PIVOTで定期的にコーポレート・ファイナンスの解説をしてくれている田中慎一さんの話や分析がいつも面白くどうやってこのような視点を持てるのか気になり彼の著書をいくつか買ってみました。ソフトバンクの解説や時事的に話題なSHEINの分析、BYDやテスラなど国内外関わらず財務分析を実施し、そこから物語を見つけ出す能力はいつもながら関心していました。
書籍を調べてみましたら10年ほど前になる本ではありますが、基礎体力のための日経新聞と数字力についての本がありましたので購入して読んでみました。
📒 Summary + Notes | まとめノート
日経新聞
経済情報を取り扱う日経新聞は様々な企業ドラマが詰まった読み物です。ライフネット生命の出口さんは教養の土台は「本・人・旅」の3つから学んだというように良い読み物から得られる教養の重要性を語っていました。田中さんの感覚ではアメリカで新聞を読む人は金儲け(投資対象発掘)のために、日本人は社会人知識を得るための義務感で読むことで好奇心の持ち方が異なることが継続して読めるかの違いだと指摘します。
田中さんが財務分析アドバイザーとして関わる中で悪い企業の特徴は事実と意見が混在してしまう会議が見て取れるようで、日経新聞の記事は比較的お手本となる事実をもとに、意見をまとめるような文章になっています。
日本の経済を考える指標
日本の経済を考える上で7つの指標を理解、ウォッチします。
- GDP
- 1人当たり名目GDP
- 景気動向指数(CI)
- 日銀達観業況判断
- 消費支出2人以上世帯
- 現金給与総額
- プライマリーバランス
多くの国の目標はGDPを安定的に成長させること、という考えが土台にあります。GDPは民間部門の消費支出+民間部門の投資支出+政府部門の支出+貿易収支となるために人々がお金を景気良く使えば、企業が設備投資を行えば、貿易収支が大きく黒字になればGDPはプラスになることが分かります。
一方で物価の安定は日銀の根本の仕事であるために、GDPを上昇させるためにお金を沢山ばらまいてモノの値段が毎年10%上がってしまうなんてことが起こらないために世の中に出るお金を減らしたり増やしたりという調整機能があります。過去異次元緩和など行いデフレ退治に邁進しましたが、結果賃上げは起こらず企業が設備投資も控え内部留保が増えるという結果が起こりました。
企業の仕組み
日経新聞は企業の業績など経済情報をまとめています。記事の内容によくあるものは4つあります。
- 売上高や営業利益、経常利益が前期や業績予想とくらべてどのくらい増減したか
- 今期の業績予想はどのくらい修正するか
- 来期の予想はどうなるか
- 利益率が前期とくらべてどのくらい増減したか
Youtubeの田中さんの解説によく登場しますが、P/Lはボックス図で考え3つのステップで情報を整理します。
- 売上高
- 原価と粗利に分割
- 粗利を固定費と利益に分割
大まかに上記を見ると、利益を増やすために①粗利を大きくする②固定費を小さくするのどちらの手を打てばよいのか、固定費の中での労働分配率がどうであるかなど企業の体質を確認することができます。企業がどのような視点をもって経営しているのか狙いも分かります。
ケース1:原価見直しの効果 原価1%改善すれば最終的な利益は10%増えることがある
ケース2:値上げの効果 5%値上げすることで利益50%上がることがある
ケース3:人員削減効果 固定費削減
ケース4:生産性アップの効果 生産性アップ=売上高アップによる利益押し上げ
企業のキャラ分析
企業のキャラを決めるのは4つに分類分けできます。
- 収益性
- 生産性
- 成長性
- 安定性
これらのキャラ分析に主に活用するのはROAですがそれを含めた7つの指標があります。
- ROA
- 売上高利益率
- 総資本回転率
- 1人当たり粗利
- 1人当たり経常利益 100〜200万円程度になっているか
- 労働分配率 33%以下に抑えられているか
- 株価収益率PER 投資家から経営者へのメッセージ
ROAは収益率と生産性に分解できるために、ROAをみることに(高い・低い理由を確認すること)によりその企業のキャラが見えてきます。
データを並べる時におすすめなのが2つの方法。ファンチャートを創ることで時系列の変化から狙いを読み解きます。
ならべる:時系列にする
くらべる:他社と比較する
いわばROAは企業の努力姿勢や目標を示すものであり結果であります。そしてその様子を株式市場がどう判断したのか、という人気投票の結果がPERで現れてきます。
論理的思考の5つのステップ
- 何を達成したいのか目的を知る
- 目的の達成度合いを何ではかるか定義する
- 可能なかぎりデータ(数字)を収集する
- データを解釈する
- 結論をまとめる
感想
PIVOTの分析動画を見て本書を確認すると、基本的にPIVOTの動画も似たパターンの分析を行いそこから洞察を得ているという田中さんが本書の内容をそのまま実践していることが分かります。
興味深かく感じるのは田中さんが特別な秘伝のタレのような手法があるというよりも、公開されている情報を一定の分析をしてその結果から特徴を見つけ出しそれぞれの特色をみつけていくという姿勢です。同じ情報をみてもどう解釈するのか、洞察をみつけるのか、といった様子が面白い所です。財務書評をシンプルに読む体力というのも分析の基礎体力が高いと思います。PIVOTの分析作成にあたりどの程度時間かけているのか気になります。
こういった地味な分析を繰り返し業界毎の特色を知見として溜めていき、素晴らしい会社の素晴らしい所以を解説できるというのはとても憧れます。自動車業界の分析も極めて面白く、中国の全般的な利益率の低い構造などの国別の様子などもすぐに見つけ出し傾向を理解できる所です。自分自身が自動車業界にいますが業務周りの事は理解していても全体像で田中さんのような理解ができるのはやはり財務を見て分析できるという強みかなと思いました。株価というのは財務とはまた別の物語(人気投票)になるので純粋に企業の打ち手と売上・利益の様子を分析する重要性を感じました。
