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小飼弾の超訳「お金」理論 | 小飼 弾 (著) | 2021年書評#15

小飼弾さんのお金理論を読みました。

2021年の読んだ本のまとめ書けなかったものをまとめているのですがまったく終わる気配なくて途方にくれており、今後は読了後すぐに習慣を見に付けたいと思う年の暮れを過ごしております。(毎年反省)

📒 Impression and Review | 感想

日本国民としてや、会社員として受け止めるのが苦しいぐらいぐさっとくる内容も多々ありますが、仕組みの意味合いをわかりやすく説明してくれているとても良い本だったように思います。

問題の無い国なんて無いとは思いますが、日本って改めて課題が山積みの国だと感じます。

一方で、その政府を選び続けているのは自分たちです。

アメリカ株式の成長を見ていると日経平均の成長は悲しいレベルですし失われた30年と呼ばれる時期に政権を握っていた、いわば失われた30年を作り上げた人たちを今なお支持している社会は居住者として悲しくあります。

また、サラリーマン社会で給料は上がらず、ばらまきしているのにも関わらずインフレしないという謎構造により、相対的にジリジリと貧乏になる構造は将来どうすんの…という気持ちにさせられます。

その一方で、最近の僅かな希望としてはYoutubeTwitterにより様々な個人の発信がより広く可能になり、考え方への出会いの窓口が増えていることがあります。

なかなかにハードモードは拭えないものではありますが…

📒 Summary + Notes | まとめノート

お金の正体とは「共同幻想

仮想通貨が世に出始めてお金とは何であるか?貨幣とは何か?といったような議論が多くなったように思います。読書家でも知られる小飼弾さんですがそのお金の正体について「共同幻想」と言います。

お金の機能は大きく分けて3つ「価値尺度」「交換手段」「価値貯蔵」です。元々は魚と米を交換のように物々交換で等価とされるものをやりとりしていたものをより便利に価値を図れるものとしてお金を使って交換をし、さらに腐ることの無いお金というのはとても保存のしやすいものですよね。お金自体に価値は無いですし原価も低い、けれどもみんながその値段だと思うから1万円は1万円です。

バランスシートで物事をみていく

本著のメインとなるのはバランスシートで様々な事を見ていきます。バランスシートの仕組みは左側に資産、右側に資本+負債(借金)の1:1の表になります。借金をしないことのほうが素晴らしいという感覚の人たちは少なくはないと思いますが、借金は資産と考えられある種、借金ができるほど信頼があるという事になります。

資本主義の仕組みはこのバランスシートで考えると少しわかりやすくなります。AさんとBさん2人が居た時にBさんがAさんから100万円かりたとしましょう。その時に元々AさんもBさんも100万円の資産しかなかったとしたら、Aさんの資産は貸した100万円のままですが、Bさんの資産は元々の100万円に+100万円が加わり200万円になります。このように未来の約束を加える事により経済は成長していくことになります。

流動性はとても大切

バランスシートの中で現金は様々な資産の中で価値は高くなります。なぜならば流動性が高いからです。資産は大きく「流動資産」と「固定資産」に分類されて1年以内に現金化できるかどうかで分類分けされるようです。

バブルの時に何が起こったかというと、流動性の低い土地の値段が釣り上がり数億円で買ったものが一瞬にして数千万円でした値がつかないなどが起こり多くの人のバランスシートが縮小してしまいました。

一般的に良いバランスシートというものは左側の資産における現金の割合が高く、右側の負債の割合が低いことであり、流動性が良いためです。

教育の費用対効果

教育は最も費用対効果のよい政策だと言います。今日本で行われている日銀のETF買い支えには多くの衰退企業の株が含まれており将来的に価値が目減りしていくであろうものにお金をつぎ込んでいます。一方で教育を無償化している国々は優秀な人が増えれば優秀な企業が生まれてよりお金を稼ぐ産業が生まれ、より国が豊かになるという考えです。アメリカなどは教育費は無償化していないものの世界中の優秀な人が来たいと思える高水準の教育や収入が見込まれるため、国の発展が続いています。

さて、そうすると個人のお金の使い方も何をすればよいのか見えてくると思います。教育です。自分の考え方を変えるために、行動を変えるために投資して知識や経験を積むのが最もリターンが期待できる投資だと言えるでしょう。ただ、自分にお金と突っ込む中でもちゃんと期待リターンを考える事が大切であるので、ただ知識を積み重ねるのではなく積み重ねた知識を換価計算する癖をつけるのも良いように思います。

会社はいったい誰のもの?

バランスシートを使うと会社が誰のものかも見えてきます。バランスシート上に従業員に変わるものはありません。そのため会社は従業員のものではないですね。投資をしている人はよく知っていると思いますが会社は株主のものです。なぜならば会社の資産は株主資産(株主から預かっているお金)になるからですね。

おいおいそれでは従業員はいったい何なんだ…という話ですが、会社からすると従業員は法律の観点で消耗品と言います。表現の好き嫌いはあるかもしれませんが事実なので受け止めるしかないのですが、一方で消耗品扱いできる従業員を守る色々な法律があるのも事実です。

こうなると「残業問題」などは経営者を甘やかしているだけの行為でしかないと言います。

日本ではサラリーマンが多い社会でありこれはある種会社にとって都合の良い奴隷ということでしょう。この奴隷マインドが取れない限り給料を上げることしか頭になくなってしまいますし、残業なんて労働者がやるものではないと著者は言います。

日本の問題点

日本の問題点の一つにゾンビ企業があります。成長性も設けもない会社が潰れないように様々な助けを得られるような仕組みがあるため、延命措置のために資金が使われてしまいます。

これは日銀がETFを買い支え大株主となっていることも貢献しています。物言う株主なんて呼ばれた人たちは妬まれるような報道がありましたが、一方で株主として企業の利益追求を求めるのは適切で日銀のようなものを言わない大株主が増えると経営陣は何も言われないため利益があろうがなかろうが関係なくなってしまいます。

他にも、優秀なリーダーがいない企業は優秀になれないことや、一方で労働者が優秀であると経営者が頭を使わなくなること、「深刻な人手不足」は問題ではなく「深刻な賃金不足」が問題であることなど本書に説明されています。

政府の役割は会社を潰さないことではなく潰れた会社の中の人たちが困らないことです。潰さないことによって転職活動が必要な状況で赤字を垂れ流すのではなく、潰して違う利益のでる事をしてもらうための手助けをする、それが大事なことになります。

政府のメリットは非営利で良いということもハイライトしてあります。可能性のあるテクノロジーにお金を投資したりと目利き的な役割が必要な機関であるのに対して、日本の現状としてそういった目利きをする能力が欠けているということも感じられるでしょう。

税金と賃金

さて話は税金へ。まずは消費税です。一見すると誰にでも平等に税金を徴収できる消費税ですが、基本的には経済の邪魔ものです。消費を促すためには消費税は無いほうが良いのです。

続いてふるさと納税の問題点についても指摘しています。ふるさと納税とは地方へ納税することによってお礼として返礼品が受け取れて市民側にはハッピーなのですが、市町村としては入ってくるはずだった税収が入ってこなくなります。

ふるさと納税が極端になると人が居なくなる地域がふるさと納税により収入が増えて、人が居ないのに税収が増えるという構造ができます。先程の潰れゆく会社の延命と似たような側面があり、人が住みたくないために税収が減った地域にお金を分配していく構造です。

本来国がうまくやりくりして分配していけば良い資金を住民税の振り分けによって責任転嫁した仕組みがふるさと納税でありますが、一方でその政府を選び続けているのは市民ということも忘れては行けないでしょう。

日銀のETF買い支えというアベノミクスで得をしたのは株式市場に参加している人たちで、その多くは資産のある人達でした。分配というよりも富を広げる行為に近かったのですね。

さて、お金とは何なのか

著者は最後にお金とは何かの議論に戻ります。まず豊かさとは「これまでできなかったことができるようになること」と言います。わたしたちはiPhoneを持ちどこでも地図を見て旅行できるようになりましたし買い物もスマホがあればできるようになりました。

さてiPhoneがどうやって手に入れれるのか?お金と交換することです。つまりお金を用いることによってできなかった事ができるようになっていますね。お金自体には価値がなく、できることを増えることが価値があるといえるでしょう。そうであれば物事の価値は、ケイパビリティを増やすかどうかで計るべきだと言います。

また、暗号通貨についてもその性質から本来の通貨としての意味に法定通貨よりも近く、将来は暗号通貨こそ通貨としての意味合いが増える可能性も示唆しております。

📚 Relating Books | 関連本・Web

  1. https://amzn.to/32th4ZL 銀河ヒッチハイクハイド ダグラス・アダムス
  2. https://amzn.to/3ziQkXO 21世紀の貨幣論 Kindle版 フェリックス・マーティン (著), 遠藤 真美 (翻訳)