資本主義に対する痛烈な批判本です。英語タイトルはカンニバルキャピタリズム、共食い資本主義であり、過去の歴史から資本主義がいかに社会の土台を構成しており、その資本主義土台により自然が破壊され、人々が搾取されてきたのか、という問題を提示しています。
例えば、会社社会において、企業は利益を求めることが基本とされる資本主義にあり、労働市場を利用しなければいけません。労働者は労働の自由という選択として働くとされ、嫌であれば働かなくて良いとされますが、実質労働しなければいけないシステムに存在します。そして企業は労働者を基本的には搾取することで利益を生み出します。
資本主義は蓄積を必要とする仕組みであり、その蓄積のために搾取、収奪をすることが土台にあります。個人的にはあまり搾取と収奪の違いについて理解できませんでしたが、著者としては収奪はより悪いものであり、過去の奴隷制度、植民地の支配、先住民への迫害など収奪として定義されています。
資本主義のシステムとして共食いが起こり幸せにならない。その理由について本書を通して学ぶことができます。
📒 Summary + Notes | まとめノート
資本主義
資本主義は、いつの時代も特定の人種に対する不当な扱いと密接に関係がありました。奴隷制度が支えたプランテーション、帝国主義などもそうです。搾取と収奪というのは資本主義に欠かせないシステムにありました。
資本主義は自然資源を没収し、資本増収の回路へ徴用することです。自然、労働、土地、動物などは資本主義において経済的価値を生み出すために使われるものになります。より効果的に搾取することがより効果的に利益に繋がります。
フェミニズムなどについて
資本主義のシステムは歴史のなかでも幾度となく組み替えられてきました。例えばカーボン・オフセットなど自然を守るという意識から始まった取り組みにより新たな資本主義が誕生しました。エコ商品に対して投機が行われ、そこで利益が生まれる。これは経済的だけではなく、政治的な取り組みにも関わります。
自然環境に対する話もそうですが、同じようにフェミニズムについても語られています。元々女性の平等に関しての問題であり、CEOに女性が少ない、そもそも仕事場に少ないなどであり、それに対して女性CEOが増える、ダイバーシティが生まれるという結果になりました。これはある意味フェミニズムという資本主義へ対するアンチテーゼだったものが、新しい資本主義の形に取り込まれてしまった。ナンシー・フレイザーはこういった活動に対しても批判的です。
資本主義の問題点
資本主義を加速させたことにはグローバルサウスを根底に置く制度化、そして労働組合の解体であったと指摘します。ユーロは欧州の国々の共通通貨となったが自国から通貨発行権を取り上げ、各国が管理したくてもできない仕組みとなりました。全ての仕組みは証券化され資本主義経済に組み込まれてしまう。
解説に書かれているが、資本主義には4つの問題を内在させている。
- 搾取ではなく収奪が行われ、その多くがグローバルサウスに住む
- 対価を不十分にしか得られなく、その割合は女性が多い
- 天然資源を容赦なく浪費しさらには捨てられる
- 資本主義経済は自律的ではない
感想
資本主義の最前線であるアメリカで研究者として活躍するナンシー・フレイザー。アメリカの懐の大きさを改めて感じます。本書に書かれている通り、資本主義には多くの問題があり、労働者搾取がありその多くの割合はグローバルサウスに存在しさらには女性が対象となる。さらには自然は浪費させられ環境は壊されていく事にならざるを得ない仕組みです。
日本で言うと斎藤幸平さんの人新世の資本論を思い出します。資本主義の問題は理解してはいるものの、提示されるマルクス的思想が良いのかと考えるとそれが成功している事例もないという事が難しさだと思います。
個人レベルで何ができるのかという所を考えるのですが、中々解決策は無い気もします。激しく資本主義を教授している会社やシステムから離れようとするのは実際には難しく、金銭的には貧しくなってしまうように思います。安くて質の良いユニクロの服を買わないとするとより高いものを買わなければいけない。低賃金労働をベースに食事を提供する牛丼屋へ行かないとなるとより高い食事をしなければならない。株式投資をしておかなければインフレで金銭価値は目減りしていく。資本主義を教授しなければ金銭的に苦しく幸福度も上がらないという側面もある。
再配分に重きを置くと、努力するインセンティブも減少する。個人的には正しい努力に対しては対価がしっかりとあって欲しいと思うと資本主義という仕組みに迎合することになるのではと感じます。もちろん、その問題点の理解をしておき少しずつ是正していくという事が少ないながらもできることではないのかなと感じます。
📚 Relating Books | 関連本・Web
- https://amzn.to/4aD28sh 商品による商品の生産 復刊: 経済理論批判序説 単行本 – 1978/5/1 ピエロ スラッファ (著), 菱山 泉 (翻訳), 山下 博 (翻訳)
- https://amzn.to/4tM6aG9 [新訳]大転換―市場社会の形成と崩壊 Kindle版 カール・ポラニー (著), 野口 建彦 (翻訳), 栖原 学 (翻訳)
- https://amzn.to/4rs1X8O 資本論(マルクス) 1 (岩波文庫 白 125-1) 文庫 – 1969/1/16 K. マルクス (著), F.(フリードリヒ) エンゲルス (編集), 向坂 逸郎 (翻訳)
- https://amzn.to/46TzOPR 資本蓄積論 第2篇: 帝国主義の経済的説明への一つの寄与 第二分冊:第二篇 問題の歴史的叙述 単行本 – 2017/6/23 『ローザ・ルクセンブルク選集』編集委員会 (編集)
- https://amzn.to/4rBp0OU 負債論 貨幣と暴力の5000年 単行本 – 2016/11/22 デヴィッド・グレーバー (著), 酒井 隆史 (翻訳), 高祖 岩三郎 (翻訳), 佐々木 夏子 (翻訳)
- https://amzn.to/4aO78sV 資本の帝国 単行本 – 2004/6/1 エレン メイクシンズ ウッド (著), 中山 元 (翻訳)
- https://amzn.to/4aK1E2b 歴史と階級意識☆〔新装版〕☆ 単行本 – 1998/6/1 G. ルカーチ (著), 平井 俊彦 (翻訳)
- https://amzn.to/4qHsD4h サバルタンは語ることができるか (みすずライブラリー) 単行本(ソフトカバー) – 1998/12/11 G.C. スピヴァク (著), Gayatri Chakravorty Spivak (原名), 上村 忠男 (翻訳)
- https://amzn.to/4kX5ObF もっと速く、もっときれいに: 脱植民地化とフランス文化の再編成 単行本 – 2019/4/26 クリスティン・ロス (著), 中村 督 (翻訳), 平田 周 (翻訳)
- https://amzn.to/3ZNREQy 愛と哀: アメリカ黒人女性労働史 単行本 – 1997/5/1 ジャクリーン ジョーンズ (著), Jacqueline Jones (原名), 風呂本 惇子 (翻訳), 寺山 佳代子 (翻訳), 高見 恭子 (翻訳)
- https://amzn.to/4b0hYNr 仕事と家庭は両立できない? Kindle版 アン=マリー・スローター (著), 篠田真貴子 (著), 関美和 (翻訳)
- https://amzn.to/46fMmRw 20世紀環境史 単行本 – 2011/9/30 J・R・マクニール (著), 海津 正倫 (翻訳), 溝口 常俊 (翻訳), 岡本 耕平 (翻訳), 高橋 誠 (翻訳), 横山 智 (翻訳)
- https://amzn.to/4rXbrc1 自然と文化を越えて (叢書人類学の転回) 単行本 – 2020/1/24 フィリップ・デスコラ (著), 小林徹 (翻訳)
- https://amzn.to/3MWJGBD 自然の死
- https://amzn.to/40jRJvl 時間かせぎの資本主義――いつまで危機を先送りできるか 単行本 – 2016/2/20 ヴォルフガング・シュトレーク (著), 鈴木 直 (翻訳)
- https://amzn.to/4c6Tval 全体主義の起原 1――反ユダヤ主義 【新版】 単行本 – 2017/8/24 ハンナ・アーレント (著), 大久保 和郎 (翻訳)
- https://amzn.to/3MmTSTX 再配分か承認か?: 政治・哲学論争 (叢書・ウニベルシタス 983) 単行本 – 2012/10/24 ナンシー・フレイザー (著), アクセル・ホネット (著), 加藤 泰史 (著)

