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ラグジュアリー戦略―真のラグジュアリーブランドをいかに構築しマネジメントするか | J.N.カプフェレ (著), V.バスティアン (著), 長沢 伸也 (翻訳) | 2025年書評20

Jean-Noël Kapferer著のラグジュアリー戦略を読みました。過去色々なブランドの本を読んできましたがラグジュアリーという概念は未だあまり理解できておらず知りたいことでもありました。

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📒 Summary + Notes | まとめノート

ラグジュアリーの歴史

古代ギリシャから19世紀までラグジュアリーというのは階層化の象徴でもあり富の差を表すものとしてのアイコンでしたが19世紀ごろから変わり目が起きます。徐々に民主化や女性の解放、平和主義と結びつきラグジュアリーが市民の手の届く存在になり始めました。

不平等主義社会における社会階層かの所産であるラグジュアリーは自由平等か社会の生みの親になった。

また同時期には消費力の増大もありラグジュアリー製品を成長させる推進力にもなります。現代ではグローバル化も大きな役割を占めており中国での消費はラグジュアリーブランドを支えています。

「製品に精神性がなくなればなくなるほど、工業化の波に飲み込まれる人が増えていく」- ゲオルク・ジンメル

「ラグジュアリー製品を選択するのは、個人が意思決定した結果であり模倣の結果ではない」 - ルネ・ジラール

ラグジュアリーとプレミアム

本書ではラグジュアリーとプレミアムを異なるものと定義しています。

Luxury Branding

引用:How to Reflect Luxury Branding in Your Marketing

著者いわく、プレミアムは基本的には上へ向かう拡張戦略であり、ラグジュアリーとは別方向のものである。現在の混同はプレミアム化(高価格化)による戦略がラグジュアリー製品との価格帯とオーバーラップすることで起きています。

また混同の原因にはラグジュアリーとは相対的なものであるため、例えばメルセデスプレミアムカーであるのに中国にいけばラグジュアリーカーとなる。トヨタのハイエンドブランドレクサスは日本人にとってはトヨタ車のプレミアム帯とみられているが、北米などではラグジュアリーカーとしてされています。

ラグジュアリーブランドの例としてロールスロイスランボルギーニが示されており、より概念的ね意味合い(歴史感など)が含まれていると書かれています。 - 結局よくわからず

ラグジュアリーについて

物品の価値はおもに3つの要素が考えられる。

  • 使用価値
  • 交換価値
  • 製作価値

ラグジュアリー製品は主に3つめの効力がある反面実務的に効力はない。

ラグジュアリーブランドの歴史には、カルティエが世界で初めて革製のバンドがついた腕時計をつくった革新など歴史と紐好き、また伝承、クラフトマンシップ、稀少性、独占感などとも結びついています。

ラグジュアリーが想起させるイメージのアンケートをアメリカ、フランス、日本で実施したものを見ると日本では名声が最も高い結果である一方、アメリカやフランスでは高価との視点が多く、他には芸術性の観点は日本で他の2国より高くありました。

ラグジュアリーブランドをマネジメントする2つの方法は①歴史②物語を語ることです。ラグジュアリーブランドの広告コミュニケーションを見ると製品について語ることはなく、世界観を示すのは物語を語るからでしょうか。

香水はラグジュアリーブランドのコミュニケーション手段の一つであり、消費財として購入頻度が高い製品であるために緊密性もある。また収益性も高い製品のために香水はブランドのアイコンとして存在しています。

感想

最後まで読み切ったのですが、なかなか読み進めるのが苦しくなる本であり教科書を読んでいるような感覚でしたがひとまず読み切りました。冒頭に貼り付けてあるLBGのYoutubeの方が今の時代に沿った話であるようにも感じますが、一通りラグジュアリーとは?という事について知れる本であったと思います。

しっくりくる表現に3つの価値要素において使用価値は高くないという点については納得感があるものです。ラグジュアリーカーを選んでも例えば東京から大阪までドライブする時間は対して変わらないですし、移動の心地よさも値段に比例するとは思えません。鞄などもラグジュアリーブランドの鞄を使っているから利便性が値段に比例して上がるかと言えばNoでしょう。交換価値に関しては最近のセカンドハンド市場の拡大で本書執筆のタイミングから大きな変化があった部分に思います。

本書の最後の方にアップルがラグジュアリー戦略と言えるマーケティングをしている(ラグジュアリーとはカテゴリされていない)と説明しているのは分かりやすいもので、芸術的な側面、稀少性や手に入れる事の欲望、限定的な販売網(1カ国あたり1通信事業者割当)、値引きをしない、など本書で紹介されているラグジュアリー戦略そのものでした。

ラグジュアリー製品が品質として高い・高くない議論があり、品質の良さを保証するものと表現されたりするのですが、ある程度理解できるものの個人的にはミスリードな表現でもあるかなと思います。例えばユニクロの服は低価格帯でもかなり高品質であり高機能性ですが、ラグジュアリーブランドの洋服は機能性繊維の使用率は高くないと思いますし、ユニクロほど製品フィードバックの機会も限定的ですし縫製やパターン技術の向上もしにくいものにならざるを得ないと思います。

ラグジュアリーは元々階層の象徴として存在したもので欲望を刺激するような立ち位置であるものです。今の時代は猛烈なグローバル化と透明化、SNSの発達している状態です。その次代において欲望を刺激する側面もありますが、消費者がより多くの物事を知りある種賢く買い物をできる時代に思います。これから、どこまでラグジュアリー戦略が通用するのかとても興味があります。

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