるもの”に基づいて世界観を組み立てる(Rapt by Gallagher)傾向があるため、不幸な物事に目を向けていると生活も暗いものになる。シャローワークの代表的なものでメールなどの納期前の催促や急な変更は少なからずストレスになるものでありそういったものを受け取らない努力が必要である。
逆にディープワーク(価値のある能力を身につける)ことによる満足感や充足感があるとポジティブな状態(フロー状態:困難なものごとでも楽しんで実行すること)になる。
集中力を高める方法はDEEP WORK内に山程書かれているのだが、大前提の大切なこととして、「その人に取って(その時代・境遇にあった)価値ある能力」という没頭するコンテンツを考える事がとても大切なように感じる。
ほとんどの人は仕事であったり、なにか目標に対してという事になると思うのだが、「特に目標はない」「仕事は仕事、特に没頭しなくて良い」などの価値観は現代にありふれて存在しているように思う。
特に見当たらない人は集中する練習(戦略10トランプのカードを覚える)などをして訓練だけしておいても良いと思うが、せっかくなら最大限価値の高いものを見極めて実行するとより良い時間の使い方になるのではとも感じる。
効率よく物事を身に着けていく方法については以前まとめたAli Abdaalさんが語るメソッドなどの手法を使えば良いと思うのだが、その中で集中力を高める方法を知りたい場合DEEP WORKはとても有益な本であると思う。
本内で引用されている本が多様でとてもおもしろそうであるのでそちらも時間を見つけて読み込んで行きたい。
DEEP WORK内で引用・参照されている本リスト
2. タイプ論 ユング
4. ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること ニコラスカー
5. 大格差 タイラーコーエン
8. GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代 アダム・グラトン
10. 綻びゆくアメリカ―歴史の転換点に生きる人々の物語 ジョージパッカー
12. ここをクリックすれば、すべてが保存できる エフゲニーモロゾフ
13. 歓喜 ギャラガー
15. 六賢人 アイザックソン
16. 種の起源 ダーウィン
17. 戦略を、実行できる組織、実行できない組織。 クリス マチェズニー
18. つながらない生活 「ネット世間」との距離のとり方 ウィリアムパワーズ
19. アンディロンダックスの夏の鳥 セオドア・ルーズベルト
21. ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由 ジョシュアフォア
22. 自分の時間―――1日24時間でどう生きるか アードルドベネッド
23. メールの専制 ジョン・フリーマン