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ウラからのぞけばオモテが見える | ローソンPBのリブランディングを手掛けたnendoの思考法 | 2020年書評#8

ローソンがリブランディングをしましたが、賛否両論の意見を聞きます。

このリブランディングを手掛けたのがnendoです。

www.nendo.jp

ブランディング

ブランディングで失敗か成功か定義は難しいですが、一つの基準としては施策を始めてからの売上効果とリブランディングのためのコンサル・デザイン費用とのバランスを見てローソン側に利益が出れば成功だと思います。

いま時点で成功・失敗を判断するのは難しい事ですが、とても興味深い話題ですので引き続き注目しておきたい話題です。

まずはローソンのメインロゴから「シルエット」と、ローソンの「L」を抽出し、視認性が高くて応用がしやすいプライベートブランド専用ロゴ「Lロゴ」を開発。まるで着ぐるみのように、Lロゴが既存の個別ブランドのロゴに「着替えていく」ことで、従来のイメージを損なうことなく、緩やかにローソンブランドとしての繋がりを生み出すことを考えた。また、その他のPB商品群は、日常生活の基盤となる定番商品を集積した「L basic」という新たなブランドで括った上で、Lロゴをそのまま採用。牛乳や卵、食パンなどの食品類をベージュ、ティッシュや石鹸などの生活雑貨製品はグレーのパッケージに統一し、内容を示すシルエットのイラストだけをあしらったデザインとなっている。日本語、英語、中国語、韓国語の4カ国語で商品名を記載し、海外からの訪問客が困らないように配慮。価格や商品説明は、陳列棚に設置される店頭POPにわかりやすく記載することで、購入後の生活空間に入り込むノイズが減るように配慮した。L basic以外の商品は「L marche」というブランドにし、冷凍食品、お菓子類、ファーストフード類と、それ以外の食品群という4カテゴリーに対して、それぞれの特徴を添えたLロゴとした。従来のパッケージにあったような大きな商品写真ではなく、優しい印象のフォントとともに中身や原材料などがそれとなくわかるような手描きのイラストをパターン状にあしらうことで、女性層でも手に取りやすい柔らかな表現を目指した。

狙いは購入後の生活空間への馴染みへ焦点を当てたパッケージ作成のようですが、コンビニにある多くの製品のように生活空間に短期的にしか存在しない物事においてどこまで重要度が高いのか気になる所です。

トロピカーナのリブランディングでは失敗だったようです。

購入時のわかりやすさというものは大きく失われた様子でしたので、今回のリブランディングから中身のわかりやすさと生活へ馴染むパッケージは共存が難しい、というのが現時点で感じることです。

消費活動は感情で動く部分が多いので、 ①購入時の中身を確認する煩わしさと②そのものがある生活、のどちらがより消費感情へ結びつくのか興味深いです。

 

ウラからのぞけばオモテが見える

nendoの思考法について書かれている本はたくさんあると思いますが、今回はこちらの本のまとめです。 

ウラからのぞけばオモテが見える

ウラからのぞけばオモテが見える

 

この本ではnendoが「問題解決するための新たな道」を見つけるためのアプローチが10種類、過去のプロジェクトを引き合いに出し紹介されています。 

nendoの思考法

本書で紹介されているのは10種類のアプローチです。

  1. 「面」で考える
  2. 一歩「下がる」
  3. 「違和感」を生む
  4. 均衡を「崩す」
  5. 見せたいものは「隠す」
  6. 「ゆるめ」につくる
  7. とにかく「集める」
  8. 「休み時間」に休ませない
  9. 「他人丼」を見つける
  10. そこにあるものを「使いまわす」 

表現がおしゃれで解釈が難しかったのでそれぞれに書かれていることを咀嚼するとそれぞれ次のような感じでしょうか。

  1. メーカーの歴史や土地の強みを見直し、ビジョンやストーリーを大切にしよう
  2. 俯瞰して物事を見ることで、大切な部分を把握しよう
  3. 人は違和感に注意を惹かれるので、ズレを意識しよう
  4. なんとなくの当たり前を疑い、大切なものを整理しよう
  5. 何かが隠れていると人は気になるので、探索する楽しみを散りばめよう
  6. ユーザーが工夫できる遊びしろを残しておこう
  7. 集めてみると面白く見える事がある
  8. 物事のアイドル時間を活用できないか考えてみよう
  9. 関係ない物事を組み合わせてみよう
  10. 物事を合理化してみよう

組織の内部の人間からすると、第三者的な視点で物事の良さを整理するのは立場的・組織的に見落としがちな部分を外部の組織が一緒になって整理していき、時代にあった形に修正していくという流れでしょうか。

普段日常にある当たり前を少し立ち止まって疑問を持って見てみる、というのはとても大切なように思います。それを「センス」と言ってしまう人は多いですが、そのセンスは疑問を感じて物事を自分で整理することの積み重ねの結果だと思います。

そのセンスを身につけるために、この本に書いてあるような10の視点を意識して生活してみるのはとても面白いのではないでしょうか。

昔読んだ佐藤可士和さんの本も似たような内容だった記憶で、日本で「デザイン」というと見た目を華やかにする、というような印象が多いですが、英語圏で言う「デザイン」は「設計」なので、物事を整理して問題解決する、というようなニュアンスです。

さいごに

nendoやデザインワークに携わった事が無い方ですと、「センス」の整え方を身についけるという目的で目を通してみると面白いと思います。

一方で、日頃から道を歩けば「これ何でこうなってるんだっけ?」のような疑問が浮かぶ習慣がある方にとっては、仕事紹介の本という印象になる気がしました。

カメラを初めて、人はなぜ美しいと感じるのか、興味を持つのか、時代によりそれは変化していったのか、というような部分が気になるので、今後は学問的なデザイン、デザインの歴史などについて書かれた本を読んでみようと思います。