まもなく公開のハミングバードプロジェクトの原作であるフラッシュ・ボーイズを読んだ。
映画になる原作なので面白いのは間違い無いのであるが、著者がマイケル・ルイスであることから読んで面白くないわけがないというような本。
内容はというと、株式市場での超高速取引について。
勝率100%のギャンブル(フロントランニング)という手法を用いて餌に出した株注文に食いついたものを違う取引所にて価格を釣り上げて売り利益を出していたことを見つけ出し、公平性を取り戻そうとする話である。
この本についてどこから知ったのかというとPython勉強中のコースにて紹介されていたからだ。そのコースではアルゴリズムトレードの基礎を勉強できる内容であったが、アルゴリズムトレードが使われている例としてフロントランニングが紹介されていた。
これが驚くべきなのは現在進行系で行われている話であるということ。
本書内の解説では、
プレデター(超高速取引業者の本内での呼ばれ方)に食われるのは、主に生命保険や投資信託などの大手の機関投資家だろう。その大口注文を先回りして、気がつかれないように後出しで薄く利を剥ぎ取るーコストを支払わされるのは、年金を積み立てているあなた、NISA口座を開いたあなたなのだ。
とある。
どうやら平成30年から超高速取引業者は登録制になったようで、金融庁から以下の情報が出ている。
ただし、厄介な点は取引所が超高速取引業者に対してデータセンターのすぐそばにサーバーを設置できるスペースを売り出しているために、取引所としては超高速取引業者から得られるサーバー専有代は非常に利益になるということである。
そのため、ある意味取引所公認で行われている勝率100%のギャンブルであるように思う。
本書内では、ある日この異変に気がついたカナダロイヤル銀行のブラッドカツヤマ。自分の注文が通らないことに気が付き、注文を出した瞬間にまるで知られているかのように値が釣り上げられている現象をディスプレイ越しに見つける。
このことから、注文ボタンを押してからコンピューター、ケーブルを通してその信号がどう伝わっているかを調べからくりに気がつく。
個人投資家がプレデターに食われるという現実を目の当たりにし、その真っ直ぐな性格から公平性を取り戻そうと取引所を立ち上げていくまでの話だ。
後半ではセルゲイというゴールドマンに在籍したプログラマーが悲しい罪をかぶり捕まってしまう話なども含まれている。
友人から罪を被ることになってしまい怒らないのか(本書を読む限りセルゲイは無実であるため)と聞かれた際に答えか発言が印象的であった。
腹を立てることが何を与えてくれますか?否定的な態度が、人としてのあなたに何を与えてくれますか?何一つ与えてくれないでしょう。何かが起こったのはわかっています。自分の人生がたまたまふつうとは違う筋道をたどったということです。自分が無実だと思えば、そのとおりなんです。…
…ぼくは、自分がこういう目に遭ったのを、いくらか喜んでいます。生きるとはいったいどういうことなのか、理解するのに役立ったと思いますから。
どこかプログラマー(技術者)らしい価値感覚が少し切なく、でも理解できるような気がした。
この話は少し極端な例かとは思うが、どんな逆境や物事もすべて自身の受け取り方によりその人の人生の価値になるか決まるのであるような気がした。(ポジティブにいい経験として思うことは大事!)
それにしても、401KやNISAがかなり怪しく思えてくる本であったため、それらの資産分配を考えたくなってしまった。。。
参考)