スマホの影響により紙の本の時間が奪われているというのはまことしやかな共通認識としてもたれています。本書の著者、飯田さんは出版ライターとしてこの視点は本当であるのか?という所を見ていきます。
📒 Summary + Notes | まとめノート
学校読書調査による調査
長年読書数に関わる調査をすすめている学校読書調査によると、小学生・中学生は増加傾向。高校生はほぼ横ばい傾向であり、若者は読書の減っていないのではというようなグラフです。

引用:https://www.j-sla.or.jp/material/research/dokusyotyousa.html
同様の機関による不読者の推移ですが小学生は低いままで横ばい、中学生は低下傾向です。

注意が必要なのは5月の1ヶ月分の読書冊数という特殊なカウントであり、冊数なので時間でもないという点です。あくまで上のグラフから見る限りは読書量が特別減っているわけではなさそうです。他の調査結果などからは大人でも概ね1,2ヶ月で1冊ずつ程度の読書量がずっと続いているなどという結果のようです。
では、出版物の販売金額の推移を見ると雑誌の低下は顕著ですが、電子出版が始まって以降は横ばい傾向になりつつあります。

引用:https://shuppankagaku.com/statistics/japan/
海外での読書事情
それでは他国ではどうでしょうか。著者の調べによる所、近隣の中国や勧告と比較する限りそこまで劇的な傾向の違いはないようであり子どもであればあるほどどこでも読んでいる状態です。
日本:
小学生 読書率93.6%、冊数13.2
中学生 読書率81.4%、冊数4.7
高校生 読書率48.9%、冊数1.6
韓国:
小学生 読書率93.2%、冊数5.6
中学生 読書率87.0%、冊数2.0
高校生 読書率82.1%、冊数1.1
中国:
小学生 読書率99.1%、冊数0.9
中高生 読書率90.1%、冊数1.1
読まれている本の傾向
読まれる本の型というのでしょうか、著者が分析する読まれる本の「3大ニーズ」と「4つの型」を解説されています。
3大ニーズ
- 正負両方に感情を揺さぶる
- 思春期の自意識、反抗心、本音を訴える
- 読む前から得られる感情がわかり、読みやすい
4つの型
- 自意識+どんでん返し+真情爆発
- 子どもが大人に勝つ
- デスゲーム、サバイバル、脱出ゲーム
- 余命ものと死者との再会・交流
細かなランキングはこちらに記載があります。
https://www.tohan.jp/wp/wp-content/themes/tohan/pdf/2023asadokuhon.pdf
読書のこれから
高校生及び日本全体でみると、書籍の不読率や書籍の読書冊数は驚くほど変化がなく、おおよろふたりにひとりが本を読み、量としては不読者含めた全体の平均で月に1,2冊程度です。その割合は大きく変化しておらず、よくも悪くも読む人は読んで読まない人は読まない。
そのためキャンペーンを打っても、読む習慣のない人にとってはあまり刺さらずに過去含め劇的に変化を及ぼすものは無かったわけになります。
また、若者が比較的にわかりやすいタイトルや表紙のもの、内容がエモく恋愛やタイムスリップ、死との関わりがあるような物語が受けています。
感想
著者の主張として、よく言われる若者が年々本を読まなくなってきているというイメージに対して本当にそうであるのか?ということをまとめた内容になります。学校読書調査(第69回は小学生3308人、中学生3496人、高校生4604人)の結果をもとに見る限りはそこまで変化はなく、若者が読書しなくなってきているというよりは、昔も今も変わらず読書スタイルは変わらないという話でした。
疑問1
まずこの調査結果を見ると5月の一ヶ月で読んだ本の冊数についての質問になります。なぜ5月であるのか。またなぜ時間ではなく冊数であるのか。という点は少し不明瞭です。
疑問2
小学生の冊数が年々増えており、最近では13冊ほどになっています。ふと思いつく疑問は漫画や漫画雑誌がどの程度入っているのかです。仮に一ヶ月13冊読んでいるとするのであれば、半分が繰り返し読んでいるものだとしても年間で50〜100冊などになります。漫画を読書としてもカウントするのは良いですが、一般的なイメージでいくと読書の括りに入らないようなものでしょう。
他の統計
動画の中で著者も触れているベネッセの各メディア時間の経年変化を見てみると、紙の本は微減しておりスマホ・携帯やパソコン・タブレットが増えている。ここでの著者の主張は紙の本は微減しているがそもそもほぼ変わっていないでした。(下記ページ21)
https://benesse.jp/berd/up_images/textarea/datachild/datashu04/datashu04_pdf.pdf
疑問はこの調査後半には電子書籍や電子コミックの話もあるので、スマホやタブレットに恐らく読書がカウントされており、読書量を議論するグラフではないと思われます。
このベネッセの調査のまとめはページ4にまとめられている点です
- 読書時間0分の人は学年が上がる毎に増える。高校生は大学受験やスマホが読書離れに?
- 家庭の影響で読書を勧められていたら読書する人が多い
- 読書の効果は様々あり
- 電子メディアの読書行動が増えている
これらを見ていると、著者の主張も少し弱く、他の統計もズバリのものは無いために若者の読書離れがウソとも言い切りにくいのかなという印象でした。この手の調査は中々良いデータの取り方も難しいことに加えて、解釈の方法が多様にありまとまった結論に達しにくい統計の難しさを感じます。
