医者が教える食事術が大ヒットした牧田さんのシリーズ2の本になります。本書では医学会のトップジャーナルに自ら寄稿する中多くの患者さんを見てデータから得られる知見をまとめた本です。
本書の冒頭にある、トップジャーナル内においても結論が全く反対のものになるものも少なくなく、またジャーナルもピンキリであり「医学的に証明された」という内容に関してそれを読み解き、考察し内容を理解する大切さをまとめ、そこから間違った常識が広がらないようにと指摘してくれています。
日々情報摂取する中でTwitterにも本当か嘘か分からない情報が飛び交いますし、見出しに「論文で証明された」などと書いてあると脳死でそういうものとして受け止めてしまうように思いますが、そこから誰が書いているか、誰が言っているのか、何でそういうのかを解釈する力はとても大切です。
牧田さんが一つ参考にしているのはメタアナリシスと呼ばれる、論文をスタートとしてその情報をより大規模に実施し統計的に正しさを見る手法であり、レビュー効果もあるこの結果に注目しているそうです。もちろんこれも万全では無いものの広範囲で効果を見るなどの内容精査のアプローチが大切と言います。
前書でもあるように大枠の主張である、糖質(炭水化物、糖)の摂取を控えるというアプローチは代わりませんがそこから発展し常識とされて扱われている内容を具体的に見直していく本で面白い内容でした。
📒 Summary + Notes | まとめノート
間違った常識
世の中でまことしやかに囁かれている噂について様々解説があります。
- 低脂肪は体にいい:太る原因は脂肪には無い
- 1日に30品目を食べる:30品目は食べ過ぎで体に負担がかかる
- 甘酒や漬物は体にいい:糖質・塩分過多
- 薄口醤油なら塩分が控えめ:塩分量に変化はほぼ無い
- 飲みやすい酢を健康のために飲む:飲みやすいのは砂糖や添加物のおかげ
- 血液をアルカリ性にする食べ物が良い:食べたものにより血液のpHは変わらない
- バランスのいい食事が大事:糖質過剰になっている現代では糖質制限の意識が大事
- チョコレートやナッツはニキビの原因:ニキビや吹き出物の原因は糖質
- ○○は✗✗に効く:海藻により髪がふさふさなど連想ゲーム的噂が多い
- 和食は健康的:糖質と塩分が多い食事
- 牛乳は体にいい飲み物:最新の研究では大腸がんや乳がんを増やすと言う話も
- ラクトアイスなら健康的:トランス脂肪酸が含まれる体に悪いもの
- スーパーフードはスーパーだ:健康に良いというイメージ戦略品
- 漢方薬や天然由来の成分は安全だ:ウコンは肝臓を痛めるなどのケースもある
- ダイエットすると筋肉が落ちる:ダイエットくらいでは落ちない
- 人間ドックを受けているので大丈夫:胃のバリウムや肺のレントゲンは早期発見に繋がらない
本書で人間ドックなどの検査方法が触れられており後にまとめたいですが、こう見てみると意外と発見がありますよね。
また糖質制限の大切さについても人種横断的に同じような傾向があったなどの話も改めて詳しく解説されており面白いものもありました。
- 肉を沢山食べ、飽和脂肪酸摂取が増えるほど血圧は下がる(脳卒中と心筋梗塞の予防になる)
- タンパク質はプールされるために糖質制限が筋肉量の落ちには繋がらない
- プロテインを飲む患者さんは尿アルブミン値が上がり肝臓機能の低下が見られた
三大栄養素の糖質、脂質、タンパク質の上手な摂取方法も多くあるので細かい内容はぜひ読んでみて下さい。
検査、早期発見について
本書で面白かった部分に正しい検査の仕方について書かれている部分です。
現代の死亡原因の多くは「がん」「心筋梗塞」「脳卒中」「肺炎」です。これらに発病すると後遺症などもあり健康への影響が大きいために、食事x検査でこれらを予防することはとても大切になります。ただし、検査をただすれば良いということではなく、どうやって検査すればよいかについてが大切です。
効果的な検査方法は
- 胸部と腹部のCT検査:CTで撮影することで早期の症状も発見されます。これにより消化器以外でのがんや心筋梗塞リスクを低下させることができます。
- 胃と大腸の内視鏡検査:消化器は粘膜を直接みることでがんの早期発見が可能になります。
- 脳のMRI検査:脳の血管に動脈瘤が見つかったら処置をすることができます。そのためにMRI検査をすることで早期発見が可能です。
また、今まで行われている検査方法の問題点もまとめられており
- 肺のレントゲンは意味がない:肺がんの場合10ミリ以下であれば完治できると言われているが肺のレントゲンでは20ミリ程度まで大きくならないと見つけられない
- 便潜検査は信用しない:大腸がんを調べるのに使用されていますが、便に血液が混ざるとは限らず、日の状況によっても代わります。また陽性反応が出ても手遅れのタイミングであることが殆どです
- 胃のバリウム検査は100害あって1利なし:理論的にも的外れであし、早期発見に繋がらず、怪しいところがあれば結局内視鏡検査することになります。
- 腹部超音波検査は頼りない:見逃したくないがんほど見逃してしまう検査手法
感想
全書から引き続き糖質制限の大切さを理解させてくれる内容になっており、本書はより引用文献が多くエビデンスにこだわった内容になっておりました。特に面白かったのは検査の部分で死亡原因に多くあるがん、心筋梗塞、脳卒中、肺炎などを重点的に理解し予防するためにはどうしたら良いかということを食事と検査の面から解説があります。健康保険で受けられる健康診断ではまさにレントゲンや検便、バリウム検査があり、あまり意味が無いと言われているもので、ある種時代遅れ的な検査方法をやっていたのかなと認識することができました。何年かに一度はしっかりとお金を払ってでもより早期発見のしやすい検査をするようにした方が健康で居られる可能性をあげられそうです。
また、ちょっと以外であったのは貧血が多くなっており鉄製の鍋などで煮たものを食べると鉄分の摂取につながるということで、イメージでの連想ゲームであると思っていたものも効果があるのだと気が付きました。
もう一つ面白かったのは、顔のマッサージ(擦る行為)は基本的にシワを増やす行為であるために洗顔もできるだけ避けたい行為であり泡で柔らかくなでるような方が良いとのことでした。
あまりに長生きしてしまうのも問題だとは思いますが、無駄に病気にならない方が良いのは間違いないと思います。過度にストレスの無い範囲で続けられる方法を探しながら糖質の摂取量や仕方には気を配っていければと思いました。
📚 Relating Books | 関連本・Web
- https://www.nejm.org/ New England Journal of Medicine
- https://www.phri.ca/research/pure/ PURE
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